アペニン山脈北麓(イタリアの観光地 4)
ポー川の南からイタリア半島の中央を走るアペニン山脈 (Appennino) の北側のエリアを紹介します。
イタリアの行政区画ではエミリア・ロマーニャ州がほぼこのエリアにあたり、その中心都市がボローニャです。
作曲家のヴェルディ、指揮者のトスカニーニ、歌手のパバロッティなどをこの地域から輩出し、点在する歴史的な都市にも中世の輝かしい芸術の香りが漂っています。
また、ボローニャはソーセージやパスタの「ボロネーゼ」、パルマの生ハム、モデナはバルサミコ酢の産地と、イタリアを代表する美食の地域ともなっています。
南東部のリミニから山中に入ったところに、ユニークな小国サンマリノがあります。
山の砦として1700年以上侵略や併合を受け付けずに独立を守っている世界最古の国家です。
アペニン山脈北麓
- ボローニャ (Bologna)
- ポー川の南、アペニン山脈の北麓にある人口37万人ほどの都市です。
1088年にヨーロッパ初の総合大学「ボローニャ大学 (Università di Bologna)」が置かれ、先進的気風に富む学園都市です。
共産党勢力が強く、建物も赤褐色をしているため「赤い町」と呼ばれます。
また周辺がハム、チーズの名産地で、イタリア屈指の食の都でもあります。
13世紀に造られた「マッジョーレ広場 (Piazza Maggiore)」が中心地で、シンボルの「ネプチューンの噴水 (Fontana del Nettuno)」があり、周辺には14〜17世紀ゴシック建築で未完成となっている「サン・ペトロニオ教会 (Basilica di San Petronio)」や13世紀の「市庁舎 (Palazzo Comunale)」などの歴史的建造物があります。
また中世に教皇派と皇帝派が高さを競い合って造ったという、「2本の斜塔 (Le Due Torri)」も見所です。
- モデナ (Modena)【世界遺産】
- ボローニャの西北西40km、古代ローマの植民地で16世紀にはモデナ公国の首都になった歴史を持つ古い町です。
旧市街の中心に「グランデ広場 (Piazza Grande)」があり、1099年から300年以上かけて造られたロマネスク様式の聖堂「ドゥオモ (Duomo)」が面し、1319年に完成で高さ87mの鐘楼「ギルランディーナ (Torre Ghirlandina)」も含めて世界遺産に登録されています。
自動車のフェラーリの生産地、バルサミコ酢の生産地としても知られています。
- パルマ (Parma)
- ボローニャの西北西100kmにある人口18万人の町で、生ハムの「パルマ・ハム」や、やはり地名がついた「パルメザン・チーズ」の産地として有名です。
紀元前2世紀のローマの植民都市から始まり、16世紀にはこの地方の公国の首都ともなっています。
町の中心に「ガリバルディ広場 (Piazza Garibaldi)」があり、近くに12世紀のロマネスク様式の聖堂「ドゥオモ (Duomo)」や、大理石造りで八角形6層の「洗礼堂 (Battistero)」、古いフレスコ画の残る「サン・ジョヴァンニ教会 (Chiesa di San Giovanni)」などがあります。
また芸術の町として、オペラ劇場「テアトロ・レージョ (Teatro Regio)」や16世紀の木造劇場「ファルネーゼ劇場 (Teatro Farnese)」なども見所です。
- フェラーラ (Ferrara)【世界遺産】
- ボローニャ北東40kmにある人口13万人の町です。14世紀に芸術を愛したエステ家によって造られ、庇護された多くの芸術家によってルネサンス文化が花開いた地で当時の面影を残す街並みが世界遺産になっています。
当時の建物として、城壁で囲まれた旧市街の中心にあるエステ家の居城「エステンセ城 (Castello Estense)」、ロマネスとゴシック様式が混合した聖堂「ドゥオモ (Duomo)」をはじめ、市庁舎、図書館、教会、修道院など多くの歴史的な建物があります。
- ラベンナ (Ravenna)【世界遺産】
- ボローニャの東70km、アドリア海沿岸にある人口15万人の町です。
404年には西ローマ帝国の首都となり、6世紀の東ローマ帝国がイタリアを征服した後、8世紀まで総督府が置かれました。
この時期の初期キリスト教の建造物が町にいくつも点在し、ビザンチン様式の鮮やかなモザイクが多く見られます。
547年創建の八角形の聖堂で、主祭壇のモザイクが有名な「サン・ビターレ教会 (Basilica di San Vitale)」、同じ敷地の450年頃建造で、ダンテが「神曲」でモザイクの美しさを称えている「ガッラ・プラチディアの霊廟 (Mausoleo di Galla Placidia)」が見逃せないスポットです。
- リミニ (Rimini)
- ボローニャの南西120km、アドリア海に面する人口13万人の町です。
古くからヨーロッパのリゾート地で、海岸は海水浴場になっており、多くのホテルがあります。またサンマリノ共和国への玄関ともなっています。
- ウルビーノ (Urbino)【世界遺産】
- リミニの南40km、内陸の丘の上にある古都です。
15世紀にモンテフェルトロ家が築いた文化と芸術の町で、画家ラファエロがこの地で生まれています。
市街全体が世界遺産に登録され、1536年の完成で内部は国立マルケ州美術館になっている「ドゥカーレ宮 (Palazzo Ducale)」、18〜19世紀建造の聖堂「ドゥオーモ (Duomo)」をはじめいくつもの教会や礼拝堂があります。
また「ラファエロの生家 (Casa di Raffaello)」や、町全体が眺められる「アルボルノツ要塞跡 (Fortezza Albornoz)」などのスポットがあります。
サンマリノ
サン・マリノ共和国 (La Repubblica di San Marino) は、リミニの南西20km、標高739mのティターノ山 (Monte Titano) の頂上に町がある南北12km、東西8kmほどの小さな国で、全体が世界遺産に登録されています。
国全体が要塞となっており、ローマ皇帝の迫害から逃れたキリスト教徒が隠遁して共同体を作ったのが始まりです。
301年の建国以来たびたびの併合の企てに屈せず、現在まで1700年間独立を保っており、世界最古の共和国となっています。
人口2万8千人ほどで、観光や銀行業の他、収集家向けの切手発行も国の主な収入になっています。
なおイタリアからの入国に手続きはありません。
- 砦と市街 【世界遺産】
- 切り立った尾根にある3つの頂上に、「グアイタ (Guaita)」、「チェスタ (Cesta)」、「モンターレ (Montale)」という11〜13世紀に造られた砦(ロッカ (Rocca))があり、かつて国の防衛に使われました。
市街は斜面に沿って広がり、中心には「リベルタ広場 (Piazza della Libertà)」、周辺に国会議事堂や教会が集まっています。
山の頂上のため、リミニの町や遠くアドリア海も眺めることができます。
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