フランス北東部(フランスの観光地 4)
フランス北東部はドイツやベルギー、ルクセンブルクと接し、ロレーヌ (Lorraine)、アルザス (Alsace) と呼ばれる地方があります。
これらの地域は昔から鉄鉱石や石炭を産出し、交通の要衝でもあったことから、中世以後何度もフランスとドイツで帰属をめぐって争ってきました。
ロレーヌ地方は、パリから250kmほど東方の一帯で、北にルクセンブルクやドイツとの国境があります。中心地は観光都市のナンシーがあります。
アルザス地方は、ロレーヌ地方の東に隣接する地域で、東にドイツ国境があります。中心地はストラスブールです。
これらの地域の南西に当たるのが、ブルゴーニュ (Bourgogne) 地方です。
気候が比較的温暖で、地形もそれほど険しくないため、農業が盛んな地域です。
名産ブルゴーニュ・ワインで知られ、中心地のディジョンはマスタードが有名です。
ナンシー
ナンシー (Nancy) は、パリの東280km、フランス北東部のロレーヌ地方の中心地です。
地下資源が豊富で、ドイツと領有争いが絶えず、普仏戦争の1871年から第二次大戦後までドイツ領でした。
18世紀頃から造られたロココ建築の街並みに、20世紀初頭からのアール・ヌーボー運動で、新様式の建築物がたくさん建てられ、街全体がギャラリーのようになっています。
- スタニスラス広場 (Place Stanislas)【世界遺産】
- 市街の中心部にある、18世紀にロレーヌ公国の王・スラニスラスが造営の広場です。
周囲を市庁舎 (Hôtel de Ville) をはじめとするロココ様式の建物で囲み、金と黒の彩りで細工を施した鉄骨の門が通りの入り口を飾って、絢爛豪華な雰囲気を出しています。夜にはライトアップもされます。
すぐ東の「アリエンス広場 (Place de l'Alliance)」、北の「カリエール広場 (Place de la Carriere)」を含めて世界遺産に登録されています。
- ナンシー美術館 (Musée des Beaux-Arts de Nancy)
- スタニスタス広場の西側にある、ナポレオンが設置した市内最古の美術館です。
20世紀初めの「ナンシー派」といわれる画家たちの作品をはじめ、中世以後の絵画や、ガラス工芸品なども展示しています。
- ペピニエール公園 (Parc de la Pépinière)
- スタニスタス広場の北東にある広い公園です。
市民の憩いの場となっており、テラスや花時計、バラ園などがあります。
- ロレーヌ公の館(ロレーヌ地方博物館)(Palais Ducal / Musée Lorraine)
- ペニピエール公園の西にある13世紀に建てられたゴシック様式の宮殿です。
ロレーヌ公国時代の宮殿で、内部は博物館になっており、ロレーヌ地方の歴史的資料や、ロレーヌ地方の画家による絵画などを展示しています。
隣にロレーヌ王家代々の墓がある、「コルドリエ教会 (Eglise des Cordeliers)」があります。
- クラフ門 (Porte de la Craffe)
- ロレーヌ公の館の北にある門です。市街を囲む4門のうちの北門にあたり、1382年の建造です。
2つの尖塔を持ち、刑務所に使われたこともあります。
現在はロレーヌ地方博物館の別館になっています。
- ナンシー派美術館 (Musée de l'Ecole de Nancy)
- スタニスタス広場の南西2kmにある美術館です。
ナンシー派の後援者だったジューヌ・ゴルバンの私邸を美術館としたもので、アールヌーボーの工芸作家エミール・ガレやマジョレル、グルーベルなどの作品を、生活する部屋の雰囲気の中で展示しています。
ストラスブール
ストラスブール (Strasbourg)は、ナンシーの東120kmにあるアルザス地方の中心地です。
すぐ東をライン川が流れ、ドイツとの国境になっています。河川港がある昔から交通の要衝で、ドイツと領有を争った地です。
古代から近代まではドイツ領だったため、言葉や文化はドイツ系で、地名自体がドイツ語に近いものです。(ドイツ語では Straßburg(シュトラースブルク))
フランス屈指の大学都市で、欧州統合の国際機関が設置されている国際都市でもあります。
ライン川支流のイル川 (L'Ill) に囲まれた大きな中洲島が「旧市街」で、この地域全体が世界遺産になっています。
- ストラスブール大聖堂 (Cathédrale de Strasbourg)【世界遺産】
- 旧市街の南東部にある大聖堂です。
1176年着工、1439年完成と長い年月を経て建てられたゴシック建築の傑作で、赤砂岩で造られ、高さ142mの尖塔が建っています。
内部には「最後の審判」が描かれた「天使の柱」や、12〜15世紀の美しいステンドグラス、毎日12時半に動き出すカラクリ時計などの見所があります。
- パレ・ロアン (Palais Rohan)【世界遺産】
- ストラスブール大聖堂の南東にある18世紀の司教たちの館だった優雅な造りの建物です。
内部は3つの博物館が造られ、1階が「装飾博物館」、2階が「美術館」、地下が「考古学博物館」になっています。
- プティット・フランス (Petite France)【世界遺産】
- 旧市街の南西部にある、イル川の水路が4本に分かれて流れる地域で、川沿いに木組みや切妻などのこの地方独特の街並みが保存されています。
イル川をめぐる観光船で街並みを眺めることができます。
アルザス・ワイン街道
ストラスブールの西郊から南へ連なるボージュ山脈の東麓に、約100kmにわたってワインの産地が点在し、それをつないでいる街道は「アルザス・ワイン街道 (Route des Vins d'Alsace)」とも呼ばれます。
中世の風情が残る村が100以上あり、無数のワインセラーが点在します。
主な町は、オベルネ (Obernai)、バール (Barr)、リクビル (Riquewihr)、カイゼルスベルク
(Kaysersberg)、エギスアイム (Eguisheim)などで、その中心都市がコルマール
(Colmar) です。
- コルマール (Colmar)
- ストラスブールの南南西70kmにある町です。
アルザス・ワイン街道の中ほどに位置し、第二次大戦の戦火を免れた中世の建物や木組みの街並みが残っています。
特に、細い運河沿いにパステルカラーの民家が並ぶ明るい雰囲気の「プティット・ブニーズ (プチ・ベニス/ Petite Venise)」は女性に人気です。
中世の絵画や彫刻を展示する「ウンターリンデン美術館 (Musée Unterlinden)」も見所です。
ブルゴーニュ地方
- ディジョン (Dijon)
- パリ南東270kmにあるブルゴーニュ地方の中心の町です。
11世紀からブルゴーニュ公国の都として栄え、中世には多くの芸術家を招いて庇護し、芸術の都となりました。
旧市街の中心に14〜15世紀に建てられた宮殿「旧ブルゴーニュ公宮殿 (Palais des Ducs)」があり、その一部は「ディジョン美術館 (Musée des Beaux-Arts)」になっています。
また旧市街には、13世紀創建の「ノートルダム教会 (Eglise Notre-Dame)」、15世紀創建の「サン・ミシェル教会 (Eglise Saint-Michel)」、11世紀の修道院「サン・ペニーニュ大聖堂 (Cathédrale Saint-Benigne)」などがあります。
- ボーヌ (Beaune)
- ディジョンの南30kmにある町です。「黄金の丘陵」といわれるブルゴーニュ・ワイン生産の中心地です。
ローマ時代から生産が行われてきたといわれ、街中に試飲ができるカーブ(酒蔵)があり、周辺のワイナリーめぐりもできます。
町の中心には「ワイン博物館 (Musée du Vin de Bourgogne)」があります。
「ノートルダム教会 (Collegiale Basilique Notre-Dame)」、15世紀に貧しい人々救済のために建てられた「施療院 (Hôtel Dieu)」などのスポットもあります。
- サント・マドレーヌ教会 (Basilique Sainte-Madeleine)【世界遺産】
- ディジョンの西100kmの丘にある町ベズレー (Vézelay) の中心、丘の頂上にあるロマネスク様式の教会です。
1104年の創建で、1120年の火災で再建されたものです。
ステンドグラスはなく派手さはありませんが、内部の壁面に施されたさまざまな彫刻が見所です。
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