ロワール川とブルターニュ半島(フランスの観光地 3)
ロワール川 (Loire) は、フランスの中央部を横断してビスケー湾に注ぐ、全長1020kmのフランス最長の川です。
その流域は「フランスの庭」と呼ばれ、比較的小さな町が点在するのどかな地域で、フランスの有名なワイン産地でもあります。
特に中流域の200kmに及ぶなだらかな谷沿いには90以上の中世の城が点在し、城巡りも観光のひとつとなっていて、世界遺産に登録されています。
ブルターニュ (Bretagne) 地方は、フランスの北西部から大西洋に大きく突き出す半島の地域で、ロワール川河口地域の北側に当たります。
ケルト系の文化を持ち、フランスの中でも異国の雰囲気のある地域です。
「ブルターニュ」の語源も古代にケルト人がイギリス方面から渡ってきたことから「ブリテン (Britain)」から来ています。
オルレアン
オルレアン (Orleans) は、パリの南110km、ロワール川の北岸に位置する人口10万人ほどの町です。
ロアール川流域とパリをつなぐ交通の要衝で、古くから外敵との戦いがありました。
特に15世紀の英仏百年戦争の終盤に、当地のイングランド軍の200日にわたる包囲をジャンヌ・ダルクの活躍でわずか10日でフランス軍が破ったことが有名で、ジャンヌ・ダルクゆかりの地となっています。
毎年5月7〜8日には1435年から続く盛大な「ジャンヌ・ダルク祭」が開かれます。
- サント・クロワ大聖堂 (Cathédrale Sainte-Croix)
- 旧市街の中心にあるゴシック様式の大聖堂です。
13世紀に着工し、16世紀に完成、1568年には宗教戦争で一部破壊されましたが、18〜19世紀に現在のものに再建されました。
ジャンヌ・ダルクの生涯を描いたステンドグラスや、礼拝堂にはジャンヌ・ダルクの絵が掲げられています。
- ジャンヌ・ダルクの家 (Maison de Jeanne d'Arc)
- サント・クロワ大聖堂の西0.6kmにある木造の建物です。第二次大戦で焼失して復元されたものです。
ジャンヌ・ダルクは1ヶ月ほど滞在しただけということですが、中は博物館となっています。
ブールジュ
ブールジュ (Bourges) は、オルレアンの南南東100kmにある町で、坂道や石畳の街路に、中世の建造物が多く残ります。
かつてシーザーが「ガリア(現フランス)で最も美しい街」と呼んだ地です。
- サン・テティエンヌ大聖堂 (Cathédrale Saint-Etienne)【世界遺産】
- 旧市街の中心にある大聖堂です。
1195年から1255年にかけて造られたゴシック様式の建物で、アーケードの高さが非常に高く、構造面や外観で他に類似の教会はない独創的なものです。
「シャルトルの青」に対して、こちらのステンドグラスは赤を多用しています。
ロワール渓谷
- シャンボール城 (Château de Chambord)【世界遺産】
- オルレアンの南西40kmにあるロワール渓谷で最大の城です。
1518年にフランソワ1世が狩猟用の邸宅として着工し、40年ほどかけて一応完成し、最終的な完成はルイ14世時代の1685年です。
幅156m、奥行き117m、部屋は440あります。敷地全体は54kuもあり、全長31kmの壁で囲まれ、城や庭園を除く部分は森林公園になっています。
見学は半日程度は見たほうがいいです。
- ブロワ城 (Château de Blois)【世界遺産】
- オルレアンの南西60km、ロワール川北岸の町ブロワにある城です。
13世紀にレオナルド・ダ・ビンチの設計で創建され、1503年から王家の城となり、1598年にパリに移すまでフランスの第1城でした。
16世紀に造られた「フランソワ1世の階段」、1588年にギース公が暗殺された場所という「アンリ3世の居室」、237の隠し戸棚があるという「カトリーヌ・ド・メディシスの部屋」などが見学できます。
- シュベルニー城 (Château de Cheverny)【世界遺産】
- ブロワ城の南東10kmにある城です。
シュベルニー伯爵が1604年から30年かけて造営したもので、外観は城というより邸館のような感じの左右の均整の取れた建物です。
これまで他人の手に渡ったことはなく、現在も伯爵の子孫が住んでいます。内部は一部公開しています。
- アンボワーズ城 (Château d'Amboise)【世界遺産】
- ブロワ城の南西30km、トゥールの東20kmにある、ロワール川を見下ろすように建つ城です。
15世紀末にシャルル8世が建てたもので、イタリア様式の影響を受けた最初の建物です。
その後フランソワ1世らの国王らが住みましたが、1560年に旧教徒が新教徒”ユグノー”を大虐殺した「アンボワーズの陰謀」が起こり、その後城は廃棄され、現在残っているのは一部だけということです。
南東1kmには、レオナルド・ダ・ビンチが晩年を過ごした館「クロ・リュセ (Clos Luce)」があります。
- シュノンソー城 (Château de Chenonceau)【世界遺産】
- アンボワーズ城の南東10kmにある城で、ロワールの城の中では最も優美といわれるルネサンス様式の傑作です。
16世紀の創建で、ロワール川の支流シェール川 (Cher) をまたぐように建てられています。
「6人の奥方の城」といわれ、代々城主は女性でした。
2代目城主がアンリ2世の愛人ディアーヌ・ド・ポワティエで、アンリ2世の死後、正妻のカトリーヌ・ド・メディシスに城を取り上げられたという話が残っています。
トゥール
トゥール (Tours) は、オルレアンの南東110km、ロワール渓谷の中心に位置する町です。市街の北をロワール川、南をシェール川が流れており、ロワール川沿いに旧市街があります。
ローマ時代からの歴史を持ち、15世紀のルイ11世時代には一時首都になったこともあります。ロワール渓谷の古城巡りの拠点にもなっています。
- プリュムロー広場 (Place Plumereau)
- 旧市街の西寄りにある広場です。
中世の木組みの家が周囲に並び、カフェやレストランが集まっています。大学の近くで、観光客や学生で賑わっています。
- サン・マルタン教会 (Basilique Saint-Martin)
- プリュムロー広場の南にある教会です。
4世紀にこの地でキリスト教を布教し、数々の奇跡を起こしたという聖マルタンが修道院を建てた地で、以後火災や取り壊しと再建を繰り返し、現在のものは1887年に建てられたものです。
聖マルタンの墓もここにあります。
- サン・ガシアン大聖堂 (Cathédrale Saint-Gatien)
- プリュムロー広場の東1kmにある大聖堂です。
13〜16世紀にわたって建てられたゴシック様式の教会で、聖サン・マルタンのさまざまな奇跡を描いたステンドグラスがあります。
北側は死を表す青、南側は楽しさなどを表す赤が基調になっています。
- トゥール美術館 (Musée des Beaux-Arts)
- サン・ガシアン大聖堂の南隣に建つ美術館です。
17〜18世紀の大司教の館を改装して1910年に開館したもので、19〜20世紀のフランス絵画を中心に展示しています。
フランス式庭園の中庭もあります。
- ビランドリー城 (Château de Villandry)【世界遺産】
- トゥールの西南西15kmにある城です。
1530年頃の創建で、中世の城塞の名残をとどめるルネサンス様式の城館です。
幾何学模様のフランス式庭園が有名で、泉水の庭園、樹木庭園、菜園と3層に分かれています。
- アゼー・ル・リドー城 (Château d'Azey-le-Rideau)【世界遺産】
- トゥールの南西25km、アンドル川 (Indre) の中洲にある優雅な城で、1518年から建造され、ゴシックからルネサンスへの過渡的な様式を持っています。
城主の奥方が築城の指揮をとったといわれ、その姿から「ロワールの真珠」とも呼ばれます。
内部は家具や絵画などが配された「ルネサンス博物館」となっています。
- ユッセ城 (Château d'Ussé)【世界遺産】
- トゥールの南西40kmのアンドル川沿いにある城です。
童話「眠れる森の美女」のモデルの城として有名で、深い森を背景に、まさしく「西洋のお城」のイメージが当てはまります。
1485年から1535年にかけて建造され、さまざまな建築様式が混在します。
城内では中世の家具や調度品を展示し、ロウ人形で「眠れる森の美女」の物語が再現されています。
アンジェ
アンジェ (Angers) は、トゥールの西100km、北からマイエンヌ川 (Mayenne)、サルト川 (Sarthe) が合流し、すぐ南でロワール川に注ぐメーヌ川 (Maine) が流れる、人口26万人の製造業や商業が盛んな都市です。
15世紀から大学がある学園都市でもあります。
- アンジェ城 (Château d'Angers)【世界遺産】
- 市街の中心部、メーヌ川河畔にある城塞です。11世紀にアンジェ公が建造し、13世紀にルイ9世が再建したものです。
全長660mの城壁で囲まれ、周囲に17の円塔が配されています。
城内にあるタピスリー(「タペストリー」の仏語)のコレクションが有名で、中でも14世紀作で「ヨハネの黙示録」をテーマとする縦5m、長さ107mに及ぶ「黙示録のタピスリー」は現存する最古のものといわれ、最大の目玉です。
ナント
ナント (Nantes) は、ロワール川河口近くにある人口30万人弱の都市です。
古代からの歴史を持ち、中世にはブルターニュ公爵が宮廷を置いた地です。
1598年に、アンリ4世が国内のプロテスタント「ユグノー」の信教の自由を認めた「ナントの勅令」を出した地としても知られています。
- ブルターニュ公城 (Château des Ducs)
- 市街の中心部にある城です。13世紀から造られ、15世紀に最後のブルターニュ公の居城でした。
1532年にフランスに帰属されてからは国王の居城になりました。
内部には民族衣装や家具などを展示した「民俗博物館」と、海洋貿易に関する資料を展示する「海洋博物館」があります。
金冠の塔や、冠の形の井戸の見所もあります。
- サン・ピエール・サン・ポール大聖堂 (Cathédrale Saint-Pierre et Saint-Paul)
- ブルターニュ公城の北にある大聖堂です。
1434年に着工し、ジャン5世が公国一の大聖堂を望んだため、完成まで450年以上かかりました。
ナントの勅令にアンリ4世が署名をした場所でもあります。
- ナント美術館 (Musée des Beaux-Arts)
- ブルターニュ公城の北東にある美術館です。
1810年の創設で、中世から現代までの絵画を展示しています。
17世紀の画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールやアングル、クールベなどの優れたコレクションがあります。
- ジュール・ベルヌ博物館 (Musée Jules-Verne)
- ブルターニュ公城の南西3kmのロワール川沿いの高台にある博物館です。
「十五少年漂流記」、「80日間世界一周」などの作者で当地出身のジュール・ベルヌの原稿や初版本、挿絵などが展示されています。
ブルターニュ半島各地
- レンヌ (Rennes)
- ナントの北100km、ブルターニュ半島の付け根に位置するブルターニュ地方の中心地です。大学があり学生の人口が多い学園都市で、工業都市でもあります。
1720年の大火で町の大半が焼失しましたが、旧市街の歴史的建造物は残りました。
17世紀のネオ・クラシック様式の「サン・ピエール大聖堂 (Cathédrale Saint-Pierre)」をはじめ、中世の建物が街並みに残っています。
- サン・マロ (Saint-Malo)
- レンヌの北70km、サン・マロ湾に面する高級リゾート地です。
中世には合法とされた海賊の港町として発展しました。
旧市街は12世紀に築かれた城壁に囲まれ、石造りの建物が集まっています。これらは第二次大戦でドイツ軍撃退のために連合軍の爆撃で破壊されましたが、戦後市民によって瓦礫から忠実に再現したものです。
旧市街の中心に11世紀建造の「サン・ヴァンサン大聖堂 (Cathédrale Saint-Vincent)」があります。
街にはカフェ、ブティック、土産物屋などが集まり、海岸沿いにはホテルや別荘が並びます。
- モン・サン・ミシェル (Mont Saint-Michel)【世界遺産】
- ノルマンジー地方南西部、サン・マロ湾 (Golfe de Saint-Malo) の奥の海岸にある修道院で、海岸から1kmほど沖の陸繋島の岩山に建っています。
8世紀から建設が始まり、完成は16世紀です。15世紀の百年戦争では要塞、フランス革命後は監獄として使われたことがあります。
外観はゴシック様式ですが、内部はさまざまな様式が混合しています。
満潮時は完全な島になり、海に浮かぶ姿が有名です。
現在は堤防で結ばれていますが、潮流による砂の堆積が進んだため、本来の姿を取り戻すために堤防から橋への切り替え工事を行っています。
- カンペール (Quimper)
- ブルターニュ半島南西部にある町です。
5世紀にイギリスから渡ってきたケルト人が造った町で、当時のイギリスの名称「ブリタニア」から「ブルターニュ」となったという発祥の地です。
古い街並みの旧市街の中心に1240年から建てられた「サン・コランタン大聖堂 (Cathédrale Saint-Corentin)」があり、特産のカンペール焼きの工房や博物館なども点在します。
フランスの観光地