リヨン、中央高地とアルプス(フランスの観光地 5)
フランスの中南部は、標高数百mから千数百mの「中央高地」が広がっています。
東西、南北とも300kmにも及ぶ起伏のある地形で、域内の交通の便もよくありません。
また、その東はアルプス山脈の西の端にあたり、その中間を北から南へローヌ川 (Rhône) が流れています。
その中流域には、フランス第2の都市、リヨン (Lyon) があります。
リヨン
リヨン (Lyon) は、フランス東南部にある人口70万人、都市圏では160万人の人口を持つフランス第2の都市です。
「美食の都」、また絹織物工業が発達したため「絹の都」ともいわれます。市の中心を南北にローヌ川 (Rhône) が流れ、東岸がビジネス街、西岸が15世紀頃からの「新市街」です。
さらにその西をソーヌ川 (Saône) が流れ、その西岸がリヨン発祥の「旧市街 (Vieux Ville)」となっています。
旧市街は、ローマ時代からルネサンス時代の建物が残る歴史地区で、細い石畳の道が入り組んで走っています。
ローマ時代はフルビエールの丘の上、3世紀頃から丘の麓が町の中心地になった、リヨン発祥の地です。
ソーヌ川沿いの新市街の一部と、旧市街全体が世界遺産に登録されています。
新市街
- ベルクール広場 (Place Bellecour)【世界遺産】
- 新市街の中心にある17世紀に造られた東西300m、南北200mほどある広大な広場です。
中央にはルイ14世の騎馬像が立ち、隅のほうに「星の王子様」の作者のサン・テグジュペリの像もあります。
周辺にはカフェやレストラン、ホテルが建ち並んでいます。
- 織物・装飾博物館 (Musée des Tissus et des Arts Décoratifs)
- ベルクール広場の南にある博物館で、織物と装飾の2つの博物館が隣接しています。
織物歴史博物館には、フランスの宮廷衣装やタペストリー、宮殿のカーテンやベッドカバーなどの他、歴史的な織物のコレクションを展示しています。
装飾博物館には、16〜18世紀の家具や調度、宝飾類などが展示されています。
- テロー広場 (Place des Terreaux)【世界遺産】
- ベルクール広場の北1kmにある広場です。
南に「リヨン博物館 (Musée des Beaux-Arts)」、東に「市庁舎 (Hôtel de Ville)」が面しています。
中央にバルトルディ作の彫刻で飾られた噴水があります。
- リヨン美術館 (Musée des Beaux-Arts)【世界遺産】
- テロー広場に面して建つ美術館です。
17世紀にサン・ピエール修道院として使われていた建物を美術館にしたものです。
ドラクロワ、モネ、ルノワール、ロダン、藤田嗣治など近代絵画を中心に展示しています。
- クロワ・ルース (Croix Rousse)【世界遺産】
- テロー広場の北0.8kmにある古くから絹織物の盛んな地区です。
織機向けに高い天井の建物が集まり、絹織物のデザインを盗まれないように人目を避けて運ぶために造ったといわれる「トラブール (Traboule)」と呼ばれる小さな通路が迷路のように走っています。
旧市街
- サン・ジャン大司教教会 (Primatiale Saint-Jean)【世界遺産】
- 旧市街の中心部、ソーヌ川の近くに建つ教会です。
1180年から1480年にかけて建設されたものでゴシック様式に一部ロマネスク様式がある建物です。
ルイ9世の墓があり、14世紀の天文時計やステンドグラスなどが見所です。
- ガダーニュ館 (Hôtel Gadagne)【世界遺産】
- サン・ジャン大教会の北にある14〜16世紀に建てられた建物です。
「リヨン歴史博物館」と「マリオネット博物館」が入っています。
「マリオネット博物館」では、フランスの操り人形「ギニョル」や日本の文楽人形も展示されています。
- フルビエールの丘 (Fourvière)【世界遺産】
- 旧市街の西にある丘で、紀元前43年にシーザーの臣下がガリア人攻略のために町を造ったのが始まりです。
麓から、ノートルダム寺院方面とローマ劇場跡方面の2方面のケーブルカーでそれぞれの場所に登ることができます。
- ノートルダム寺院 (Basilique Notre-Dame de Fourvière)【世界遺産】
- フルビエールの丘の上にあるビザンチン様式の教会です。
12世紀頃に建てられたものが破壊されたため、1872年から1896年にかけて市民の寄付で建てられたもので、旧市街、新市街からも見えるリヨンのシンボル的存在です。
- ガリア・ローマ文明博物館 (Musée de la Civilisation Gallo-Romaine)
- ノートルダム寺院の南にある、当地で発掘された古代ローマの遺物を展示する博物館です。
1528年に発見された、48年にローマの元老院で行ったクラウディウス帝の演説の原文を刻んだ青銅板が代表的なものです。
- ローマ劇場跡 (Théâtres Romains)【世界遺産】
- ガリア・ローマ文明博物館の南にある、紀元前15年に建造の円形劇場遺跡です。
1万人収容の規模で、音響効果が良いため、現在もコンサートなどに使われています。
近くには音楽堂やローマ浴場の遺跡もあります。
クレルモン・フェラン
クレルモン・フェラン (Clermont-Ferrand) は、パリの南350km、リヨンの西140km、中央高地の火山地帯であるオーベルニュ地方の中心地です。
かつてはクレルモンとモンフェランの2つの町で、クレルモンは古代からの町でこの地方の宗教の中心地であったのに対して、モンフェランは12世紀にオーベルニュ伯爵が造った新都市です。
1095年にこの地で宗教会議が開かれ、教皇ウルバヌス2世が第1回十字軍を呼びかけたことで有名です。
町は火山の噴火でできた丘の上にあり、溶岩石を使った街並みで色合いが黒っぽく、「黒い町」と呼ばれます。
- 聖母被昇天大聖堂 (Cathédrale Notre-Dame de l'Assomption)
- 旧市街の中心にあるゴシック様式の大聖堂です。
1248年から着工され約100年かけて完成しましたが、ファサードと尖塔は19世紀に建てられたものです。
溶岩を材料とした黒い色調の建物に対し、豊かな色彩のステンドグラスや「聖ゲオルギウスの殉教」の壁画が見所です。
- パスカル通り (Rue Pascal)
- 聖母被昇天大聖堂の東を南北に走る石畳の残る約200mほどの通りです。
17世紀の天才数学者で物理学者、哲学者パスカルの生地近くにあり、骨董屋や古本屋などが並んでいます。
- ノートルダム・デュ・ポール聖堂 (Basilique de Notre-Dame du Port)【世界遺産】
- 聖母被昇天大聖堂の北東にある小さな聖堂です。
11世紀に造られた地下聖堂の上に、12世紀になって建てられたもので、オーベルニュ地方に残るロマネスク教会の代表作といわれています。
地下聖堂には、黒い聖母像や祭壇の周りの彫刻を施された柱などを見ることができます。
世界遺産であるスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路のひとつとなっています。
- ピュイ・ド・ドーム (Puy de Dôme)
- 市街の西10kmにそびえる標高1464mの死火山です。
市街のどこからも見えるシンボル的な山で、頂上まで道路が通じています。
この付近で湧出するミネラル水は、この北のボルビック (Volvic) 村で同名の製品になっており、ラベルの景色はこの周辺の山並みを使っています。
ル・ピュイ・アン・ブレイ
ル・ピュイ・アン・ブレイ (Le Puy en Velay) は、クレルモン・フェランの南南東100kmにある町です。
ロワール川の水源に近い山間部の谷にあり、かつての火山岩の台地が浸食されて切り立った岩山が点在します。
スペイン北西部のキリスト教聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへの4つの巡礼路のうちの起点の1つとなっています。
この町自体も、古代に聖母マリアが出現したという伝説で聖地となっています。
- ノートルダム大聖堂 (Cathédrale Notre-Dame)【世界遺産】
- 旧市街にある大聖堂です。5世紀頃に建てられた聖堂から増改築を経て、19世紀に現在の姿になったものです。
11世紀から16世紀にかけて聖母マリアを祀る重要な聖地の役割を果たしました。
溶岩で作られた「黒い聖母子像」をはじめ、フレスコ画、彫刻、ステンドグラスなど多くの見所があります。
サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の一部として世界遺産になっています。
- コルネイユ岩山 (Rocher Corneille)
- ノートルダム大聖堂の背後にある岩山で、頂上にはクリミア戦争でロシアからの戦利品の大砲を溶かして作ったという高さ16mの巨大な「フランスの聖母子像 (Notre-Dame de France)」が建っています。
夜にはライトアップされます。
- サン・ミシェル・デギーユ礼拝堂 (Chapelle Saint-Michel d'Aguille)
- 市街の近くにある、高さ82mの溶岩でできた切り立った岩山の頂上にある礼拝堂です。
10世紀に当地の司教がフランス人として初めてサンティアゴ・デ・コンポステーラへ巡礼し、帰国後に建てたものです。
狭い石段で登ることができます。夜にはライトアップされます。
中央高地その他の地域
- リモージュ (Limoges)
- クレルモン・フェランの西150km、リムーザン地方 (Limousin) の中心の町です。
ローマ時代から交通の要衝で、中世にはサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼ルートにもなりました。
古くから焼きものの町で、12世紀頃からの「七宝焼」、18世紀からの白磁の「リモージュ焼き」が有名です。
13世紀創建でゴシック様式の「サン・テティエンヌ大聖堂 (Cathédrale Saint-Etienne)」、その隣にあり中世からの七宝焼きのコレクションが有名な「市立博物館 (Musée Municipal)」、北西1kmにある世界の陶磁器を展示する「アドリアン・デュブーシェ国立博物館 (Musée National Adrien Dubouché)」などがスポットです。
アルプス西麓
- モンブラン (Mont Blanc)
- フランス南東部、イタリア国境にそびえる標高4810mのヨーロッパ最高峰です。
「白い山」の意ですが、1786年に医師パカールが初登頂するまでは「魔の山」と言われていました。
一般的な観光は次のようなものです。
モンブランの北にある標高3842mの「エギーユ・ドゥ・ミディ (Aiguille du Midi)」の展望台からモンブラン連峰や遠くマッターホルンまで眺められます。麓のシャモニーからロープウェーで登ることができます。
モンブランの北10kmの標高1900m付近には、厚さ400mで長さ14km、総面積24kuという国内最大の氷河「メール・ド・グラス (Mer de Glace)」があり、夏季のみ登山電車とロープウェーで行くことができます。
周辺には多くのスキー場もあります。
- シャモニー (Chamonix)
- モンブランの北麓、標高約1000mにある山岳リゾートの町です。
夏は登山、冬はスキーの拠点で、ホテルやカフェが集まっています。
町にはモンブラン初登頂者のパカールの記念像や、登山、スキーの歴史を展示する「山岳博物館 (Musée Alpin)」があります。
- エビアン (Evian)
- シャモニーの北50km、レマン湖 (Lac Léman) 南岸の中央部にある温泉リゾート地です。
ローマ時代に温泉リゾートでしたが、施設が造られたのは19世紀でそれ以来の保養地となっています。
旧市庁舎の裏手に、アルプスの氷河を源泉とする泉「カシャの泉 (Source Cachat)」があり、ミネラル・ウォーターのブランドで知られるエビアン水を飲むことができます。
- アヌシー (Annecy)
- リヨンの東100km、シャモニーの西50km、風光明媚なアヌシー湖 (Lac d'Annecy) の北岸にある町です。
16世紀には一時的にサボア公国の都になったことがあり、12〜17世紀の古い街並みが残っています。
丘の上にある「アヌシー城 (Château d'Annecy)」や、川の中州に建ち牢獄や裁判所などに使われた建物で現在は歴史博物館の「パレ・ド・リル (Palais de l'Isle)」などのスポットがあり、アヌシー湖の遊覧船もあります。
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