ワシントン D.C. 周辺(アメリカの観光地 3)
ワシントン D.C. (Washington, D.C.) は、ニューヨークの南東320km、ポトマック川 (Potomac River) 河口近くにあるアメリカの首都です。
50州に属さない首都だけの「コロンビア特別区 (District of Colombia)」が設けられ、ワシントン州との混同を避けるためにその頭文字の「D.C.」を付けます。
アメリカの独立後、北部と南部各州の要請で中間地点に首都を置くことが決定され、1791年から建設が始まって1800年に首都となりました。
人工都市のために無機質な町並みですが、アメリカの政治、行政機関が集中し、世界トップクラスの博物館群が観光資源となっています。
中心にホワイト・ハウス、その南の東西6km、幅0.8kmの公共公園「モール (The Mall)」に主なスポットがあります。
なお、2001年9月11日の同時多発テロ以後、町全般の警備が厳しくなっています。
ワシントン D.C. 中心部
- ホワイト・ハウス (White House)
- 市街の西寄りに建つアメリカ合衆国大統領官邸です。
1792年に初代大統領ジョージ・ワシントンが発案して建設を始め、1800年に第2代大統領ジョン・アダムスの時に完成しました。
3階建てで132の部屋があり、大統領の住居は2階にあります。
以前は1階の会見場となる東の間など一部が見学ツアーで一般公開されていましたが、同時多発テロ以後は公開していません。
- ワシントン記念塔 (Washington Monument)
- ホワイト・ハウスの南、モールのほぼ中央に立つ高さ170mの石造りの塔です。
初代大統領ジョージ・ワシントンを記念し、36年の歳月をかけて1884年に完成したものです。
高さ152mの位置に展望台があり、エレベーターで登ることができます。
1899年からこの記念塔より高い建物は建てられない条例があるそうです。
- リンカーン記念館 (Lincoln Memorial)
- ワシントン記念塔の西1.5km、モール西端のポトマック河畔にあるギリシャ神殿風の建物です。
1922年に完成し、内部に高さ5.8mの大理石製の第16代大統領エイブラハム・リンカーンの坐像があります。
右の壁には大統領再選時の就任演説の一文が、また左の壁には有名なゲティスバーグの演説文(「人民の人民による・・・」)が刻まれています。
- ジェファーソン記念館 (Jefferson Memorial)
- ワシントン記念塔の南1.2km、タイダル池 (Tidal Basin) のほとりにある円形のギリシャ神殿風の建物です。
1943年に第3代大統領トーマス・ジェファーソンの生誕200年を記念して建てられ、内部に高さ5.8mのジェファーソンの立像があります。
- 国会議事堂 (United States Capitol)
- ワシントン記念塔の東2.2km、モールの東端にあるアメリカ連邦議会の議事堂です。
北側の上院が1800年、南側の下院が1807年に完成し、正面は西側になります。中央の高さ80mの白亜のドームの上には自由の女神像があります。
ガイドツアーで見学ができ、国会開催中は傍聴もできます。
なお、ワシントンDCの町はここを中心に街路が造られています。
- FBI本部 (Federal Bureau of Investigetion)
- ホワイト・ハウスの東1kmにあるアメリカ連邦捜査局の本部です。
1908年に創設された連邦司法省管轄の捜査機関で、連邦法に違反する事件や、2つ以上の州にまたがる犯罪の捜査、情報収集の他に、警察訓練や鑑識などの支援業務も行っています。
当初は検察局でしたが、1930年代のギャングが横行した時代に業務が大幅に広がりました。
以前はガイドツアーがありましたが、現在はテロ警戒で中止しています。
- ナショナル・ギャラリー (National Gallery of Art)
- 国会議事堂の西1km、モールの中にある美術館です。
1941年に銀行家アンドリュー・メロンが寄贈した絵画コレクションをもとに開館し、その後も多くの寄贈を受けて2万5千点を収蔵します。
巨大な大理石造りの西館は19世紀までの美術品、地下通路でつながった東館は近代作品を展示します。
当初は「スミソニアン協会」の一つとして設立されましたが、現在ははずれて独自組織で運営されています。
スミソニアン博物館
スミソニアン博物館 (Smithsonian Museum) は、1846年にイギリスの科学者ジェームズ・スミソンが寄付した遺産を基金に設立されたもので、博物館、美術館、動物園の集合体です。
運営は「スミソニアン協会 (Smithsonian Institution)」が行い、モールの中心部にある本部はヨーロッパの城のような建物で通称「キャッスル」と呼ばれます。
本部を含む16施設は、9つがモールに、5つがワシントン D.C. の他の地区に、2つがニューヨークにあります。
- 国立自然史博物館 (National Museum of Natural History)
- 「キャッスル」の北向かいにある、自然界の歴史をテーマとする博物館です。創設は1846年で、現在の建物は1911年に完成したものです。
恐竜、化石、宝石や鉱物、動植物など幅広い分野をカバーする6500万点もの収蔵品があります。
45.5カラットの「ホープ・ダイヤモンド」など宝石類の展示は世界屈指です。
- 国立アメリカ歴史博物館 (National Museum of American History)
- 国立自然史博物館の西隣にある、植民地時代からのアメリカの歴史を知ることができる博物館です。
1881年の設立で、科学技術、政治、社会、マスコミというテーマで300万点以上の資料を収蔵します。
星条旗、歴代大統領夫人の夜会服、ベトナム戦没者の遺品、大陸横断鉄道の蒸気機関車、冷戦時代の潜水艦など多くの見所があります。
- フリーア・ギャラリー (Freer Gallery of Art)
- 「キャッスル」の南西にある美術館です。
実業家チャールズ・L・フリーアが日本滞在時に収集した美術品を寄贈して1923年に開館した美術館です。
日本の国宝級の美術品をはじめ、中国、韓国、インド、中近東などの美術品を収蔵します。
また知人で画家のホイッスラーの作品1200点を展示する「孔雀の間」も見所です。
- アーサー・M・サックラー・ギャラリー (Arthur M. Sackler Gallery)
- フリーア・ギャラリーの東隣にある美術館です。美術鑑定家のアーサー・M・サックラーが寄贈した古代中国や古代ペルシャの美術品を中心に展示しています。
フリーア・ギャラリーとは地下通路でつながっています。
- 国立アフリカ美術館 (National Museum of African Art)
- アーサー・M・サックラー・ギャラリーの東隣にあるアメリカ唯一のアフリカ美術館です。
50近いアフリカの民族の絵画、彫像、装飾品、織物、日用品など7千点を展示します。
また民話の紹介や祭りのフィルムなどの上映も行っています。
- 芸術産業館 (Arts & Industries Building)
- 国立アフリカ美術館の東隣にある1879年開館の博物館です。
1876年にフィラデルフィアで開かれた建国100年記念博覧会の出展品を展示しています。
4つのホールに当時の最先端の機械や楽器、家具、食器などをはじめ、世界各国から出展された品々があります。日本からは壷や花瓶などの陶磁器が出ています。
当時の最新の蒸気機関車は博覧会の目玉だったものです。
- ハーシュホーン美術館と彫刻庭園 (Hirshhorn Museum & Sculpture Garden)
- 芸術産業館の東隣にある美術館です。実業家ジョセフ・ハーシュホーンが収集した近代から現代の美術品約6千点を収蔵します。
通りの向かいに「彫刻庭園」があり、60点以上のブロンズやステンレスによる彫刻があります。
- 国立航空宇宙博物館 (National Air Space Museum)
- ハーシュホーン美術館の東隣にある航空宇宙に関する博物館で、「スミソニアン協会」の中で最も人気があります。
1976年の開館で、「ライト兄弟の飛行機」、大西洋横断飛行をした「スピリッツ・オブ・セントルイス号」、「アポロ11号の指令船」などの他、日本のゼロ戦、月の石など多くの見所があります。
2012年4月からは、現役を引退したNASAのスペースシャトル「ディスカバリー」が展示に加わっています。
- スミソニアン・アメリカ美術館 (Smithsonian American Art Museum)
- モールの北1km、FBI本部の北東にある美術館です。
1840年建造のギリシャ風の建物に1968年に創設されたもので、植民地以後のアメリカの美術作品や版画、写真などを展示しています。
- 国立肖像美術館 (National Portrait Gallery)
- 国立アメリカ美術館に隣接する美術館です。
アメリカを代表する人物の肖像画や版画、彫刻、写真約1万6千点を収蔵します。
- レンウィック・ギャラリー (Renwick Gallery of the National Museum of American Art)
- ホワイト・ハウスの北西にある美術館で、国立アメリカ美術館の別館です。
20世紀以後のアメリカ人芸術家による工芸品や装飾、日用品の図案などが展示されています。
- 国立郵便博物館 (National Postal Museum)
- 国会議事堂の北1km、ユニオン駅のそばにある博物館です。
200年以上の歴史があるアメリカの郵便事業を、切手や手紙、集配の車や飛行機、仕分け機械などの展示で知ることができます。
ワシントン D.C. 近郊
- アーリントン国立墓地 (Arlington National Cemetery)
- モールのポトマック川対岸にある広大な国立墓地です。建国以来の数々の戦争で亡くなった市民や、国民的英雄など26万人が埋葬されています。
1963年に凶弾に倒れた第35代大統領ジョン・F・ケネディの墓があり、夫人によって灯された火が永遠に燃え続けています。
- ジョージタウン (Georgetown)
- ホワイト・ハウスの西北西3km、ポトマック川沿いの植民地時代の港町です。
人工的なワシントンDCの中心部と異なり、石畳の道路や古風な町並みが残っており、1765年に造られた「オールド・ストーン・ハウス (Old Stone House)」は植民地時代から残る唯一の民家です。
1789年創立のジョージ・ワシントン大学がある学生の町でもあり、レストランやショッピングモールなども集まっています。
- アレキサンドリア (Alexandria)
- ワシントンDCの南10km、ポトマック川下流の西岸がある町です。
1749年にスコットランド商人が造った町で、アメリカ建国まで愛国者たちが集会所や教会で議論をしていた地です。
旧市街地区には18〜19世紀のレンガ造りの建物が多く残っています。
ボルチモア
ボルチモア (Baltimore) は、ワシントン D.C. の北東50kmにある人口60万人余の都市です。
チェサピーク湾 (Chesapeake Bay) の奥にある港湾都市です。
18世紀から水運の要所として栄えましたが、20世紀中頃に不況で町がスラム化し、治安も悪化しました。
そこで30年にわたる長期の再開発計画の末、港地区がよみがえり、全国のウォーター・フロント開発の手本となっています。
- インナー・ハーバー (Inner Harbor)
- 市街中心部近くの入り江の奥にある再開発なったウォーター・フロント地区です。
多くのショップが集まる「ハーバー・プレイス (Harbor Place)」、全米でも有数の規模を持つ「国立水族館 (National Aquarium)」などの施設の他、「世界貿易センター (World Trade Center)」の27階には展望台「トップ・オブ・ザ・ワールド (Top of the World)」があります。
- ベーブ・ルースの生家 (Babe Ruth Birthplace)
- インナー・ハーバーの西1.5kmにある、野球のメジャー・リーグの偉人ベーブ・ルースが1895年に生まれてから少年期を過ごした狭いアパートです。
中は博物館になっており、少年時代に使ったグローブなどを見ることができます。
- マック・ヘンリー要塞 (Fort McHenry)
- インナー・ハーバーの南東4km、入り江の入り口の岬にある要塞跡です。
1776年の完成で、星形の堅固な城壁で囲まれ、1814年のイギリス軍の激しい攻撃に耐えました。
戦闘後に詠まれた詩が現在の国歌「星条旗よ永遠なれ」です。
ワシントン D.C. 周辺各地
- アナポリス (Annapolis)
- ワシントンDCの東40km、チェサピーク湾 (Chesapeake Bay) に臨む町です。独立当初10ヶ月間首都となった町です。
市の中心にある1779年完成の「州議事堂 (State House)」は、1783年には国会議事堂として使われ、釘を使っていない木造ドームが特徴になっています。
市街の東には1845年創設の「海軍士官学校 (U.S.Navel Academy)」があり、海軍や士官学校の歴史を紹介する博物館を見学することができます。
- ウィリアムズバーグ (Williamsburg)
- ワシントンDCの南200kmにある町です。
バージニア州にあり、1699〜1780年にイギリス領のバージニア植民地の首都でしたが、首都の座を譲ってからは停滞しました。
1926年にロックフェラー氏などが歴史保存を提唱して町全体が当時の姿に再現され、中心街は車の乗り入れが禁止で、市民も誇りをもって当時の町並みを維持しています。
古きアメリカのふるさととして国内外から観光客が訪れます。
アメリカの観光地