フランクフルトからライン川下り(ドイツの観光地 1)
フランクフルト (Frankfurt am Main) は、ドイツ中西部、ライン川の支流のマイン川 (Fluss Main) 沿いにある人口70万人の都市です。
規模的には中都市ですが、ドイツの主要銀行の本店が多く集まる金融の中心地で、EUの欧州中央銀行もあります。
ヨーロッパ有数のハブ空港があり、ドイツへの入り口として日本からも主要国際空港から直行便が多く入っています。
見本市が数多く開かれる国際的な町である一方、ゲーテの生地でもあるという歴史のある町でもあります。
なお正式な地名は、国内に同じ地名があるため「マイン川沿いの」という添え書きがついた「フランクフルト・アム・マイン」となっています。
フランクフルトを流れるマイン川はその西方のマインツでライン川に合流し、このあたりから世界遺産の 中部ライン川渓谷 (Mittelrheintal) が始まります。
ライン川 (Fluss Rhein) は、アルプスが源流で、ボーデン湖からドイツ南西部をスイス、フランス国境沿いに流れ、ドイツ国内に入ってケルンやデュッセルドルフを通り、オランダに入って北海に注ぐ全長1230kmに及ぶ大河です。
ドイツでは「父なる河」と呼びます。
このうち、マインツからコブレンツに至る約90kmは山が迫る地形に古城や景勝地が多く点在する観光のハイライトで、世界遺産となっているため、景観保護のためにこの区間には橋が一つも架けられていません。
マインツからケルンの間で多くの観光船が運航されており、手軽にクルーズが楽しめます
フランクフルト
- レーマーベルク (Römerberg)
- 市街の中央、マイン川の北岸近くにある旧市街の中心となる広場です。
「レーマー (Römer)」や1848年に国民議会が初めて開かれた「パウルス教会 (Paulskirche)」、「ニコライ教会 (Nikolaikirche)」など歴史的な建造物が集まっています。
- レーマー(旧市庁舎) (Römer)
- レーマーベルクの西側に建つ旧市庁舎の建物です。
貴族の屋敷を1405年に市庁舎に改造したもので、歴代の神聖ローマ帝国皇帝が祝宴を張り、52人の皇帝の肖像画が飾られた「皇帝の間 (Kaisersaal)」があります。
2002年の日韓ワールドカップサッカーで準優勝したドイツチームが空港到着後にこのバルコニーで国民に挨拶をしています。
なお「レーマー」とは「ローマ人」の意です。
- ドーム(大聖堂) (Dom)
- レーマーベルクの東にあるゴシック様式の大聖堂です。
正式には「聖バルトロモイス教会 (St.Bartholomäus)」で、13〜15世紀に建造され、1356年から7選帝侯によるドイツ皇帝の選出、16〜18世紀には皇帝の戴冠式がここで行われました。
高さ95mの八角形の塔には登ることができます。
- ゲーテハウス (Goethehaus)
- レーマーベルクの北西0.5kmにある文豪ゲーテの生家です。
1749年生で、16歳までここで過ごし、「若きウェルテルの悩み」などを執筆しました。
5階建ての建物は第二次大戦で破壊され、戦後再建されたものですが、家具や調度品は疎開させていて幸い難を逃れ、実物を見ることができます。
- ハウプトヴァッヘ (Hauptwache)
- レーマーベルク北0.3km、市街の中心部にあたる交差点で、ショッピングモールのある地下街やレストランなどが集まる繁華街です。
東に延びる「ツァイル (Zeil)」は歩行者天国、北には欧州経済の中心である証券取引所があります。
- シャウマインカイ (Schaumainkai)
- 旧市街のマイン川の対岸にあたる川沿いの通りです。
「博物館通り」とも呼ばれ、「市立美術館」、「建築博物館」、「フィルム博物館」などバラエティに富んだ7つの博物館が並んでいます。
- ザクセンハウゼン (Sachsenhausen)
- シャウマインカイ南の下町の地区です。
居酒屋やレストランが集まり、名物のアップルワインを飲むことができます。
フランクフルト近郊
- ヴィースバーデン (Wiesbaden)
- フランクフルトの西30kmにある人口27万人のヘッセン州の州都で、国際会議都市です。
ローマ時代からの温泉保養地の町で、1913年開業の「カイザー・フリードリッヒ浴場 (Kaiser-Friedrich-Bad)」は旅行者でも利用でき、1771年から続く「カジノ (Spielbank)」も有名です。
- マインツ (Mainz)
- フランクフルトの西南西30kmにある人口18万人の町です。マイン川がライン川に合流する地点にあり、「ライン川下り」の出発点です。
水運の要衝でローマ時代から町が造られ、8世紀には大司教座が置かれました。
10世紀から建設が開始されたロマネスク様式の「マインツ大聖堂 (Dom)」はケルン、トリーアと並ぶドイツ3大聖堂の一つです。
また15世紀に活版印刷を発明したグーテンベルクの生地で、「グーテンベルク博物館 (Gutenberg-Museum)」では世界最初の印刷による聖書をはじめ印刷や製本に関する展示を行っています。
中部ライン川渓谷
- リューデスハイム (Rüdesheim)【世界遺産】
- マインツの西25km、ライン川北岸にあるブドウ畑に囲まれた小さな町です。
中心にある「つぐみ横丁 (Drosselgasse)」はワイン酒場が軒を連ねる有名なスポットで、8月にはワイン祭りが開かれます。
北西の丘ニーダーバルト (Niederwald)にはロープウェーで登れ、ライン川の景観が一望できます。ここからライン下りの観光船も出ます。
- ビンゲン (Bingen)【世界遺産】
- リューデスハイムの南西2km、ライン川南岸の町です。西進してきたライン川が北へ向きを変え、ここから山が迫る渓谷が始まる地です。
丘の上に市庁舎として使われている「クロップ城 (Burg Klopp)」があります。
- ねずみの塔 (Mäuseturm)【世界遺産】
- ビンゲン近くのライン川中洲に建つ塔です。
14世紀に建てられたもので、航行する船から通行税と徴収する税関でした。
名称は、民を苦しめた司教がこの塔でねずみの大群に襲われたという言い伝えにちなみます。
- ラインシュタイン城 (Burg Rheinstein)【世界遺産】
- ビンゲンから3km、ライン川左岸の崖の上にある城です。
13世紀に建てられ、14世紀にはマインツの大司教の所有になりました。
堅固な造りでしたが17世紀は廃墟となり、1823年にプロイセンのフリードリヒ皇太子が再建しました。
内部には中世の武器や調度品などが展示されています。
- ライヒェンシュタイン城 (Burg Reichenstein)【世界遺産】
- ビンゲンから5km、ライン川左岸にある城です。
ライン川沿いの城では最古のひとつで、11世紀初めの創建といわれ、ライン川の船を襲う強盗騎士の隠れ家になった時期もありました。
2度ほど破壊され、現在のものは1900年頃再建されたものです。
現在は古城ホテルとなっています。
- ゾーネック城 (Burg Sooneck)【世界遺産】
- ビンゲンから7km、ライン川左岸にある城です。
11世紀に建てられた古いもので、これも強盗騎士の隠れ家になったことがあります。
1689年にフランス軍に破壊され、1843年に再建されています。
- バッハアラッハ (Bacharach)【世界遺産】
- ビンゲンから15kmのライン川左岸にある町で、木組みの家屋が建ち並びます。
丘の上に12世紀に建てられた「シュターレック城 (Burg Stahleck)」は、1689年にフランス軍が爆破、1927年に再建されたもので、現在はユースホステルになっています。
- プファルツ城 (Die Pfalz)【世界遺産】
- ビンゲンから18kmのライン川右岸近くの中洲に、浮かぶ船のように建つ城です。
14世紀初めにプファルツ選帝侯が航行する船から通行税を徴収するため築いたもので、豪雨による水位上昇にも安全な工夫が施されています。
右岸のカウプ (Kaub) の町から渡し舟で見学ができます。
カウプの丘の上には13世紀に造られ、古城ホテルとなっている「グーテンフェルス城 (Burg Gutenfels)」があります。
- シェーンブルク城 (Schönburg)【世界遺産】
- ビンゲンから21kmのライン川左岸にある町オーバーベーゼル (Oberwesel) の山の上にある城です。
12世紀に建てられ、14世紀に拡張されています。
これも1689年に破壊されて再建されたもので、古城ホテルとして使われています。
- ローレライ (Loreley)【世界遺産】
- ビンゲンから26km、ライン川の川幅が狭くなり、流れが大きく右に曲がる右岸にある高さ130mの岩山です。
船の難所で、岩山の上で水の妖精が歌を歌い、船乗りを惑わせて難破させたという伝説があります。
歌にも歌われた有名な観光スポットですが、単なる岩山で"LORELEY"の看板があるのみ、観光船も急流で短時間で通り過ぎるため「世界三大がっかり」にも入れられることがあります。
- ねこ城 (Burg Katz)【世界遺産】
- ビンゲンから28km、ライン川右岸の町ザンクト・ゴアールスハウゼン (Sankt Goarshausen) の山の頂上に建つ城です。
1371年にカッツェネルンボーゲン伯爵が建てたもので、略称で「ねこ」の意のカッツ城と呼ばれるようになりました。
一時廃墟になりましたが再建されました。現在は個人所有で内部見学はできません。
- ラインフェルス城 (Burg Rheinfels)【世界遺産】
- ザンクト・ゴアールハウゼンの対岸の町ザンクト・ゴアール (Sankt Goar) の山にある城です。
1245年に造られ、改築によりドイツで最も堅固な城となりました。1794年にフランス軍に破壊され、ドイツで最大の廃墟となりましたが20世紀に入って再建されています。
一部が古城ホテルになっています。
- ねずみ城 (Burg Maus)【世界遺産】
- ザンクト・ゴアールハウゼンの北西3kmのライン川右岸の町ベルミッヒ (Wellmich) の山の上にある城です。
1356年にトリーアの大司教によって建造され、後に「ねこ城」のカッツェネルンボーゲン伯爵が所有したため、「猫がネズミを食う」たとえから「ねずみ城」と呼ばれるようになりました。
こちらも個人所有のため、内部見学はできません。
- マルクスブルク城 (Marksburg)【世界遺産】
- ビンゲンから50km、ライン川右岸のブラウバッハ (Braubach) の町の山の上にある城です。
12世紀に建造され、増改築を繰り返しました。一度も陥落したことがなく当時の姿をそのまま伝える貴重な城です。
コブレンツ
コブレンツ (Koblenz) は、ビンゲンから60km、中部ライン川渓谷の出口にある人口10万人の町です。西からフランスを源流とするモーゼル川 (Fluss Mosel) が合流します。
古代にローマ帝国が砦を築いた地で、フランス革命時にはフランスの支配下に置かれ、1815年のウィーン議定書でドイツの前身のプロイセン支配下に移っています。
- ドイチェス・エック (Deutsches Eck)
- 市街の中央部、北上するライン川と西からのモーゼル川が合流する地点で、先が尖った三角形の公園になっています。
「ドイツの角」の意で、ドイツの初代皇帝ビルヘルム1世の騎馬像が建てられています。
- リープフラウエン教会 (Liebfrauen Kirche)
- ドイチェス・エックの南西0.8kmにある教会です。
かつてカトリックの信仰を集めていた丘に12〜13世紀に建てられたロマネスク様式の教会で、バロック様式のタマネギ形の屋根が特徴です。
- エーレンブライトシュタイン要塞 (Festung Ehrenbreitstein)
- ドイチェス・エックの東、ライン川の対岸の丘に建つ要塞です。
10世紀ごろに造られ、増改築が繰り返されて19世紀にはトリーア大司教の所有、その後プロイセン王国の所有となりました。
コブレンツの市街や、ライン、モーゼル両河川を眺めることができる絶好のポイントです。
ドイツの観光地