アメリカ南部各地(アメリカの観光地 5)
1860年にリンカーン大統領が就任して間もなく、工業化が進んで奴隷制廃止と保護貿易を求める北部各州と、大規模なプランテーション農業が中心で黒人奴隷を使って自由貿易を望む南部各州の間で、アメリカ史上最大の内戦「南北戦争」が勃発しました。
戦争の最中には、リンカーンの有名な「ゲティスバーグの演説」がありました。
そして4年に及ぶ内戦は、1865年北部の勝利で終わり、奴隷制の廃止となり、アメリカの近代化が大きく進むことになりました。
アメリカ南東部の地域が「南部」よ呼ばれ、「ディキシー (Dixie)」ともいいます。
各地に南北戦争の史跡が残り、かつて奴隷として扱われた黒人たちから発祥した「ジャズ」が聞かれます。
アトランタ
アトランタ (Atlanta) は、ワシントンDCの南西900km、人口40万余のジョージア州の州都です。周辺人口を含めると470万人を数える南部地域最大の都市です。
周辺は綿花の産地で、19世紀に紡績で発展しましたが南北戦争で町は破壊、復興後20世紀になってコカ・コーラ社が大ヒットして再び発展し、現在は企業城下町になっています。
1996年にオリンピックを開催しています。
また、黒人解放運動の指導者・キング牧師の生地でもあります。
- アンダーグラウンド・アトランタ (Underground Atlanta)
- ダウンタウンの中心にある地下街です。1837年に始まった鉄道敷設の起点で、その時地下に街が造られたアトランタ発祥の地です。
治安が悪化して一時閉鎖されましたが、1989年に新しく巨大なショッピング・モールとして再開発されました。
- ザ・ワールド・オブ・コカコーラ (The World of Coca Cola)
- アンダーグラウンドの南側にある、コカ・コーラの歴史を紹介する博物館です。
商標、瓶、ポスター、CMなど1世紀にわたる変遷や、世界各国のパッケージやロゴなどのコレクションを見ることができます。
また、世界各国のコーラの試飲もできます。
- ジョージア州議事堂 (State Capitol)
- ザ・ワールド・オブ・コカコーラの南にある州の議事堂です。
1889年に完成し、ジョージア州産の金箔で覆われた高さ73mのドームが特徴です。
内部には、カーター大統領、キング牧師、マーガレット・ミッチェルなど、多くのジョージア州ゆかり人物の肖像画があります。
見学ツアーがあります。
- CNNセンター (CNN Center)
- アンダー・グラウンドの北西1kmにあるアメリカ最大のケーブル・テレビ局で、24時間ニュース番組を流しています。
ガイド付きのスタジオ見学ツアーが1時間おきに実施されています。
- ジョージア水族館 (Georgia Aqualium)
- CNNセンターの北0.5kmにある水族館です。
2005年11月に内陸アトランタにオープンした「世界最大」の水族館です。
地元企業の寄付金で設立されたもので、全米唯一のサメやエイなど大型の魚を見ることができる水槽をはじめ5つのセクションがあり、魚に触れ合う機会が少ないアトランタの子供たちに、生き物に触ることのできるコーナーもあります。
- オークランド墓地 (Oakland Cemetery)
- アンダーグラウンドの東2kmにある墓地です。
1850年に造成され、「風と共に去りぬ」の作者マーガレット・ミッチェルをはじめ、南北戦争で戦死した南軍兵士、歴代アトランタ市長など7万人が眠っています。
かつて黒人と白人を分けていた境界線の名残りを見ることができます。
- マーチン・ルーサー・キング Jr. 国立歴史地区 (Martin Luther King Jr. National Historic Site)
- アンダーグラウンドの北西1.5kmにある、アメリカ公民権運動最大の指導者でノーベル平和賞受賞者であるキング牧師ゆかりの地区です。
1929年から12歳まで住んだ生家をはじめ、1968年の暗殺後に埋葬された墓、彼が牧師となった教会をはじめ、1960年代の町並みが保存されています。
生家はツアーのみで内部が見学できます。
治安の悪い場所もありますので、ツアーでの見学がお勧めです。
- サイクロラマ (Cyclorama)
- アンダーグラウンドの南東3km、「グラント公園 (Grant Park)」内にある円形劇場です。
1864年の南北戦争終盤のアトランタでの激戦の様子が一周108m、高さ13mの360度に油絵で描かれ、音響や照明、ナレーションを加えてゆっくり回転する中央の座席で観賞するようになっています。
所要時間は15分です。
- アトランタ歴史センター (Atlanta History Center)
- ダウンタウンの北10kmにあるアトランタの歴史遺産を集めて保存している施設です。
広大な敷地に「アトランタ歴史博物館 (Atlanta History Museum)」、南北戦争に関する資料が展示された「マッケルリース・ホール (McElreath Hall)」、1840年代の農家「トゥーリー・スミス・ハウス (Tullie Smith Farm)」、1928年建造の白亜の大邸宅「スワン・ハウス (Swan House)」などがあります。
- ガバナーズ・マンション (Governor's Mansion)
- アトランタ歴史センターの北西1kmにある歴代州知事の邸宅です。
1968年にギリシャ復古形式を採り入れて建てられた古風な建物です。
内部には南北戦争時代の家具のコレクションがあります。内部見学は予約によるガイド・ツアーのみです。
- ストーン・マウンテン・パーク (Stone Mountain Park)
- ダウンタウンの東25kmにある公園です。
園内に高さ251mの花崗岩の岩山「ストーン・マウンテン (Stone Mountain)」があり、その北面に刻まれた高さ27m、幅58mの南北戦争の三大将軍の巨大なレリーフがあります。
3人の彫刻家が60年かけて1964年に完成させたということです。
岩山の頂上にはロープウェイで登れ、園内には多くのアトラクションやホテル、レストランなどもあります。
- タラへの道博物館 (Road to Tara Museum)
- ダウンタウンの南25km、「風と共に去りぬ」で「タラ」と名づけられた町のジョーンズボロ (Jonesboro) にある博物館です。
映画のロケで出演者たちが宿泊したホテルを改装して1993年に開設され、その後現在の場所に新しく造られたものです。
衣装やポスターなど映画「風と共に去りぬ」に関する品々が展示されています。
ナッシュビル
ナッシュビル (Nashville) は、アトランタの北西320km、テネシー州の州都で人口60万人弱の都市です。
カントリー・ミュージックの中心地として有名な音楽の町です。
19世紀以後プランテーションで発展し、南北戦争の舞台にもなった歴史ある町です。
- 州議事堂 (State Capitol)
- ダウンタウンの中心にある議事堂です。
1859年に建造され、大理石を多く使ったギリシャ神殿風建築です。
天井のフレスコ画も見ものです。
- ライマン公会堂 (Ryman Auditorium)
- 州議事堂の南東0.5kmにある公会堂です。
1892年に船主のトーマス・ライマンが集会や礼拝のために建てたものですが、1943〜1974年にラジオのカントリー音楽の公開番組「グランド・オール・オープリー」の会場となって、カントリー音楽の聖地となっているところです。
昼は博物館、夜はコンサート会場になります。
- ミュージック・ロウ (Music Row)
- 州議事堂の南南西1.5kmにあるカントリー音楽の録音スタジオや音楽関係の事務所の集まる地区です。
全米のカントリー音楽の9割がここで録音されています。
エルビス・プレスリーが録音していたスタジオ「RCAスタジオB (RCA Studio B)」もこの地区にあります。
- カントリー・ミュージック・ホール・オブ・フェイム&博物館 (Country Music Hall of Fame & Museum)
- ミュージック・ロウの北にあるカントリー音楽の博物館です。
ハンク・ウィリアムズ、エルビス・プレスリーをはじめカントリー音楽のスターの愛用した楽器や衣装などを展示しています。
- ザ・パルテノン (The Parthenon)
- ミュージック・ロウの西1km、センテニアル公園 (Centennial Park) に建つ、アテネのパルテノン神殿の実物大のレプリカです。
内部には美術館があります。
- オープリーランド (Opryland)
- 市街の北東10kmにある、カントリー音楽番組「グランド・オール・オープリー」に関連した施設の集まる地区です。
現在の番組の放送スタジオ「グランド・オール・オープリー (Grand Ole Opry)」やその博物館の他、川の流れる室内庭園が名物の「オープリーランド・ホテル (Opryland Hotel)」があります。
メンフィス
メンフィス (Memphis) は、ナッシュビルの西南西320km、テネシー州南西端のミシシッピ川 (Mississippi River) に面する町です。
人口65万人ほどで、その半数は黒人が占め、ブルースの発祥地として、またエルビス・プレスリーが育ったロックンロールのメッカとして知られています。
また1968年に公民権運動のキング牧師が暗殺された町でもあります。
市名はエジプトの古代都市メンフィスにちなんだものです。
- ビール通り (Beale Street)
- ミシシッピ川に近いダウンタウンの西部にある通りです。
ブルースの父といわれるW.C.ハンディが「セントルイス・ブルース」を作ったブルースの発祥地で、B.B.キングが所有するライブ・ハウスをはじめとして多くのライブ・ハウスがあります。夜にはあちこちで演奏を聞くことができます。
またW.C.ハンディを記念した「W.C.ハンディ公園 (W.C.Handy Park)」もあります。
- サン・スタジオ (Sun Studio)
- ダウンタウンの東、ビール通りの東端近くにあるレコーディング・スタジオです。
1950年に音楽プロデューサーのサム・フィリップス氏が才能あるブルース・ミュージシャンのために設立したもので、エルビス・プレスリーをはじめ、多くの大物ミュージシャンがここから輩出しています。
- 国立公民権博物館 (National Civil Rights Museum)
- ダウンタウンの南1kmにある博物館です。
1968年に黒人解放運動のマーチン・ルーサー・キング牧師が演説中に暗殺されたモーテルを博物館にしたものです。
当時の様子や、黒人の差別の実態を示す資料が多く展示されています。
- マッド・アイランド (Mud Island)
- 市街の西、ミシシッピ川の中洲にある公園です。
ミシシッピ川の水源から河口までを縮小した模型のある「リバー・ウォーク」や、川の自然を展示する「ミシシッピ博物館」などのスポットがあります。
- グレースランド (Graceland)
- 市街の南15kmにある、エルビス・プレスリーが住み、1977年に永眠した豪邸です。
広い敷地に一家の墓や、20台を超える愛車のコレクション展示、移動に使った専用飛行機などの展示のほか、栄光の奇跡をつづった映画上映などのアトラクションもあります。
ニューオリンズ
ニューオリンズ (New Orleans) は、アメリカのメキシコ湾岸のほぼ中央、アトランタの南西720kmのミシシッピ川の下流にあるルイジアナ州の町です。
人口50万人弱で、住民の3分の2が黒人です。
1718年にフランスの植民地として建設され、一時スペイン領になりましたが1801年にフランスに返還、しかし財政危機から1803年にアメリカに売却されました。
町の名は「新しいオルレアン (Nouvelle-Orléans)」を英語に置き換えたものです。
フランス、スペイン、アメリカ文化が混合した19世紀からの町並みが残り、またジャズの発祥の地として有名です。
2005年8月にハリケーン「カトリーナ」で壊滅的な被害を受け、町の8割が水没しましたが、現在はほとんど復興しています。
- フレンチ・クオーター (French Quarter)
- 市の東寄り、ミシシッピ川沿いの旧市街です。
北東から南西に細長い、長さ2km、幅1kmほどの長方形の地域で、18世紀にフランス移民が造った町の発祥地です。
18世紀末の大火で焼失後、スペイン統治下で造られた、通りに張り出す2階のバルコニーや、パティオと呼ばれる中庭など南ヨーロッパ風の特徴の家が並んでいます。
中心を通る「バーボン通り (Bourbon Street)」がメイン・ストリートです。
- ジャクソン・スクエア (Jackson Square)
- フレンチ・クオーター中心の東寄り、ミシシッピ川近くににある広場で、ジャズの演奏や大道芸人が出て賑わっています。
北西側にはアメリカ最古の大聖堂「セント・ルイス大聖堂 (St.Louis Cathedral)」があり、ステンドグラスが見所です。
またその隣には元スペイン政庁の建物「カビルド (Cabildo)」があり、現在は「ルイジアナ州立博物館 (Louisiana State Museum)」になっています。
- フレンチ・マーケット (French Market)
- ジャクソン・スクエアの東、ミシシッピ川沿いにある市場です。フランス人入植者とインディアンの交易場が始まりで、200年以上の歴史を持ちます。
野菜、果物、肉類、魚介類の他、香辛料や乾物、観光客向けの土産物もあります。
マーケットの一角にある、名物の四角いドーナツ「ベニエ」とカフェ・オレで有名なカフェ「カフェ・ドゥ・モンド (Cafe du Monde)」が人気です。
- ガーデン・ディストリクト (Garden District)
- フレンチ・クオーターの南5kmにある高級住宅地です。
かつてプランテーションがあった地域で、熱帯植物が繁る林の中にヨーロッパ各地の様式で造られた豪邸が点在します。
沿線を映画「欲望という名の電車」で有名になった市電「セント・チャールズ線 (St.Charles Streetcar)」が走っています。
- コーズウェイ橋 (Causeway Bridge)
- 市街中心部の北西10km、ニューオリンズの北に広がる広大なポンチャートレイン湖 (Lake Pontchartrain) の南岸と北岸をつなぐ橋です。
1956年の完成で、全長38.4kmは世界最長の橋とされています。
アメリカの観光地