五大湖周辺各地(アメリカの観光地 6)
五大湖 (Great Lakes) はアメリカ北東部のカナダとの国境をなす世界最大の淡水水系です。
いずれも氷河湖で、西から、スペリオル湖 (Lake Superior)、ミシガン湖 (Lake Michigan)、ヒューロン湖 (Lake Huron)、エリー湖 (Lake Erie)、オンタリオ湖 (Lake Ontario)と並んでいます。
スペリオル湖が最大で北海道よりも広く、もっとも小さいオンタリオ湖でも、琵琶湖の倍近くの面積を持っています。
これらすべては、川や水路でつながっていて、東の端のオンタリオ湖からセントローレンス川 (St. Lawrence River) が北東に流れ出して大西洋に注いでいます。
途中、エリー湖とオンタリオ湖の間にナイアガラの滝があります。(ナイアガラの滝は、カナダのページで紹介します。)
この地域は緯度が高く、内陸のため、夏涼しく、冬は非常に寒い亜寒帯に属します。風が強いのも特徴です。
水運を利用した工業都市が周辺に点在し、アメリカ屈指の工業地帯となっているため、水質汚染が進んでいます。
著名な観光地は乏しいですが、点在する主要な商業都市、工業都市にスポットがあります。
シカゴ
シカゴ (Chicago) は、ミシガン湖南西岸にある人口270万人のイリノイ州の大都市で、アメリカ第2の経済、金融都市として五大湖周辺の中心地です。
1871年の大火以来建設された摩天楼が林立する、最もアメリカ的な景観の現代都市になりました。
湖から年中強い風が吹き「風の町」ともいわれています。
- ウィリス・タワー (Willis Tower)
- ダウンタウンの西寄りに建つ高さ443m、110階建ての高層ビルです。2009年7月までは「シアーズ・タワー (Sears Tower)」という名前でした。
103階に展望台があり、高速エレベーターで60秒で登れます。
市街やミシガン湖ばかりでなく、晴れた日には100km以上見渡せ、隣接するインディアナ、ミシガン、ウィスコンシン州まで見ることができます。
- シカゴ美術館 (Art Institute of Chicago)
- ウィリス・タワーの東1km、ダウンタウン東のミシガン湖に面するグラント公園 (Grant Park) 内にある美術館です。
メトロポリタン、ボストンと並ぶアメリカ3大美術館の一つです。
1882年の創設で、古代から現代まで、世界各地の美術作品を30万点収蔵しています。特に印象派のコレクションが優れています。
- ネイビー・ピア (Navy Pier)
- ダウンタウンの北、シカゴ川 (Chicago River) 河口付近に突き出した埠頭で、公園になっており、遊園地やレストラン、モールなどがあります。
- リンカーン公園 (Lincoln Park)
- ダウンタウンの北3km、ミシガン湖畔にある公園です。
緑の多い園内には動物園、植物園、歴史館などの施設の他、ゴルフ場やヨットハーバーもあります。
- 科学産業博物館 (Museum of Science & Industry)
- ダウンタウンの南10km、ミシガン湖畔のジャクソン公園 (Jackson Park) 内にある科学博物館です。
1893年に万国博覧会の美術館として建てられ、1933年に博物館となりました。
可能な限り実物や原寸大模型を展示しており、シカゴを拠点とする企業の新製品も展示して、全米一の人気を誇っています。
旧ドイツ海軍の潜水艦Uボート、宇宙衛星アポロ8号の指令船、旅客機B727などの他、本物の人体を数cmづつスライスした標本も見ものです。
- スプリングフィールド (Springfield)
- シカゴの南南西300kmにある人口11万ほどの町で、イリノイ州の州都です。
第16代大統領エイブラハム・リンカーンが生涯の後半生を過ごした町で、1865年に暗殺された後にこの地に埋葬されています。
市民にとって今も誇りであり、彼の住居や事務所、墓地などゆかりの場所は大切に守られて観光スポットとなっています。
ミルウォーキー
ミルウォーキー (Milwaukee) は、シカゴの北100km、ミシガン湖西岸にある人口60万人ほどのウィスコンシン州の都市です。
19世紀半ばにドイツ人が大量に入植し、ビール製造が盛んになりました。周辺は小麦の産地で、町は集散地となっています。
主要な企業としてビールの「ミラー」、バイクの「ハーレーダビッドソン」などがあります。
観光スポットはそれほどありませんが、比較的清潔で整然とした町です。
- パブスト邸 (Pabst Mansion)
- 市街北西の住宅街にある、パブスト・ビールの創始者でドイツ出身のフレデリク・パブストが1893年に建てた邸宅です。
37の部屋があり見学ができます。
- ミラー・ビール工場 (Miller Brewing Company)
- 市街の西4kmにあるミラー・ビールの工場で州最大の規模です。
1855年から操業を行っており、アメリカ・ビールの世界ブランドの一つとなっています。
1時間の見学ツアーがあり、もちろん最後にはビールの試飲ができます。
インディアナポリス
インディアナポリス (Indianapolis) は、シカゴ南南東300km、人口80万人のインディアナ州の州都で、自動車レースの「インディ500」が行われることで有名な町です。
カーレースの伝統を生かして自動車産業が盛んで、近年はデトロイトに代わって業界を牽引しています。
市内では斜陽の鉄道駅と大型ショッピングモールを組み合わせた再開発も成功しています。
- モニュメント・サークル (Monument Circle)
- ダウンタウンの中心にある、高さ87mの慰霊塔です。兵士と水兵を慰霊するもので、展望台に登ることができます。
この慰霊塔を円形の道路が囲み、市街はここを中心としてほぼ碁盤目状に街路が造られています。
- 子供博物館 (Children's Museum)
- ダウンタウンの北5kmにある世界最大の子供向け博物館です。
広大な敷地に10の建物があり、自然科学、歴史、世界の文化、芸術と幅広い分野をカバーし、遊びながら学べる優れた展示を行っています。
- モーター・スピードウェイ・ホール・オブ・フェイム博物館 (Motor Speedway Hall of Fame Museum)
- ダウンタウンの西北西8km、毎年5月に500マイルで競われるレース「インディ500」が開催されるサーキット付属の博物館です。
レーシングカーやアンティークカーなどのコレクションや、歴代優勝者の肖像、ヘルメットなどが展示されています。
車に乗ってレーシングコースをめぐるガイドツアーもあります。
- コナー・プレーリー (Conner Prairie)
- 市街の北北東30kmにある、1830年代のインディアナ地方の町を再現した歴史村です。
建物及び中に置かれた家具、衣装など当時のものを再現し、住人を演じるスタッフのしゃべる内容までタイムスリップさせています。結婚式の様子なども見ることができます。
- ブラウン・カウンティ (Brown County)
- インディアナポリスの南70kmにある自然公園です。
豊かな森が広がり、全米最大の州立公園になっており、多くの人が訪れます。
特に秋の紅葉が非常に美しい公園です。
デトロイト
デトロイト (Detroit) は、シカゴの東400km、エリー湖 (Lake Erie) 西端部の北にある人口90万人のミシガン州の都市で、市街の南東を流れるデトロイト川 (Detroit River) の対岸はカナダです。
1903年にフォードが自動車生産を始めて以来、GM、クライスラーと次々誕生して自動車産業の町となりました。
1970年代から日本車の台頭で打撃を受けて人口流出が続き、現在はピーク時から半減しました。
白人は郊外へ出てしまい、人口の8割が黒人となり、治安も非常に悪いということです。
2013年7月には、自治体として市の破産という事態に陥りました。
黒人音楽のモータウン・レコードが生まれた町でもあります。
- デトロイト美術館 (Detroit Institute of Arts)
- ダウンタウンの中心部にある美術館です。
1885年に市民によって開設され、当初は画廊やコレクターから作品を借りて展示していましたが、後にフォードなどから寄贈を受け、現在は6万点を超えるコレクションを誇ります。
古代から現代まで幅広い作品があり、特にヨーロッパ絵画は充実しています。
- モータウン博物館 (Motown Historical Museum)
- デトロイト美術館の西2kmにある小さな2階建ての博物館です。
「モータウン・レコード」の発祥地で、1959年に創始者のベリー・ゴルディーJr.がレコーディング・スタジオを作った建物です。
1階のスタジオにはスティービー・ワンダーの弾いたピアノなどが展示され、2階にはモータウン初のレコードや写真、レコード・ジャケットなどの展示の他、マイケル・ジャクソンのステージ衣装や手袋などが展示された部屋もあります。
なお「モータウン」とは、デトロイトの愛称「モーター・タウン」の略です。
- ヘンリー・フォード博物館 (Henry Ford Museum)
- ダウンタウンの西15km、ディアボーン市 (Dearborn) にある、20世紀の自動車や工業機器などを展示する博物館です。
フォード初の自動車や、ケネディ大統領が暗殺された時に乗っていたリンカーン、1971年に月面走行した車などが目玉です。
アメリカで生産された日本車の第1号「ホンダ・アコード」や、世界最大の蒸気機関車も見所です。
近くにはフォード社創始者ヘンリー・フォードの邸宅もあります。
- グリーンフィールド・ビレッジ (Greenfield Village)
- ヘンリー・フォード博物館の近くにある、17〜19世紀のアメリカを再現した村です。
当時の建物が復元され、園内を走る自動車、バス、蒸気機関車、外輪船など乗り物はすべて当時のものが使われ、乗ることもできます。
陶芸や織物など手工芸品製作の実演も行われています。
クリーブランド
クリーブランド (Cleveland) は、デトロイトの南西150km、エリー湖の南岸にある人口40万人余の工業都市で、オハイオ州に属します。
鉄鋼や自動車産業の町で、エジソンやロックフェラーなどの出身地です。
1960年代は市街の老朽化と環境汚染が進みましたが、以後再開発を行って、自然と文化が調和した住みやすい町として再生しつつあります。
ただ、治安の悪さはアメリカでも高い都市なので注意が必要です。
- ザ・フラッツ (The Flats)
- ダウンタウンの北側、市街を蛇行して流れるカヤホガ川 (Cuyahoga River) がエリー湖に注ぐ付近のウォーター・フロントの地域です。
川の東岸近くの発電所跡地に建てられ、劇場などの施設がある「ナウティカ・エンターテインメント・コンプレックス (Nautica Entertainment Complex)」を中心に、レストランやクラブなどが集まっています。
しかし、2000年代に泥酔による川での溺死事件が相次ぎ、近年は施設の閉鎖など、空洞化が進んでいるようです。
- ロックンロール・ホール・オブ・フェイム&博物館 (Rock and Roll Hall of Fame & Museum)
- ザ・フラッツの北東1km、エリー湖近くにあるロックンロールがテーマの博物館で、通称は「ロック・ホール (Rock Hall)」です。
1986年に完成したガラス張りの三角形の建物で、多くのスターたちの楽器などの展示をはじめ、映像も見ることができます。
- グレイト・レイク科学センター (Great Lakes Science Center)
- ロック・ホールの南西隣にある科学博物館です。300を超える実験や体験型の科学展示があります。
五大湖の自然に関する展示や、映像体験ができるオムニマックス・シアター (Omnimax Theater) などがあります。
- クリーブランド美術館 (Cleveland Museum of Art)
- ダウンタウンの東7kmにある美術館です。3万点ほどの収蔵があり、ピカソの青の時代の作品や、ヨーロッパ絵画では秀逸な作品が展示されています。
また東洋美術部門はボストン美術館を凌ぐといわれ、琳派の屏風絵など日本の国宝級の作品もあります。
ミネアポリス/セントポール
ミネアポリス (Minneapolis) と セントポール (St.Paul) は、シカゴの北西600km、ミシシッピ川の両岸に向き合うミネソタ州の2つの都市で、地元では両者をあわせて「ツイン・シティー」と呼びます。
西岸に人口40万人弱のミネアポリス、東岸に州都で人口30万人弱のセントポールがあります。
ミネアポリスが商業、経済の町、セントポールが政治の町という色分けができ、観光スポットもミネアポリス側に多くあります。
冬の寒さが厳しい地で、住民は北欧系移民が多くて白人が大半を占めます。
アメリカでも最も治安の良い町の一つです。
- ミネアポリス美術館 (Minneapolis Institute of Arts)
- ミネアポリスのダウンタウンの南2.5kmにある美術館です。
1914年の創設で、近代ヨーロッパの絵画や彫刻、写真の他、東アジア、エジプトなどの美術品など8万点を収蔵します。
またファイン・アートや装飾美術では世界的に有名です。
- ウォーカー・アート・センター (Walker Art Center)
- ミネアポリスのダウンタウンの南西2kmにある美術館です。
1879年にバーロウ・ウォーカー氏が自身のコレクションをもとに創設したもので、現代絵画や彫刻作品の展示を中心に、ダンスや音楽、映画といった幅広い芸術の企画も行っています。
センターの向かいには、40点以上の彫刻を屋外展示した「ミネアポリス彫刻庭園 (Minneapolis Sculpture Garden)」があります。
- セント・アンソニー滝 (St.Anthony Falls)
- ミネアポリスの北を流れるミシシッピ川にある落差20mほどの滝で、アメリカの中心部を南北に貫く大河の中で唯一の滝です。ダウンタウンのすぐ北側にあります。
1680年にルイ・ヘネピン牧師が発見し、この周辺に村ができて以来ミネアポリスに発展した市の発祥地で、かつては製粉、製材の動力として、現在は発電に使われています。
上流0.8kmにはミネアポリスとセントポールを結ぶ「ヘネピン橋 (Hennepin Bridge)」があります。
- 州議事堂 (Minnesota Capitol)
- ミネアポリスのダウンタウンの東12km、セントポールのダウンタウンの北2kmにあるミネソタ州の議事堂です。
何度か立て直されて今の建物は1902年完成のもので、大きなドームをはじめ、建物全体に多くの大理石が使われています。
見学ツアーがあります。
- セントポール大聖堂 (St.Paul Cathedral)
- セントポールのダウンタウンの西郊にあるローマ・カトリックの教会です。
1915年の創建で、高さ53mの巨大なドームがあり、アメリカでも屈指の大きさです。
内部には鮮やかな青のステンドグラスがあります。
- モール・オブ・アメリカ (Mall of America)
- ミネアポリスの南20kmにあるアメリカ最大の巨大ショッピング・モールです。
東西南北に4つのデパートがあり、500を超える店舗や30以上のレストランがあります。
中央部には屋内テーマパーク「ナッツ・キャンプ・スヌーピー (Knott's Camp Snoopy)」があります。
セントルイス
セントルイス (St.Louis) は、シカゴの南南西400km、ミシシッピ川の中流の西岸にある人口35万人ほどのミズーリ州の町です。
1764年にフランス人が毛皮の取引所を置いたのが始まりで、「西部への入口」として重要な拠点となり、20世紀に入って自動車のクライスラー社や航空機のダグラス社などが進出し工業都市となりました。
住民は白人、黒人半々で、近年の不況で人口流出が激しく、治安も悪化して2000年以降は毎年「全米の危険な都市」のトップ3に必ず入っています。
ビールの「バドワイザー」で知られるアンハイザー・ブッシュ社もあります。
- ゲートウェイ・アーチ (Gateway Arch)
- ダウンタウンの東側、ミシシッピ川沿いの公園「ジェファーソン・ナショナル・エクスパンション・メモリアル (Jefferson National Expansion Memorial)」の中にある巨大な楕円形のアーチで、西部への玄関となった歴史を記念して1965年に造られたものです。
高さ192mのステンレス製で、「トラム」というカプセル状の乗り物で、地下から頂上の展望台まで登れます。
- ユニオン・ステーション (Union Station)
- ダウンタウン中心部にある巨大なショッピング・モールです。
かつての大陸横断鉄道の駅を改造したもので、多くのレストランやショップが入っており、コンサート・ステージなどもあります。
建物は国の歴史的建造物にも指定されています。
- アンハイザー・ブッシュ工場 (Anheuser-Busch Brewery)
- ダウンタウン中心部の南3kmにある、「バドワイザー」で知られる世界最大のビール・メーカーの工場です。
工場見学のツアーがあり、最後には試飲ができます。所要時間は約1時間です。
- フォレスト・パーク (Forest Park)
- ダウンタウンの西8kmにある公園です。
1904年の万国博覧会の会場跡地で、東西3.5km、南北2kmの広大な敷地に「セントルイス美術館」、「歴史博物館」をはじめ、動物園や劇場などの施設があります。
アメリカの観光地