パリ(フランスの観光地 1)
パリ (Paris) はフランス北中部にある人口220万人ほどの首都です。
市内をセーヌ川が流れ、市内の中心部にある中洲の島「シテ島」が紀元前3世紀に町が発祥した地です。
ローマ時代からいくつもの王朝を経て、1789年のフランス革命、ナポレオン登場とその後のつかの間の王政復古、そして共和制への移行と、歴史が変遷しても常に都であり続けた地です。
町の中心はほぼセーヌ川沿いにあり、主な観光スポットもその周辺に集まっています。
セーヌ川の流れる方向を基準に、北側を「右岸」、南側を「左岸」と呼びます。
またパリ市は20の行政区があり、区名は番号で呼びます。セーヌ川右岸のコンコルド広場からルーブル美術館あたりの中心地が「1区」で、これを中心に時計回りの渦巻き(エスカルゴ?)状に順に「2区」、「3区」、・・・「20区」と配置したわかりやすい行政区画になっています。
セーヌ川右岸
- セーヌ川 (La Saine)【世界遺産】
- パリ市内の中心部をほぼ東から西へ流れる川で、途中にサン・ルイ島 (Île St-Louis) とシテ島 (Île de la Cité) という中洲の島があります。
東はサン・ルイ島付近のシュリー橋から、西はエッフェル塔近くのイエナ橋付近までの約8kmにわたる両岸の景観が世界遺産に登録されています。
(ただし、パリの顔の一つである「凱旋門(エトワール凱旋門)」はセーヌ河岸から離れている関係で、世界遺産の対象から外されています。)
ガイド付きの遊覧船や、ガイドなしの水上バスで景色を楽しむことができます。
(感覚としては、水上バスが走る東京の隅田川よりも少し川幅を狭くしたような感じです。)
コンコルド広場から西へ
- コンコルド広場 (Place de la Concorde)【世界遺産】
- セーヌ川北岸地区の中心部にある広場です。
18世紀にルイ15世の広場として造られましたが、フランス革命後の1783年にルイ16世やマリー・アントワネットらがここで処刑されています。
当初は「革命広場」という名前でしたが、1795年に”協調、調和”の意の「コンコルド」に改称されました。
中央には1833年にエジプトから寄贈されたルクソール神殿のオベリスクが立っています。
西北西方向にはシャンゼリゼ通りが延びてその先に凱旋門が見え、逆方向にはチュイルリー公園からルーブル美術館に至るという、まさにパリ観光の中心にあたります。
- シャンゼリゼ通り (Avenue des Champs Élysées)【世界遺産】
- コンコルド広場から西北西に凱旋門まで約2km続く、パリを代表する目抜き通りで、「エリーゼの野」の意です。
幅100mの広い通りはプラタナスの並木が続き、ガス灯や噴水で飾られています。高級ブランド街、ブティック、ホテルなどが周辺に建ち並んでいます。
夜は通りからライトアップされた凱旋門が浮かび上がります。
- 凱旋門 (Arc de Triomphe)
- シャンゼリゼ通りの西端、「シャルル・ドゴール・エトワール広場 (Place Charles de Gaulle-Étoile)」の中央に建つ門です。
ナポレオンが1806年に着工し、没後の1836年に完成しました。
高さ50m、幅45mで、壁面はナポレオン軍の戦闘を描いたレリーフで飾られています。中央には第一次大戦で亡くなった戦士の墓があります。
エレベーターか階段で屋上に登ることができます。
広場の名称から「エトワール凱旋門」とも言います。
- ラ・デファンス (La Défense)
- 凱旋門の西北西4kmにある再開発副都心です。現代的デザインの高層ビルや大型ショッピングセンターなど、新しい都市計画に基づき開発がされています。
1989年に革命200年を記念して、イタリア産の大理石を使った高さ110m、幅106mの「新凱旋門」が建てられています。
世界遺産のセーヌ川から見る凱旋門のちょうど後方にこの高層ビル群が見えるため、景観の破壊だという批判もあります。
コンコルド広場から東へ
- マドレーヌ寺院 (Eglise de la Madeleine)【世界遺産】
- コンコルド広場の北にあるギリシャ神殿風の大聖堂です。
18世紀後半にカトリック教会として着工されましたがフランス革命で中断、ナポレオンがフランス軍を讃える殿堂として工事再開、最後にルイ18世が教会に戻して1842年に完成しました。
高さ20mの52本のコリント様式の柱が囲み、正面には「最後の審判」、ドアには「十戒」のレリ−フがあります。
- チュイルリー公園 (Jardin des Tuileries)【世界遺産】
- コンコルド広場の東に広がる公園です。東西700m、幅300mほどの広さがあります。
16世紀にチュイルリー宮殿があった地で、フランス革命で焼失後、フランス式庭園に造り変えられました。園内にはマイヨールやロダンなどの彫刻作品も点在します。
市内中心部の散策スポットとなっており、東隣がルーブル美術館です。
- オランジュリー美術館 (Musée de l'Orangerie)
- チュイルリー公園の南西の隅にある美術館です。
ルーブル美術館の別館で、印象派以後の絵画140点余を所蔵します。特にモネの大作「睡蓮」が有名で、専用の展示室に掲げられています。
- ルーブル美術館 (Musée du Louvre)【世界遺産】
- チュイルリー公園の東にある世界最大級の美術館です。
12世紀に城塞として建てられ、16世紀には宮殿となり、1793年に美術館として公開されました。
フランスの王家の美術品にナポレオンの戦利品を加え、現在は古代から19世紀までの美術品約30万点を所蔵します。
「ミロのビーナス」、「サモトラケのニケ像」、ダ・ビンチの「モナ・リザ」、ドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」など世界に名高い作品が多数あります。
- カルーゼル凱旋門 (Arc de Triomphe du Carrousel)【世界遺産】
- ルーブル美術館の西、チュイルリー公園との間にある凱旋門です。
ナポレオンの遠征勝利を記念して1808年に建てられたもので、門の上には戦車を走らせる女神の像があります。
エトワール凱旋門よりも小さいですが、こちらのほうが建造が早く、凱旋門の元祖といえます。
- バンドーム広場 (Place Vendôme)
- チュイルリー公園の北にある広場です。
17世紀のルイ14世時代に造られ、広場の周りも当時の宮殿風の建物が囲んでおり、パリで最も美しい広場といわれます。
中央には1874年に復元されたナポレオンのオーステルリッツの戦い勝利を記念する高さ44mの「オーステルリッツ記念塔」があり、表面は戦利品の大砲を溶かして作ったブロンズ装飾があります。
- オペラ座(オペラ・ガルニエ) (Opéra Garnier)
- バンドーム広場の北にあるオペラ、バレエの劇場です。設計コンクールで選ばれたシャルル・ガルニエが建設し、1875年に完成したものです。
劇場としては世界最大級で、ドーム屋根、コリント様式の列柱、彫刻で飾られた正面など壮麗な外観ばかりでなく、内部も豪華な仕上がりとなっています。
1989年に南東3kmのバスチーユ広場前に「新オペラ座」が完成したため、現在は上演内容はバレエが中心になっています。
- パリ市庁舎 (Hotel de Ville)【世界遺産】
- ルーブル美術館の東1kmにあるネオ・ルネサンス様式の美しい建物です。
17世紀に建てられましたが、1871年に焼失した後に、当初の建物を細部に至るまで忠実に再建したものです。
週1回内部見学ができます。
- マレ地区 (Marais)【世界遺産】
- パリ市庁舎の北東、サン・ルイ島の北に位置する地区です。17世紀にパリの中心地だった地で、当時の古い建物が残る歴史保存地区となっています。
西はポンピドー・センターから、東はバスチーユ広場付近までの約1kmの範囲です。
- ポンピドー・センター (Centre Pompidou)
- パリ市庁舎の北にある総合文化センターです。
1977年に完成、2000年のミレニアムを機に改装した建物で、外壁が鉄パイプとガラスで構成された現代的なデザインです。
1〜3階が図書館、4、5階が国立近代美術館となっています。
- ボージュ広場 (Place des Vosges)【世界遺産】
- パリ市庁舎の東0.7km、マレ地区の中心となる広場です。1612年に造られたパリ最古の広場で、王宮広場として当時の町の中心でした。
広場を囲むように当時建設された36の館が並び、中央には1639年に建てられたルイ13世の騎馬像があります。
館のアーケード街はカフェやブティックが入り、文豪ビクトル・ユゴーの住んだ館
(Maison de Victor-Hugo) は博物館となっています。
- カルナバレ博物館 (Musée Carnavalet)
- ボージュ広場の西にあるルネサンス様式の館を歴史博物館としたものです。
「カルナバレ館」と「プルティエ・ド・サン・ファルジョー館 (Peletier de Saint-Fargeau)」の2棟から成り、古代から1789年のフランス革命までの歴史的資料を年代順に展示し、中世の貴族や庶民の暮らしぶりも再現しています。
特にフランス革命当時のギロチン模型やバスチーユ牢獄の鍵など、生々しい遺物を見ることができます。
- ピカソ美術館 (Musée Picasso)
- カルナパレ博物館の北西にある、かつての塩税徴収官の館を改装して1985年にオープンした美術館です。
1973年のピカソの死去による相続税納税が、多くの作品の物納で行われたためこの美術館が造られました。
ピカソの初期から晩年まで約3500点を収蔵しています。
- バスティーユ広場 (Place de la Bastille)
- ボージュ広場の東にある広場です。14世紀にこの地に要塞が築かれ、後に政治犯を収容する「バスティーユ牢獄」となりました。
この牢獄は旧体制と市民の恐怖の象徴でしたが、1789年のフランス革命で民衆が襲撃、革命後に解体されて広場になりました。
中央には1840年に建てられた「七月革命記念碑 (Colonne de Juillet)」があります。
また広場の東側には1989年に完成した「新オペラ座 (Opéra Bastille)」があります。
シテ島とサン・ルイ島
- シテ島 (Île de la Cité)【世界遺産】
- ルーブル美術館の南東、セーヌ川に浮かぶ中洲の島です。
紀元前3世紀頃にケルト人のパリシイ族が住みついたパリ発祥の地で、「パリ」という名前もここから来ています。
長さ約1km、幅200mほどで、右岸、左岸と何本もの橋でつながり、ノートルダム寺院のある地として有名です。
- ノートルダム寺院 (Cathédrale Notre-Dame de Paris)【世界遺産】
- シテ島の南東部にある、ゴシック建築の最高峰といわれる世界有数の大聖堂です。1163年に着工し、完成は1345年です。
正面には鐘楼を収めた高さ69mの2つの塔がそびえ、内部は天井高33mの壮大な空間になっています。3つの側面に直径10m以上のステンドグラスの壮麗なバラ窓も見所です。
歴史に残る数々の儀式、祭典、葬儀が行われてきた場所で、フランス・カトリックの総本山となっています。
なお「ノートル・ダム」は「私の貴婦人」の意で、聖母マリアに捧げるもので、同名の寺院が国内各地にあります。
2019年4月、火災により尖塔など中心部が焼失しました。今後の再建について検討が始まったところです。
- コンシェルジュリー (Conciergerie)【世界遺産】
- シテ島の北西部、最高裁判所敷地内の北側にある、大時計と3つの塔を持つゴシック様式の建物です。
13世紀に王宮として建てられたものですが、14世紀から監獄として使われ、フランス革命後は多くの王侯貴族や文化人が収容されました。
内部が公開されており、1793年にマリー・アントワネットが処刑までの76日間を過ごした独房も再現されています。
- サント・シャペル (Sainte Chapelle)【世界遺産】
- 最高裁判所敷地の南側中庭にある礼拝堂です。
1248年にルイ9世が、十字軍遠征で持ち帰ったキリストの「茨の冠」を納めるために建てたゴシック様式の建物です。
高さ15mのステンドグラスは世界最大で、パリ最古のものです。
- サン・ルイ島 (Île St-Louis)【世界遺産】
- シテ島のすぐ東に浮かぶ中洲の島です。シテ島よりも小さく長さ700m、幅200mほどです。
島全体に17世紀の雰囲気が残る高級住宅地が広がっています。
ギャラリーやアンティーク・ショップ、カフェ、レストランなどが建ち並び、気軽に散策ができます。
モンマルトル地区
- モンマルトル (Montmartre)
- セーヌ川右岸の中心部から北3kmほどにある丘陵地で、至る所に急な階段のある住宅地です。
かつてゴッホ、ロートレック、ユトリロ、ピカソなど多くの画家や、ハイネやルソーなどの文化人が集まった町です。
当時は一面のブドウ畑でしたが、現在は住宅が建ち並びんだ中にわずかに畑が残っています。小麦を挽くために使っていた風車も残っています。
現在も無名の画家が集まる地です。
- サクレ・クール寺院 (Basilique du Sacré Coeur)
- モンマルトルの丘にそびえるビザンチン様式の白亜の教会です。
普仏戦争敗戦後の1870年に戦死した兵士を祀るためのカトリック教会の建立を議会で決め、40年余をかけて1919年に完成したものです。
中央ドームと高さ80mの鐘楼が特徴的ですが、建設当時はイスラム・モスクを連想させる姿に美観論争も起こったといわれています
- クリニャンクール (Clignancourt)
- 市中心部から北へ5km、土、日、月のみ開催されるパリ最大のノミの市がある町です。
多くの露天商が集まり、家具、置物、骨董、絵画、陶磁器、古本、衣料などさまざまな品物があります。
セーヌ川左岸
オルセー美術館から西へ
- オルセー美術館 (Musée d'Orsay)【世界遺産】
- セーヌ川左岸、チュイルリー公園の対岸にある美術館です。
1900年のパリ万国博で、旧オルセー駅を改装して造られました。19世紀後半から20世紀の印象派の絵画を中心に収蔵しています。
ドガの「踊り子」、ミレーの「落穂拾い」や「晩鐘」、マネの「笛を吹く少年」など著名な傑作が数多くあります。
- アンバリッド (Hôtel des Invalides)【世界遺産】
- オルセー美術館の南西1km、1676年にルイ14世が退役傷病兵5千人を収容するために造った廃兵院です。
奥行き500m、幅250mの広大な前庭と、250m四方の建物の区域から構成され、地下にナポレオンの遺体を安置する巨大なドーム教会や、サン・ルイ聖堂、軍事博物館などが建っています。
1789年のフランス革命は、蜂起した民衆がここの武器庫から銃を奪ってバスチーユ牢獄を襲撃したという、革命の発端の場所でもあります。
- ロダン美術館 (Musée Rodin)
- アンバリッドの東にある、彫刻家ロダンの作品を集めた1916年に開館の美術館です。
建物はロダンが晩年の9年間を過ごしたビロン邸で、庭園には代表作の「考える人」、「カレーの市民」が展示されています。
- エッフェル塔 (Tour Eiffel)【世界遺産】
- アンバリッドの西1km、セーヌ川河畔に立つ鉄塔で、パリを代表する名所です。
1889年の万国博を記念して建てられたもので、当時はあまりに奇抜なデザインで賛否両論が出たということです。
完成時は世界一の高さを誇っていました。現在はテレビ・アンテナが加えられ高さ324mです。
万博後に解体の予定でしたが、軍事用の無線電波を送信するために活用されたため、現在までその姿をとどめています。
3層に展望台がありエレベーターで登ることができます。内部にはミシュランガイドで星を冠しているレストランも入っています。
- シャイヨー宮 (Palais de Chaillot)【世界遺産】
- エッフェル塔の西、セーヌ川に架かるイエナ橋 (Pont d'Iena) を渡った先にある、翼を左右に広げたような形の宮殿様式の建物です。
ナポレオンが宮殿として着工しましたが帝政崩壊で中断、1937年に万国博の施設として完成させたものです。
正面左の翼には「海洋博物館」や「人類博物館」があり、右の翼には「フランス文化財博物館」がありましたが火災があり再建中です。
建物前には「トロカデロ庭園 (Jardins du Trocadéro)」があります。
オルセー美術館から東、南へ
- サン・ジェルマン・デ・プレ教会 (Eglise St-Germain des Prés)
- オルセー美術館の南東0.7kmにある教会です。
542年に修道院として建てられたパリ最古の教会で、現在の建物は11世紀のノルマン人侵攻で破壊されて再建されたものです。
鐘楼は再建時のロマネスク様式で、建物はゴシック様式が混合します。
- リュクサンブール宮殿 (Palais du Luxembourg)
- オルセー美術館の南東1kmにある宮殿です。
アンリ4世没後の1625年に、王妃のマリー・ド・メディシスが生まれ故郷であるフィレンツェのピッティ宮を模して建てたものです。
現在はフランス議会の上院が使っています。
宮殿の南には、多くの彫刻や噴水が置かれ、整然と花壇が配されたフランス式庭園「リュクサンブール庭園 (Jardin du Luxembourg)」があります。
- パンテオン (Panthéon)
- リュクサンブール宮殿の東にあるギリシャ・ゴシック様式の神殿風の建物で、30年の歳月をかけて1789年に完成したものです。
当初は教会となる予定でしたが、議会でフランスの自由に貢献した偉人の埋葬所と決まり、ボルテール、ルソー、ユゴー、ゾラなどが地下墓地で眠っています。
ドームは展望台になっており、市街を眺めることができます。
なおこのドームで1849年に物理学者フーコーが振り子による地球自転の証明実験を行っています。
- モンパルナス (Montparnasse)
- オルセー美術館の南2kmの地区です。
20世紀前半に、モジリアニ、シャガール、藤田嗣治らの画家や、サティ、ストラビンスキーらの作曲家などによる芸術家集団「エコール・ド・パリ」に愛された街です。
現在は近代的な街並みに変わっていますが、当時は田園地帯で、彼らが芸術論を戦わせたというカフェがいくつか残っています。
著名人が眠る「モンパルナス墓地 (Cimetiére du Montparnasse)」もこの地区にあります。
- モンパルナス・タワー (Tour Montparnasse)
- モンパルナス駅のそばにある高さ210mの高層ビルです。
56階建てで、最上階が展望フロアになっていますが、屋上に出て外から景色を眺めることもできます。
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