ナポリとイタリア半島南部(イタリアの観光地 6)
イタリア半島の南部は、大都市ナポリを中心として地中海(ティレニア海)の風光に接することができる観光地が多くあります。
気候も温暖で、イタリアの他の地域よりも、開放的なイメージのスポットが多いのが特徴です。
しかし経済的には、北部と比べると工業化が遅れ、農業や観光業が中心で、イタリアの中でも所得が多くない地域です。
国内での南北格差はイタリア社会の問題となっています。
ナポリ (Napoli) は、ローマの南東200km、イタリア半島南部の人口100万人の大都市です。
「ナポリを見て死ね」と言われるほどの、南にナポリ湾(Golfo di Napoli)が広がり、活火山のベスビオ山をのぞむ風光明媚な町です。
(英語では ネイプルズ (Naples) と言います。 )
ローマ帝国、ビザンツ帝国支配の後、12世紀にノルマン人、13世紀にフランス、15世紀にスペイン、18世紀にオーストリア、19世紀にはナポレオンによりフランスと、1861年の統一まで目まぐるしい支配の歴史をたどっています。
ピザの発祥地としても有名です。
一方、2007年以降、増大する生活ごみの処分場の不足で、市内に未回収のごみがあふれるという問題がたびたび発生しています。
なお、イタリア諸都市の中で比較的治安が悪い街のため、観光スポット周辺でも注意が必要です。
ナポリ
- スパッカ・ナポリ (Spacca Napoli)【世界遺産】
- 港の北部、「ドゥオモ (Duomo)」を中心とした一帯で、教会が点在し、狭い路地に店や民家の密集する旧市街です。
地下には迷路のようにはりめぐらされた、古代ローマ時代の地下都市跡 (Napoli Sotterranea)があり、ガイドツアーで見学ができます。
世界遺産に登録されたことで、かつては物騒だったこの地区も警察が常に巡回し、町の雰囲気を味わいながら散策する観光客で賑わっています。
- 国立考古学博物館 (Museo Archeologico Nazionale)
- ドゥオモの西1kmにある博物館です。
16世紀建造の騎兵隊宿舎の建物を1816年に博物館にしたもので、ポンペイやエルコラーノの出土品をはじめ、14〜17世紀にファルネーゼ家が収集したギリシャ・ローマ時代の彫刻やモザイク画、宝石工芸品などが展示されています。
- 王宮 (Palazzo Reale)【世界遺産】
- フェリーの発着するベベレッロ港 (Porto Beverello)の西にある宮殿です。1602年の創建で、1734年からイタリア統一の1861年までフランスのブルボン家の居城でした。
内部は博物館となっており、絢爛豪華な部屋や礼拝堂に、18〜19世紀の美術品を展示しています。
南東側にある「プレビシート広場 (Piazza del Plebiscito)」には8人の歴代ナポリ王の彫像が並んでいます。
- ヌオーボー城 (Castel Nuovo)【世界遺産】
- 王宮の北東にある城跡です。「新しい城」の意で、「卵城」に代わって居城になったための命名です。
13世紀にアンジュー家が建造し、15世紀にアラゴン家のアルフォンソ1世が再建した王家の居城です。
周囲を5基の円筒形の塔が囲み、内部には博物館が入っています。
- ウンベルト1世のガレリア (Galleria Umberto I)
- 王宮の北にあるウンベルト1世時代の1884年に造られたバロック様式のアーケードです。
中央に高さ58mのガラス張りのドーム天井があり、床は大理石が敷き詰められています。
なお、ウンベルト1世はイタリア王国の2代目の国王ですが、帝国主義を推進して失敗し、1900年に暗殺されたという経歴を持ちます。
- サンタルチア港 (Santa Lucia)
- 王宮の南1kmにある、世界三大美港の一つに数えられる港です。
歌にも歌われたナポリの名所として、周辺にはホテルやレストランが多く集まっています。
- 卵城 (Castel dell'Ovo)【世界遺産】
- サンタルチア港の埠頭から海に突き出すように造られた城塞です。12世紀にノルマン王によって建設されたものです。
建造の際に基礎部分に卵を埋め込み、「卵が割れる時に、城もナポリも滅ぶ」という呪文をかけられた伝説から「卵城」と呼ばれるようになりました。
内部見学はできませんが、夜はライトアップされます。
- ナポリの景色を眺めるスポット
- ナポリ市内やサンタルチア、地中海とベスビオ火山という構図、また世界三大夜景とされる景色が眺められる場所は、ナポリ市街の西に高台があるためあちこちで見ることができます。
中でも定番のスポットとしては、ウンベルト1世のガレリア付近から西にケーブルカーで登ったところにある「ボメロの丘 (Vomero)」、市街南西5kmの岬近くにある「ポジリポの丘 (Posilipo)」です。
後者は市街から離れているためバスツアーによく入れられます。
ナポリ近郊
- カゼルタの王宮 (Palazzo Reale di Caserta)【世界遺産】
- ナポリの北30kmの町カゼルタにあるプルボン家の王宮です。
ブルボン家のカルロス3世が、ベルサイユ宮殿をモデルに1752年に着工し、1774年に一応完成しましたが、その後も細部には繰り返し手が加えられています。
5階建ての幅250m、奥行き190mの長方形の巨大な建物で、部屋の総数は1200にのぼります。
内部は贅沢な造りになっており、「王の居間 (Appartamenti Reali)」をはじめ36の部屋が見学できます。
また宮殿の背後には、3kmにわたって広がる「庭園 (Parco)」があり、池や泉、滝などが配置されています。
あまりに広大なため、見学用に循環バスが走り、レンタサイクルもあります。
- ベスビオ山 (Vesuvio)
- ナポリの東15kmにそびえる高さ1281mの活火山で、古代からたびたび噴火を繰り返しています。
有名なのは、西暦79年の大噴火で、ポンペイなど麓の町を火砕流や泥流で埋没させました。
最近の大噴火は1944年で、その際には、1880年に火口まで開通し「フニクリ・フニクラ」という歌まで作られた名物の登山電車「フニコラーレ」が破壊されました。
現在は火口まで行くバスツアーの他、国鉄、ナポリ-ソレント間でベスビオ山周辺の観光地を結ぶ「ベスビオ周遊鉄道」も観光に利用ができます。
- エルコラーノ遺跡 (Ercolano)【世界遺産】
- ナポリの東南東10km、ベスビオ山の西麓にある遺跡です。
古代ローマの漁港で、貴族の保養地だったといわれる地で、西暦79年の噴火では泥流によって埋没しました。そのため木材などは炭化した状態で燃えずに残っています。
比較的狭い範囲に主に住居跡が残っており、当時の家の内部も見ることができます。
- ポンペイ遺跡 (Pompei)【世界遺産】
- ナポリの東南東25km、ベスビオ山南麓にある古代ローマ遺跡です。
ローマの植民都市で、貴族の保養地として2万人ほどの都市として発展していましたが、西暦63年に襲った大地震の再建途上だった西暦79年、ベスビオ山の大噴火が発生し、降り続いた火山灰で1日で完全に埋没しました。
1748年に発見され、以後体系的な発掘が行われ、現在7割程が完了しています。
東西1.1km、南北0.7kmの範囲に石畳の街路や神殿、劇場、浴場の他多くの建物が発掘され、全体が見学できます。
- ソレント (Sorrento)
- ナポリの南南東30km、ナポリ湾の南に突き出すソレント半島の北岸にある人口1万6千人ほどの町です。
民謡「帰れソレントへ」に歌われた町で、アマルフィ海岸観光やカプリ島への玄関として多くのホテルが集まっています。
- アマルフィ海岸 (Costa di Amalfi)【世界遺産】
- ソレントからソレント半島の先端を回って南岸一帯、そして半島の東の付け根のサレルノ (Salerno) に至る約60kmの海岸線です。
10〜11世紀に海洋都市国家・アマルフィ共和国として栄えた地域で、断崖が続く海岸に、箱型の家々がへばりつくように建ち並ぶ町が点在し、レモンやオリーブの畑があります。
歴史と風光明媚な景観で世界遺産に登録されています。
アマルフィ (Amalfi)、ポジターノ (Positano)、ラベッロ (Ravello) といった町が観光スポットです。
- カプリ島 (Isola di Capri)
- ソレントの南西15kmのソレント半島沖に浮かぶ島です。
東西6km、南北2kmほどの小島で、山がちの地形に亜熱帯植物が繁っています。
ローマ時代のアウグスチヌス帝の別荘が建てられてから保養地になっており、多くの観光客が訪れます。
北西部海岸にある海食洞「青の洞窟 (Grotta Azzurra)」は、小さな洞口から差し込む太陽光線が透き通った水に反射して、洞内が美しい青色に満たされるという有名なスポットです。
島へはナポリやソレントなどから船で行くことができます。
- イスキア島 (Isola d'Ischia)
- ナポリの西南西30kmに浮かぶナポリ湾最大の島です。
東西9km、南北7kmで、中央に標高788mの休火山・エポメオ山 (Monte Epomeo) があります。
各地に温泉が湧き、温泉リゾート地になっています。
島の中心地は北東岸のイスキア (Ischia) で、ナポリから船が出ています。
イタリア半島南部各地
- デル・モンテ城 (Castel del Monte)【世界遺産】
- ナポリの東北東200km、アドリア海近くの町アンドリア (Andria) 近郊にある城です。
13世紀に神聖ローマ帝国のフェデリコ2世が建造したもので、八角形の塔が8つあり、中庭も八角形という「8」にこだわった城です。
軍事施設が全くなく、厨房施設も不十分で、城の建築目的が謎となっています。
- マテーラ (Matera)【世界遺産】
- ナポリの東220km、タラント湾北西岸の40kmほど内陸にある町です。町の東側の斜面に多くの岩窟住居が残るサッシ地区 (Sassi) があります。
石器時代を起源とし、8〜9世紀には迫害を逃れたキリスト教修道者が住居や修道院とし、16世紀頃には貧富の差の拡大で貧民の住居として使われました。
1950年代に岩窟から住民が強制的に移住させられ廃墟となりましたが、世界遺産の登録などで、再生利用を進めています。
- アルベロベッロ (Alberobello)【世界遺産】
- マテーラの東北東60kmにある小さな町です。「トゥルッリ (Trulli)」という、円錐形の屋根に白い壁という独特の民家が密集しています。
15世紀以後、領主に住居を建てることを禁じられた農民は、石を円錐形に積んだだけの小屋を建てて生活していました。
18世紀にブルボン家のフェルディナンド4世が当地を訪れた際にこの民家を気に入り、町を直轄領とし、以後はこの形の家のみ建てるように命じたという経緯があります。
旧市街には、土産物屋が並ぶ観光向け「モンティ地区 (Rione Monti)」と、住民が実際に生活している「アイア・ピッコラ地区 (Rione Aia Piccola)」があります。
- レッチェ (Lecce)
- アルベロベッロの南東100km、タラント湾北東のサレント半島の中央部にある町です。
古代ローマ時代は計画的な整然とした町でしたが、中世には形が崩れ迷路のような町になりました。
そのような中に17〜18世紀に華麗なバロック建築が多く造られ、「バロックのレッチェ」といわれるようになりました。
旧市街の中心「ドゥオモ広場 (Piazza Duomo)」に、聖堂「ドォオモ (Duomo)」や「サンタ・クローチェ教会 (Basilica di Santa Croce)」などがあります。
イタリアの観光地