亜熱帯の山間地、雲南(中国の観光地 15)
雲南省は、北西部が標高3000m以上で高く、南東部が1000m前後という地形をしており、南をベトナム、ラオス、西をミャンマーに接しています。
熱帯の緯度にありながら高度が高いため、中部の昆明付近では常春の気候です。
北部へいくほど高山気候になります。全般に夏は雨季、冬は乾期です。
イ族、ペー族など、中国の中でも多くの少数民族がこの地域に住んでいます。
昆明(クンミン)
昆明は、雲南省中部、標高約1900mにある高原の省都です。年間を通じて温暖な気候で「春城」と呼ばれます。
雲南省全体で26の民族が暮らしていますが、昆明にもイ族、ペー族、ナシ族など12の民族が住んでいます。
歴史文化都市ですが、1999年の世界園芸博覧会でビルやホテルが多く建てられ近代都市の景観に変わってきています。
市の南には琵琶湖の半分ほどの面積をもつ湖「滇池(ティアンチー)」が広がっています。
- 雲南省博物館(ユンナンシェン・ボーウークアン)
- 市街中心部の西にある1958年創設の博物館です。
5万点の収蔵品は雲南省全域から集められたもので、青銅器や銅器などの出土品のほか、各地の少数民族の衣装や装飾品などが展示されています。
- 円通寺(ユアントンスー)
- 市街中心部の北1.5kmにある昆明最古の仏教寺院です。
唐代の9世紀頃「補陀羅寺」として創建し、元代の14世紀に再建して「円通寺」となりました。
境内は庭園のように造られ、山、池、橋、楼閣、回廊などが配置されています。
なお寺院の北隣には昆明動物園があります。
- 大観公園(ダーグアン・ゴンユアン)
- 市街中心部の南西5km、滇池を南に臨む公園です。
湖畔に清代の1690年に建てられ、焼失後1866年に再建された楼閣「大観楼」をはじめいくつか建物があります。
「大観楼」の中には文人や墨客の書が多く残され、上階からは湖や西山が一望に眺められます。
- 雲南民族村(ユンナン・ミンツウツン)
- 市街の南8km、滇池の東岸にある雲南省の25の少数民族の文化、風俗を紹介するテーマパークです。
各民族の村が建てられ、歌や舞踊が見られる他、レストランや娯楽施設もあります。
- 西山(シーシャン)
- 市街の南西15km、滇池の西にある山地の自然公園です。
華亭山、太華山、羅漢山などの山々が峰を連ね、全体は森林に覆われた地域となっています。
山の中腹には元代の1320年創建で五百羅漢のある「華亭寺」や、断崖に造られた道教の石窟「龍門」、西山最大の寺院で年間を通して花が咲く「太華寺」、元代に創建の道教寺院「三清閣」などがスポットとしてあります。
- 金殿(ジンディアン)
- 市街の北東7kmにある1602年創建の道教寺院です。
主殿が青銅で造られ、まばゆい輝きのために「金殿」と呼ばれています。
高さ約7m、幅・奥行きともに約6mの方形で、建物や調度は銅製で、全体の重量は250tにもなります。
- 筇竹寺(チオンチュースー)
- 市街の北西12km、玉案山の山腹にある禅寺です。
建物の壁一面に鮮やかな彩色の五百羅漢があるのが特徴です。
清代の1883年から7年かけて四川省の民間彫塑家・黎広修とその弟子たちによって作られたもので、民間彫塑の傑作と言われています。
- 九郷風景区(ジウシアン・フェンジンチー)
- 昆明の東70kmにある石灰岩地帯にできた鍾乳洞群です。
300以上の鍾乳洞がありますが、ほとんどが未公開で、公開されている一つが「九郷鍾乳洞」です。
「九郷鍾乳洞」は、見学コースがエレベーターや小舟、ロープウェーなどを使うような大規模なものです。
- 石林(シーリン)【世界遺産】
- 九郷風景区の南40kmにあるカルスト地形の風景名所で、高さ30mほどの石柱が林立しています。
海底の石灰岩層が海水で浸食され、地殻変動で隆起してさらに風化によって現在の姿になったといわれています。
遊覧地域には7kmの遊歩道があります。
大理(ターリー)
大理は、雲南省西部、昆明の西270kmにある標高約2000mの高原の町で、周辺は文字通り「大理石」の産地です。白(ペー)族が多く住んでいます。
8世紀に南詔国の都、10〜13世紀には大理王国の都として栄えましたが、1253年にフビライ率いるモンゴル軍に滅ぼされました。
元朝は雲南の支配拠点を昆明に移し、以来雲南の中心は昆明になりました。
- 洱海(アルハイ)
- 大理市街の北に広がる南北42km、東西5kmほどの細長い湖で、透明度の高い水が特徴です。
遊覧船で湖の周遊ができます。
大理地区の主な名所は西岸に集中しています。
- 大理古城(ターリー・クーチェン)
- 市街の北西12kmにある大理の旧市街で、8〜13世紀に都のあった場所です。
周囲6kmの城壁が囲み、東西南北に城門があります。城内にはペー族の住宅が密集し、土産物屋やレストラン、カフェなどが多く並びます。
またペー族の住宅を宿泊施設にした安宿が多く、バックパッカーの滞在拠点にもなっています。
古城に対して新市街のほうは行政や商業の中心地で、「下関(シャーグアン)」と呼びます。
- 崇聖寺三塔(チョンシェンシー・サンター)
- 大理古城の北西1kmにある、大理のシンボルとなっている3つの塔です。
唐代の9世紀に創建された崇聖寺の塔として建てられましたが、寺は荒廃してこの3塔だけが残っています。
主塔は高さ69mで方形16層、2本の小塔は高さ42mで八角10層で、主塔から70m離れて建っています。
1980年の大修理の際に、主塔から多くの仏像や写経、宝物類などが発見されました。
- 蒼山(ツァンシャン)
- 洱海の西に南北に走る標高3000mを越える山脈です。
万年雪に覆われた主峰の標高4122mの馬龍峰をはじめ19の峰が連なっています。
不思議にも、峰と峰の間から1本ずつ計18本の渓流が東の洱海に注いでいます。
大理石の産地でもあります。
- 胡蝶泉(フーディエチュアン)
- 大理古城の北25km、蒼山の雲弄峰の麓にある泉です。
領主に召し上げられた村の美しい娘を、結婚の約束をした青年が取り戻しましたが、官軍に追われて二人はこの泉に身を投げ、泉から無数の蝶が飛び出したという伝説があります。
実際、春から夏には数万匹もの蝶が飛来します。
蝶の繁殖を行い、放し飼いで観察ができる「胡蝶館」もあります。
麗江(リージアン)
麗江は、雲南省北西部、大理の北140kmにある山間の町です。
古くからこの地域に住む納西(ナシ)族の中心地で、独特の文化や風俗を持ち、象形文字である「東巴(トンパ)文字」が現在も生きています。
- 麗江古城(リージアン・クーチェン)【世界遺産】
- 12〜13世紀、南宋代に造られた麗江の街並みです。
中国の他の市街と異なり、城壁の構築や東西南北を意識した都市構造ではなく、「四方街」を中心に扇が広がるよう石畳の道を配置し、疎水も同様に走らせています。
瓦ぶき屋根を持つ古い民家が約4千戸、ナシ族の生活の場として集まっています。
- 玉龍雪山(ユーロン・シュエシャン)
- 麗江の北西10kmから北へ続く山脈です。
標高5596mを最高峰に13の峰が連なり、頂の万年雪が龍が横たわっているように見えるためこう呼ばれます。
麓からロープウェーやリフトで中腹まで登ることができます。
- 白沙(バイシャ)
- 麗江の北10kmにある村です。
15世紀の明代から清代にかけて描かれた壁画で知られています。
有名なものは16世紀創建のラマ教寺院「大宝積宮」の壁画で、ナシ族、チベット族、ペー族、漢族らで共同制作したものといわれています。
- 石鼓(シークー)
- 麗江の西40kmにある村です。
長江の上流である金沙江が北から南へ流れてきて、ここで大きくV字型に流れを北に変えています。
長江の最初の湾曲ということで「長江第一湾」と呼ばれています。
流れが緩やかになっているので、諸葛孔明やフビライが長江の渡河地点としたところです。
チベット軍撃退の記念に1561年に建てられた鼓の形の玉石の碑があります。
- 虎跳峡(フーティアオシャー)
- 麗江の北50kmにある、金沙江の作る18kmにわたる渓谷です。
両岸に玉龍雪山など5000m級の山が並び、山頂からの高低差が3000mを越える世界で最深の渓谷です。
川幅が狭いところで30m程度で、虎が飛び越えたという伝説が由来です。
トレッキングが楽しめます。
香格里拉(シャングリラ)
香格里拉(シャングリラ)は、雲南省北西端の近く、麗江の北北西120kmにある標高3300mの町で、旧称は中甸(チョンティエン)です。
四川省、チベット自治区との省境に近く、ヒマラヤ山脈の東端にあたります。
迪慶(ティーチン)チベット族自治州の中心地で、チベット族やナシ族をはじめ多くの少数民族が住んでいます。
雪山、森林、湖、草原と、牛や羊の群れる桃源郷といわれる地です。
- 松賛林寺(ソンザンリンスー)
- 町の北5kmにあるチベット仏教ゲルク派の寺です。
1681年にダライ・ラマ5世が建立し、ダライ・ラマの銅像や8体の金色の釈迦仏像などがあります。
文化大革命でかなり破壊されましたが、現在はかなり再建が進んでいます。
- 納帕海(ナパハイ)
- 町の北西8kmにある湖です。
冬から春の雨季に湖となり、春以後の乾期には湖から湿地帯、草原となっていきます。
周辺を含めてこの地域最大の草原地帯で、5月には多くの花が咲き乱れます。
- 碧塔海(ビーターハイ)
- 町の東30kmにある東西3km、南北0.7kmの湖です。
周辺は森に囲まれ、春には花が咲き乱れます。
毎年6〜7月にツツジの一種の花びらが水面に落ち、微量の毒があるために食べた魚が酔ったように水面を漂う奇観が見られます。
また厚さ50cmほどの芝生のような植物が湖面に漂い、その表面に多くの植物が生えている様も見られます。
- 白水台(バイシュイタイ)
- 町の南東70kmにある、白い段々畑のような地形です。
流れる水の中の炭酸カルシウムが太陽光で蒸発して長い年月に堆積してできたものです。
ナシ族トンパ教の第一世祖がチベットでの修行の帰りにこの美しい風景に惹かれ、ここで布教したといわれるナシ族にとっての聖地です。
- 梅里雪山(メイリーシュエシャン)【世界遺産】
- 町の北西100kmにある山地です。最高峰は6740mで、6000mを越える峰が13あります。
チベット仏教カキュ派の聖地となっており、この山麓に多くの巡礼者が訪れます。
この山は世界の未踏峰のひとつで、氷河が続き凍土が多く、20世紀に英米日中の登山隊が5回挑戦してすべて失敗しています。
西双版納(シーシュアンパンナ)
西双版納(シーシュアンパンナ)は、雲南省の南西端、昆明の南西450kmにある、ミャンマー、ラオス国境に接するタイ族の住む地域です。夏の雨季と冬の乾期があり、ジャングルと熱帯動物の宝庫です。
中心の町は景洪(ジンホン)です。4月に行われる盛大な「水掛け祭り」が有名です。
- 橄欖壩(ガンランバ)
- 景洪の南東30kmにあるタイ族が住む村で、現地語では「モンハン」と言います。
メコン川上流にあたる瀾滄江が流れ、熱帯の樹木が繁る中に竹造りの住居やタイ式の寺院が点在します。
炎暑の気候ですが、純朴で美しい村の姿を見ることができます。
- 曼飛龍塔(マンフェイロンター)
- 景洪の南西70km、ターモンロン村にある、13世紀初め創建の小乗仏教の仏塔群です。
山の頂上にあり、高さ4mの基壇の上に高さ16mのタケノコ形の主塔が建ち、その周りに高さ9mの8基の小塔が立っています。
全体に純白、尖塔部が金色です。
- 景真八角亭(ジンジェン・バージャオティン)
- 景洪の西60kmにある寺です。
1701年創建で、タイ族仏教建築の傑作といわれます。
高さ15mのレンガ造りで、八角形の屋根は各辺が三角形の小屋根の積み重ねでできている特徴的な形状です。
- 熱帯植物園
- 景洪の東70kmにある植物園で、中国科学院の管轄です。
900haの敷地に3千種の熱帯植物があります。
研究所や研究者の宿泊施設のほか、観光客用の宿泊施設も設置されています。
- 野象谷(イェシアングー)
- 景洪の北50kmにあるアジア象が集まる場所です。
この地域には約300頭の野生の象がおり、中国とラオスの間で移動をしていますが、栄養補給のために定期的にこの地に集まるとのことです。
木の上に宿泊ができる観察施設があります。
中国の観光地