ミュンヘンとバイエルン地方(ドイツの観光地 5)
ドイツ南東部は、バイエルン (Bayern) 自由州が占めています。
現地語では「バイアーン」と発音し、英語などでは「ババリア」と呼びます。
南部がアルプスに連なる山岳地帯で、夏は避暑、冬はスキーなどで多くの観光客が集まります。
ドイツの中でも独自の郷土意識があり、自身「バイエルン共和国」という意識が強いといわれます。
文化的には同じ高地の隣国オーストリアと共通性があり、自国の首都ベルリンよりもウィーンに対抗意識を燃やす気質があるそうです。
ミュンヘン
ミュンヘン (München) は、ドイツ南東部、バイエルン地方の中心地で、人口140万人弱ののベルリン、ハンブルクに次ぐドイツ第3の都市です。
12世紀以後、バイエルン公国の宮廷都市として栄えた歴史を持ちます。
ビール醸造が盛んで多くの醸造所があり、毎年9〜10月に行われるビールの祭り「オクトバーフェスト」は世界的に有名です。
1972年のオリンピック開催地です。
- マリエン広場 (Marienplatz)
- ミュンヘン中央部、東西1kmほどの楕円形に広がる旧市街の中心にある広場です。
新市庁舎が建ち、西へミュンヘン随一の繁華街「カウフィンガー通り (Kaufingerstraße)」、「ノイハウザー通り (Neuhauserstraße)」が旧市街の西にあたる「カールス広場 (Karlsplatz)」まで伸びています。
ミュンヘン観光の起点です。
- 新市庁舎 (Neues Rathaus)
- マリエン広場の北側に建つ20世紀初頭に建てられたネオ・ゴシック様式の建物です。
高さ85mの鐘楼にある仕掛け時計が名物で、16世紀の大公の結婚式を再現した等身大の人形が毎日11時に見られます。
- フラウエン教会 (Frauenkirche)
- 新市庁舎の西に建つ教会で、日本語では「聖母教会」です。
15世紀に造られたゴシック様式のレンガ造りの建物で、ねぎ坊主形の王冠を頂く高さ100mの2本の塔が特徴です。
内部にはバイエルン王国の美術品を多く収蔵しています。
- ビクトアリエン市場 (Viktualien Markt)
- マリエン広場の南にある市場です。肉や野菜、果物、チーズ、花など生鮮品の市場で、市民生活が肌で感じられます。
周辺には小さな飲食店が集まり、夏にはビアガーデンも開きます。
- レジデンツ (Residenz)
- マリエン広場の北東にある1384年から1918年までバイエルン国王だったビッテルスバッハ家の宮殿です。
内部はいくつかの博物館として公開されており、特に豪華な内装の各部屋や陶磁器コレクションが見られる「王宮博物館」や、王家の宝飾品を展示する「王宮宝物殿」などが見所です。
- アルテ・ピナコテーク (Alte Pinakothek)
- マリエン広場の北北西1.5kmにある美術館です。
ルートビッヒ1世の命により1836年の開館したもので、14〜18世紀のヨーロッパ絵画を約7千点収蔵します。
特にルネサンス期の絵画はルートビッヒ1世自身が莫大な資金を使って収集したといわれ、デューラーやルーベンスなどの充実したコレクションを見ることができます。
なお建物は第二次大戦で破壊された後、1964年に再建されたものです。
- ノイエ・ピナコテーク (Neue Pinakothek)
- アルテ・ピナコテークの北隣にある美術館です。
1853年にルートビッヒ1世のコレクションを中心に展示するため開館し、19世紀のドイツ・ロマン派の絵画や彫刻を中心に展示しており、ゴッホやゴーギャン、ミレーなどの秀作も見ることができます。
- ピナコテーク・デア・モデルネ (Pinakothek der Moderne)
- アルテ・ピナコテークの東隣にある美術館です。
2002年に3番目の「ピナコテーク(絵画館)」として開館し、20〜21世紀の絵画、グラフィック・アート、デザイン、建築などの作品を展示しています。
- レーンバッハ美術館 (Stadtische Galerie im Lenbachhaus)
- アルテ・ピナコテークの南西にある美術館です。
19世紀の肖像画家レーンバッハ侯爵の邸宅兼アトリエだった建物で、1924年に美術館としたものです。
内部は当時のまま保存され、本人の作品が展示されています。また抽象画家カンディンスキーのコレクションはドイツ一です。
- ドイツ博物館 (Deutsches Museum)
- マリエン広場の南東1km、イザール川 (Fluss Isar) の中洲に建つ世界最大級の科学・技術に関する博物館です。
1903年に経済学者オスカー・フォン・ミラーが創設したもので、広大な敷地に膨大な展示を行っています。
ライト兄弟の飛行機模型や、ベンツの第1号自動車の展示をはじめ、実演や自分で操作のできる機械が多数あります。
- ニンフェンブルク (Schloss Nymphenburg)
- 旧市街の西北西6kmにある宮殿です。
17〜18世紀に造営されたバイエルン王家の夏の離宮で、「妖精の城」の意です。幅700mに及ぶ国内最大のバロック様式の建物で、華麗なフレスコ画があるロココ様式の大広間や美人画ギャラリーなどの見所があります。
広大なフランス式庭園には小宮殿や茶館などが点在しています。
- ダッハウ強制収容所跡 (KZ-Gedenkstätte Dachau)
- ミュンヘン北西20kmの町ダッハウにある、1933年にナチスが初めて開設した強制収容所跡です。
ポーランドにあるアウシュビッツと並んでヨーロッパではホロコーストの代名詞となっており、当時の施設内部や、ホロコーストに関する博物館の見学ができます。
レーゲンスブルク
レーゲンスブルク (Regensburg) は、ミュンヘンの北北東100km、ドナウ川 (Fluss Donau) 沿いにある人口12万人の町です。
1世紀のローマ時代からの歴史を持ち、中世には神聖ローマ帝国の議会が開催された地です。
戦火に巻き込まれていないため古い街並みが残されており、旧市街が世界遺産に指定されています。
- 大聖堂 (Dom)【世界遺産】
- 旧市街の中心にあるゴシック様式の大聖堂で、正式には「聖ペーター大聖堂 (Dom St.Peter)」です。
13〜16世紀に建造され、1869年に高さ105mの尖塔が建てられました。
14世紀の美しいステンドグラスや中世の石像も多く残されています。
ミサの時には「大聖堂のスズメ (Domspatzen)」という愛称の少年合唱団の美しい歌声を聴くことができます。
- 旧市庁舎 (Altes Rathaus)【世界遺産】
- 大聖堂の西にある13世紀に建造の建物です。
中には当初からたびたび帝国議会が開かれ、1663年からは「永続的帝国会議」の場所となった大広間が「帝国議会博物館 (Reichstagsmuseum)」として残されています。
地下牢や拷問室、塩を計った天秤なども残されており、見学はガイドツアーでのみ可能です。
- シュタイナーネ橋 (Steinerne Brücke)【世界遺産】
- 旧市街の北、ドナウ川にかかるドイツに現存する最古の橋です。
1146年の建造で長さは330mあり、橋の手前の塔は博物館となっています。
橋のたもとにある「ヒストーリッシェ・ブルストキュッヘ (Historische Wurstküche)」は800年以上続く世界一古いソーセージの店で、名物の焼きソーセージを食べることができます。
- トゥルン・タクシス城 (Schloss Turn und Taxis)【世界遺産】
- 旧市街の南にある建物です。
19世紀にヨーロッパの郵便事業を独占して巨万の富を築いたタクシス家が建てたもので、現在も住居として使用されています。
ガイドツアーで見学ができます。
ニュルンベルク
ニュルンベルク (Nürnberg) は、ミュンヘンの北150kmにある人口50万人の都市で、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の舞台として有名です。
1933〜38年にナチスの党大会が行われ、ユダヤ人の市民権剥奪法を制定、戦後にはナチスの政治責任を問う「ニュルンベルク裁判」が行われるなど、ナチスに関係の深い歴史があります。
旧市街は東西1km、南北1.5kmの範囲で中世の城壁に囲まれ、主な観光スポットはこの中にあります。
おもちゃの見本市が知られ、クリスマス・グッズが多く出る「クリスマス・マーケット」が最も有名な町でもあります。
- 中央広場 (Hauptplatz)
- 旧市街の中央にある広場です。北側に新旧の「市庁舎 (Rathaus)」、東側に「フラウエン教会 (Frauenkirche)」が建っています。
また広場には美しい彫刻で飾られた塔が立つ「美しの泉 (Schöner Brunnen)」があります。
毎年11月末頃からクリスマスまでは「クリスマス・マーケット (Weinachtsmarkt)」として、150もの屋台がこの広場に店を開き、国内外からの多くの観光客で賑わいます。
- フラウエン教会 (Frauenkirche)
- 中央広場の東に面して建つ教会で、日本名で「聖母教会」です。
ユダヤ人居住区だった場所に、カール4世がユダヤ人を追放して1356年に建てたものです。第二次大戦で破壊されましたが1991年に全面修復が完了しました。
1509年に付けられた仕掛け時計が見ものになっています。
- 聖セバルドゥス教会 (St.Sebaldus-kirche)
- 中央広場の北西にある教会です。
11世紀の聖者セバルドゥスを祀るために1225年にロマネスク様式で建てられた教会で、14世紀にはゴシック様式に改装、塔や回廊が付け加えられて1483年に完成しました。
内部には聖セルバドゥスの墓碑をはじめ、多くの中世美術品があります。
- おもちゃ博物館 (Spielzeugmuseum)
- 中央広場の西にあるおもちゃに関する博物館です。
当地は古くからおもちゃ産業の中心地で、ドイツのおもちゃの歴史や実物を展示しています。精巧なドールハウスは見ものです。
- カイザーブルク (Kaiserburg)
- 中央広場の北0.3km、旧市街の北の端の岩山に建つ城塞です。
11世紀にハインリッヒ3世が建てた要塞が始まりで、12世紀には皇帝居城となり、15世紀に現在の姿に改修されました。
市街が見渡せる「ジンベル塔 (Sinwellturm)」や、深さ60mもある井戸が見所で、ガイドツアーで見学ができます。
- デューラーの家 (Dürer Haus)
- カイザーブルクの西にある、16世紀の画家デューラーが亡くなるまでの20年間住んでいた家です。
内部は当時のままに保存、再現がされて、資料や愛用品などが展示されています。
- 聖ローレンツ教会 (St.Lorenz-kirche)
- 中央広場の南0.3kmにある教会です。13世紀にゴシック様式で建てられたもので、2本の尖塔があります。
中世の美術品が多く収蔵されていますが、中でも1517年のファイト・シュトゥス作のレリーフ「受胎告知」が傑作として知られています。
- 職人広場 (Handwerkerhof)
- 旧市街の南、中央駅そばの城壁の内側の界隈で、手工業製品の製作実演や土産を売る店が並びます。
デューラー生誕500年を記念して1971年に作られた比較的新しいスポットです。
- ゲルマン国立博物館 (Germanisches Nationalmuseum)
- 職人広場の西側にある博物館です。ドイツの先史時代から現代までの芸術や文化に関する幅広い内容を展示しています。
1492年の世界最古の地球儀が展示品として有名で、中央広場の「美しの泉」のオリジナルもここにあります。
バイエルン地方各地
- バンベルク (Bamberg)【世界遺産】
- ニュルンベルクの北50km、レグニッツ川 (Regnitz) が中央を流れる人口7万人の町です。
11世紀に神聖ローマ帝国のハインリッヒ2世がここに司教座を置いて、重要な役割を果たしました。
司教座の置かれた13世紀の「大聖堂 (Dom)」、壁面にフレスコ画のある14世紀の「旧市庁舎 (Alte Rathaus)」、歴代司教の住んだ「新旧宮殿 (Alte / Neue Residenz)」をはじめ歴史的な建造物が多く残っています。
またレグニッツ川沿いには古い漁師の家並みが連なる「小ベニス地区 (Kleine Venedig)」が景観のスポットとして有名です。
これら町全体が世界遺産になっています。
燻醸ビールの「ラオホビア (Rauchbier)」も名物です。
- パッサウ (Passau)
- ミュンヘンの東北東150km、ドナウ (Donau)、イン (Inn)、イルツ (Ilz) の3つの川が合流するオーストリア国境の町です。
ローマ時代にはすでに町があり、8世紀には司教区が置かれた歴史ある町です。
旧市街の中心にある「聖シュテファン大聖堂 (Stephansdom)」には世界最大のパイプオルガンがあります。
その他、8世紀創建の「ニーデルンブルク修道院 (Kloster Niedernburg)」や、13世紀の司教の館だった「オーバーハウス要塞 (Veste Oberhaus)」などのスポットがあります
- ガルミッシュ・パルテンキルヘン (Garmisch-Partenkirchen)
- ミュンヘンの南南西80km、オーストリア国境に近い山岳リゾートです。
南西にドイツ最高峰のツークシュピッツェがそびえ、スキーなどのウィンター・スポーツのメッカとなっています。
対抗意識の強かったガルミッシュとパルテンキルヘンの2町をヒットラーの強権で合併させ、1936年の冬季オリンピック開催を実現した地です。
- ツークシュピッツェ (Zugspitze)
- ガルミッシュ・パルテンキルヘンの南西10km、オーストリア国境にそびえる 2962m
のドイツ最高峰です。
ガルミッシュ・パルテンキルヘンから登山鉄道とロープウェーで頂上に登ることができます
ドイツの観光地