ボルドーとフランス南西部(フランスの観光地 6)
フランス南西部は、南にスペインと国境を接する険しいピレネー山脈が横たわり、そこからガロンヌ川が北西に流れてビスケー湾に注いでいます。
内陸部は山がちですが、ガロンヌ川下流域はアキテーヌ地方 (Aquitaine) と呼ばれ、ワインで有名なボルドーが中心地です。
ボルドー
ボルドー (Bordeaux) は、フランス南西部、ガロンヌ川 (Garonne) に臨む人口23万人ほどの町で、世界的なワイン産地の中心地として有名です。
古くからワインの生産と交易で栄えた町で、その富で造られた重厚な建築物が町には多くあります。
三日月のように曲がって流れるガロンヌ川沿いの旧市街に点在する歴史的建造物が、「月の港ボルドー」という名前で世界遺産に登録されています。
- カンコンス広場 (Esplanade des Quinconces)【世界遺産】
- 市街中心部の北、ガロンヌ川近くにある広大な広場です。
東西約300m、南北約400mの大きさはヨーロッパ最大で、ボルドー発祥で、フランス革命に重要な役割を果たした「ジロンド党の記念碑 (Monument aux Girondins)」があります。
- 大劇場 (Grand Théâtre)【世界遺産】
- カンコンス広場の南にある18世紀後半に建てられた劇場です。
正面上部に12の女神像が並び、フランスで最も美しい劇場といわれ、エントランス・ホールの大階段はパリ・オペラ座のモデルとなっています。
- サン・タンドレ大聖堂 (Cathédrale Saint-André)【世界遺産】
- カンコンス広場の南南東1kmにある大聖堂です。
12世紀頃に建てられたロマネスク様式の建物で、高さ75mの2本の尖塔がそびえ、ボルドーの守護神となっています。
北側の扉に13世紀に施された「最後の審判」の彫像はゴシック彫刻の傑作といわれています。
スペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の一つとしての世界遺産となっています。
- シャルトロン地区 (Quartier des Chartrons)
- カンコンス広場の北にある、古くからワイン商の酒蔵や邸宅が集まっていた地域で、18世紀の建物が多く残っています。
ガロンヌ川の近くには、かつてのワイン商の建物を改装し、古いワインのボトルやラベル、ワイン取引の資料などを展示した「シャルトロン博物館 (Musée des Chatrons)」があります。
- 大鐘楼 (Grosse Cloche)
- サン・タンドレ大聖堂の南東0.5kmにある城門です。
15世紀に物見やぐらとして建てられたもので、北側には15世紀、南側には18世紀の大時計がついています。
- アキテーヌ門 (Porte d'Aquitaine)
- サン・タンドレ大聖堂の南1kmにある1755年建造の門です。
市内を南北に走るヨーロッパ一の長さを誇る歩行者天国であるサン・カトリーヌ通り (Rue Saint-Catherine) の南端にあたります。
ワイン・シャトー巡り
ボルドー市周辺には、ブドウ栽培からワイン生産、瓶詰めまで一貫して行う「シャトー」と呼ばれる醸造所がたくさんあります。
ボルドー観光局は、シャトーの見学、試飲を行うツアーを毎日出発させています。半日コースは日替わりで行き先が異なり、サン・テミリオンやメドックでは1日コースがあります。
- サン・テミリオン (Saint-Emilion)【世界遺産】
- ボルドーの東35kmにあるドルドーニュ川 (Dordogne) に臨む小さな町で、周囲に広大なブドウ畑が広がる丘の上に、城壁に囲まれた旧市街があります。
8世紀に聖エミリオンが隠遁生活のために洞窟を掘ったのが始まりといわれ、巡礼者を迎える宿場町で賑わいました。
旧市街には中世の建物が残っています。周辺には世界的に有名なワインシャトーが多くあり、ボルドーでも最高級と自負する赤ワインを生産しています。
旧市街に併せ、ブドウ畑の景観も世界遺産に指定されています。
- ソーテルヌ地区 (Sauternes)
- ボルドーの南南東40kmにある地区です。
ガロンヌ川に注ぐシロン川 (Ciron) との水温の差でできる朝霧によって貴腐ブドウを産し、極甘口の高級貴腐ワインの名産地になっています。
- メドック地区 (Medoc)
- ボルドーの北80km、ジロンド川西岸の地区です。ボルドー周辺でも最も格付けの高い赤ワインを産するシャトーが多く点在する地域です。
大西洋の風が松林でさえぎられ、ジロンド川による適度な温度と砂利状の土壌が良いブドウを育てるためだということです。
ボルドー周辺各地
- ラ・ロシェル (La Rochelle)
- ボルドーの北150km、ナントの南130kmにある大西洋に面する港町です。
11世紀に城塞が築かれたのが始まりで、中世には貿易港として栄えました。
「旧港 (Vieux Port)」には、「サン・ニコラ塔 (Tour Saint-Nocolas)」、「シェーヌ塔 (Tour de la Chaine)」、「ランテルヌ塔 (Tour de la Lanterne)」の古い3塔が建ち、美しい風景が見られます。
また旧市街の入り口には14世紀の「大時計門 (Grosse Horloge)」があります。
町の沖には本土と橋でつながる幅3〜5km、長さ26kmの細長い島「レ島 (Ile de Re)」があり、美しい砂浜に養殖のカキが名物になっています。
- ラスコーの洞窟 (Grotte de Lascaux)
- ボルドーの東140kmの山村モンティニャック (Montignac) の南1kmの山間ある洞窟です。
1940年に愛犬を探していた若者が偶然発見したものだということで、2万年前の旧石器時代にクロマニョン人が描いたという、動物などの彩色壁画が残っています。
- ビアリッツ (Biarritz)
- ボルドーの南南西170km、スペイン国境に近い大西洋に臨む高級リゾート地で、南のスペインから続くバスク地方の一部です。
かつては小さな漁村でしたが、19世紀にナポレオン3世が王妃のために離宮を建ててから、ヨーロッパ中から王侯貴族が集まるようになりました。
温暖な地で、砂浜が続く海岸は年中サーフィンが楽しめます。
ピレネー山脈北麓
- トゥールーズ (Toulouse)
- ピレネー山脈の北、ガロンヌ川沿いにある人口40万人の都市です。
コンコルドやエアバスなどの航空産業都市であり、7万人もの学生を要する学園都市でもあります。
カピトル広場 (Place du Capitole) を中心に旧市街が広がり、ガロンヌ川で採れるピンク色の粘土から作ったレンガによる家並みで「ばら色の町」とも言われます。
11〜12世紀のロマネスク教会で、スペインのサンチアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路にあたる「サン・セルナン聖堂 (Basilique Saint-Sernin)」、13世紀のゴシック建築の「ジャコバン修道院 (Les Jacobins)」、14世紀の修道院を改装して、絵画や教会のレリーフなどを収蔵する「オーギュスタン美術館 (Musée des Augustins)」などのスポットがあります。
- アルビ (Albi)【世界遺産】
- トゥールーズの北東70kmにある町で、タルン川 (Tarn) の粘土で作った赤レンガの建物が多くあり「赤い町」とも呼ばれます。
旧市街の中心には、1282年着工のゴシック教会「サント・セシル大聖堂 (Cathédrale Saint-Cecil)」があり、町の北にはタルン川にかかる1050年建造の古橋「旧橋 (Pont Vieux)」があります。
また画家ロートレックの生地で、生家や、彼の作品を収蔵する「トゥールーズ・ロートレック美術館 (Musée Toulouse-Lautrec)」があります。
- カルカソンヌ (Carcassonne)【世界遺産】
- トゥールーズの南東90kmにある町です。
交通の要衝にあるヨーロッパ最大の要塞でしたが、1659年のスペインとの「ピレネー条約」締結で役割が終わり廃墟となりました。
その後歴史的価値から、19世紀に復元されたものです。
中世の名残を残す旧市街「シテ (Cité)」は外側を二重に城壁が囲まれ、12世紀の城館「コンタル城 (Château Comtal)」や「サン・ナゼール寺院 (Basilique Saint-Nazaire)」などがあります。
旧市街には現在千人ほどの人が住んでいます。
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