オーストラリア中央部(オーストラリアの観光地 5)
オーストラリアの中央部は、南岸のアデレード周辺は温帯の地中海性気候、北岸のダーウィン周辺は乾季と雨季のある熱帯気候の地域を除くと、ほぼ全域が乾燥した砂漠地帯です。
広大な地域のわりに人口は少なく、上記の都市に集中しています。
南半分が南オーストラリア州 (South Australia)、北半分が連邦政府直轄の準州という扱いのノーザン・テリトリー (Northern Territory) です。
アデレード
アデレード (Adelaide) は、南オーストラリア州の南東部にある人口120万人ほどの州都です。
1836年にイギリスから派遣されたウィリアム・ライト大佐の整然とした都市計画で建設された街です。
その後ヨーロッパ各地から自由移民がユートピアとして集まってきました。
現在は文化と芸術の町として知られています。
- 州議事堂 (Parliament House)
- 1.6km四方の碁盤目状市街の一番北を東西に走る大通り「ノース・テラス (North Terrace)」の中心にある議事堂です。
1939年に56年の歳月をかけて完成した大理石のコリント様式の建物で、議会の開催時以外は見学ツアーがあります。
隣にはそれ以前に使われていた旧議事堂があり、憲法博物館として公開されています。
- 南オーストラリア博物館 (South Australian Museum)
- 州議事堂の東0.3kmのノース・テラス沿いにある博物館です。
1856年開館で、先住民アボリジニに関するコレクションは世界一といわれます。
オーストラリアの恐竜や現在の珍しい動物の展示、太平洋の島々の文化資料の展示など、内容はバラエティに富みます。ガイド・ツアーもあります。
- 南オーストラリア美術館 (Art Gallery of South Australia)
- 南オーストラリア博物館の東隣にある美術館です。
1881年の開館で、18世紀以降のオーストラリア絵画、彫刻、工芸をはじめ、中世以後のイギリスの美術品やアボリジニ・アートも多く所蔵しています。
東南アジアの陶芸コレクションも充実しています。
- アデレード植物園 (Adelaide Botanic Garden)
- 州議事堂の東1km、ノース・テラスのはずれにある広さ16haの植物園です。
1855年の開園で、芝生が広がる市民の憩いの場になっています。
園内にはオーストラリア原産の植物をはじめ、世界各地の植物を栽培しており、南半球最大の熱帯雨林の温室もあります。
- 国立ワイン博物館 (National Wine Center of Australia)
- アデレード植物園の敷地内にある、2001年に開館したオーストラリア・ワインの歴史や産地を紹介する博物館です。
テイスティング・ギャラリーでは国内各地で作られたワインを味わうこともできます。
ブドウ畑やレストランも併設しています。
- ビクトリア・スクエア (Victoria Square)
- 州議事堂の南0.6km、市街の中心部にある広場です。
中央に噴水があり、バスや市電はここを中心に発着します。
広場の西には120年以上の伝統を持つ「セントラル・マーケット (Central Market)」があります。
アデレード周辺
- アデレード・ヒルズ (Adelaide Hills)
- アデレード南東15kmにある標高710mのロフティ山 (Mt.Lofty) を中心に広がる丘陵地帯です。
ロフティ山頂にはアデレード市街を望む展望台があり、カフェやレストランもあります。
周辺には、初めて海外に輸出されたワインを産するワイナリーが点在し、秋の紅葉で知られるスターリング (Stirling) やオルドゲート (Aldgate) などの町があります。
- ハーンドルフ (Hahndorf)
- ロフティ山の南東15kmにあるドイツ系移民の町です。
1830年頃に宗教の自由を求めてやってきたドイツ・ルター派の人々が入植した地です。
通り沿いには当時の建物がほとんどそのまま残っており、ドイツ料理の店や、アンティークショップなどが入っています。
- バロッサ・バレー (Barossa Valley)
- アデレード北東50kmのなだらかな丘陵地に広がる、オーストラリア随一のワイン産地です。
1842年にドイツ移民が開拓したもので、20〜30kmの広い地域に50を越えるワイナリーがあります。
またドイツ・ルター派の流れを汲み、石造りの教会も点在します。
2年に1度、4月のイースターの時期に盛大なワイン祭り「ビンテージ・フェスティバル」が開催されます。
中心の町タヌンダ (Tanunda) にビジター・センターがあります。
- カンガルー島 (Kangaroo Island)
- アデレードの南西110kmにある、東西160km、南北60kmの魚のような形の島です。
野生動物の宝庫で、さまざまな動物や鳥類、植物が生息し、鍾乳洞や奇岩、小さな砂漠など変化に富んだ地形があります。
西部は国立公園に指定され、自然保護のために島内道路はほとんど未舗装です。
南岸中央部には「シール・ベイ自然保護区 (Seal Bay Conversation Park)」があり、世界で唯一野生のアシカを間近で観察できるスポットとして有名です。
また地元のミツバチ農場では、世界でここしか生息しないというリグリア・ミツバチの蜂蜜が作られています。
アクセスは、アデレードから飛行機で北部のキングスコート (Kingscote)、または陸路とフェリーで東部のペンショー (Penneshaw) からになります。
島内は公共交通機関がないため、観光はツアー参加が一般的です。
- クーバー・ペディ (Coober Pedy)
- アデレード北西630km、砂漠の中にある町で、世界屈指のオパール産地です。
1915年に金を求めて旅をしていた一家の14歳の少年が偶然発見して有名になりました。
砂漠の過酷な気候を避けるため、町はかつて地下に造られていました。現在も一部残っており、地下の高級ホテルも名物です。
一般にオパール採掘所は立入り禁止ですが、ツアーによる見学や採掘体験が可能です。
ノーザン・テリトリー北部
ダーウィン (Darwin) は、ノーザン・テリトリー最北端の人口11万人の小さな町で、ノーザン・テリトリー全体でも20万人弱という超人口希薄地域の中の中心都市です。
美しい港町で、市内にいくつも文化施設があり、北部各地の観光拠点になっています。
- アクアシーン (Aquascene)
- 市街の南西海岸にあるスポットで、満潮時に近海の魚が餌を求めて集まり、人間の手から直接餌を与えることができます。
浅瀬のため子供でも安全です。満潮の時間だけの開催のため時間の確認が必要です。
- インド・パシフィック水族館 (Indo Pacific Marine)
- 市街の南東1kmの岬にある水族館です。
インド洋や太平洋の魚や海洋生物を展示しており、特に近海のサンゴは夜にはライトアップされて美しい姿を見せます。
- ダーウィン植物園 (Darwin Botanic Park)
- 市街の北2kmにある植物園です。
400種類以上の熱帯や亜熱帯の植物を集めており、ランのコレクションもあります。
南半球最大のヤシの並木が有名です。
- ノーザン・テリトリー博物館・美術館 (Museum & Art Gallery of Northern Territory)
- ダーウィン植物園の北にある博物館兼美術館です。
ノーザン・テリトリーの歴史、アボリジニや東南アジアの美術工芸品、現代オーストラリアの美術作品などが展示されています。
全長5mの世界最大のワニのはく製はここの名物です。
1974年にダーウィンを直撃して甚大な被害を与えたサイクロン「トレーシー」の資料コーナーもあります。
- イースト・ポイント戦争博物館 (East Point Military Museum)
- 市街の北6km、西に突き出した岬「イースト・ポイント」にある博物館です。
第二次大戦当時のノーザン・テリトリーを中心に、アジアやヨーロッパの様子を紹介しています。
特にダーウィンは1942年に日本軍が何度も空襲を行った町であり、当時の実録映画の上映もあります。
- ダーウィン・クロコダイル・ファーム (Darwin Crocodile Farm)
- ダーウィンの南東40kmにあるオーストラリア最大のワニ園です。
1982年開園で、淡水性や海水性という生息環境に合わせて1万匹のワニを飼育しています。
餌付けの見学ができ、餌に食らいつく姿は迫力があります。
- テリトリー・ワイルドライフ・パーク (Territory Wildlife Park)
- ダーウィンの南60kmにある野生動物の公園です。
400haの敷地に、ノーザン・テリトリーに生息する動物を野生に近い状態で観察できるようになっています。
いくつかのゾーンに分かれて、ゾーン間は専用の乗り物で移動する仕組みになっています。
夜行性動物のエリアや水族館もあります。
- アデレード・リバー・クルーズ (Adelaide River Cruise)
- ダーウィンの南西60km、アデレード川に棲むワニを見学するクルーズです。
ソルト・ウォーター・クロコダイル (Salt Water Crocodile) という人を襲うこともある種類のワニで、船からスタッフが肉をひもで吊るすと、ワニが食べようとジャンプするのが見ものです。
ユーモラスで観光客に大人気です。
- リッチフィールド国立公園 (Litchfield National Park)
- ダーウィンの南100kmにある国立公園です。
森が広がり、渓谷、滝などが点在し、大きなアリ塚も見ることができます。
「ワンギ滝 (Wangi Falls)」や「ブリー・ロックホール (Buley Rockhole)」などの滝では水遊びもできます。
ダーウィンから比較的近いため、近年人気が出てきたスポットです。
カカドゥ国立公園 (Kakadu National Park) は、ダーウィンの東120kmを西の入口として、南北200km、東西100kmという広大な地域にわたる国立公園で、世界遺産に登録されています。
大まかには北部は広大な湿地帯、南部は砂岩質の崖や渓谷の多い地域で、非常に多くの種類の動植物が生息します。
アボリジニが大昔に残した壁画もあり、自然と文化の複合遺産に指定されています。
北東部はアボリジニの居住地のエリアがあり、「アーネムランド (Arnhem Land)」と呼ばれます。
観光拠点は、ダーウィンの西220kmにある国立公園のほぼ中央の町ジャビルー (Jabiru) です。
- イエロー・ウォーター (Yellow Water)【世界遺産】
- ダーウィンの東南東200km、国立公園の中央部にある大湿原です。水草が生い茂り、野鳥やワニが生息しています。
ボートによるクルーズがクーインダ (Cooinda) から出ています。
- ノーランジー・ロック (Nourlangie Rock)【世界遺産】
- イエロー・ウォーターの東30kmにある、アボリジニの壁画が残る巨岩です。
壁画は2万年前から20世紀まで描き続けられてきたもので、保存状況が良好です。
人間や動物の絵には、骨格や内臓が描かれた「X線画法」が特徴的で、急所や可食かどうかといった狩猟の知恵を伝えるものといわれます。
- ジム・ジム・フォールズ (Jim Jim Falls)【世界遺産】
- イエロー・ウォーターの南東80kmにある滝です。高さ250mあり、滝壺のまわりにビーチのような白い砂浜があります。
雨季には水があふれて道路が不通になり、乾季は水がかれてしまいます。
イエロー・ウォーターからは未舗装の悪路のため、4WDなどによるツアーになります。
南西10kmには2つの滝が一緒に流れ落ちる「ツイン・フォールズ (Twin Falls)」があります。
- ウビル・ロック (Ubirr Rock)【世界遺産】
- イエロー・ウォーターの北東100kmにあるアボリジニの壁画のある岩です。
動物や猟師などの絵が描かれ、岩を一周するように歩道が付けられています。近くの岩場を登ると公園を見渡せる見晴台があります。
東を流れる川の対岸は、アボリジニの居住地「アーネムランド」で、観光客は立入り禁止となっています。
キャサリン (Katherine) は、ダーウィンの南南東250km、キャサリン渓谷やマタランカ温泉観光の拠点の町です。
開拓時代を偲ばせる建物が残り、アボリジニも多く住んでいます。
- キャサリン渓谷 (Katherine Gorge)
- キャサリンの北東30kmからはじまる、ニトミルク国立公園 (Nitmiluk National Park) 内にある全長50kmにわたる渓谷です。
川の浸食による断崖が続き、渓谷の奥地には滝が何ヶ所もあります。
川を縫うように流れるボート・クリーズや、カヌーによる渓流下りなどが楽しめます。
- カタカタ・ケーブ (Cutta Cutta Caves)
- キャサリンの南東25kmにある鍾乳洞です。
5億年前から形成されたという、オーストラリアで最大規模の鍾乳洞です。
自然保護の観点からガイドツアーのみで、内部照明もその時だけ点灯する徹底ぶりです。
全長700mほどで、石灰石の石柱は長いもので15mのものがあります。
- マタランカ温泉 (Mataranka Thermal Pool)
- キャサリンの南東100kmにある温泉です。
ジャングルに囲まれた天然温泉で、水温は34度、大量に温水が湧き出ているため、水はいつでも青く澄みきっています。
入って泳ぐことができます。
ノーザン・テリトリー南部
アリス・スプリングス (Alice Springs) は、ダーウィンの南1300km、オーストラリアのほぼ中央にある人口2万5千人ほどの町です。
19世紀中頃に南北交通の拠点として建設され、電信中継の基地として重要な役割を果たしました。
周囲は赤土の砂漠がどこまでも広がる地で、エアーズ・ロック観光の拠点である他、町の近くにも観光スポットがいくつもあります。
なお、地名は電報局のそばにある湧き水に、町建設当時の郵政局長チャールズ・トッドの妻アリスの名前を冠したことにちなみます。
- アンザック・ヒル (Anzac Hill)
- 市街の北にある小高い丘です。
町全体が眺められますが、見渡す限り赤土の大地での日の出、日の入りが眺められる絶好のポイントです。
なお ANZAC とは、オーストラリアとニュージーランドの連合軍の意味で、頂上に1934年に建てられた戦争記念碑があります。
- アリス・スプリングス旧電信中継所 (Alice Springs Telegraph Station)
- 市街の北4kmにある、1871年に開始された大陸横断電信の中継所跡です。
当時の建物が残り、現在は博物館となり、使われていた通信機器が保存されています。
町の発祥地として、歴史保存地区に指定されています。
- アリス・スプリングス・カルチュラル・プレシンクト (Alice Springs Cultural Precinct)
- 市街の西1.5kmにある、この地域の歴史、文化、芸術に関するテーマパークです。
「中央オーストラリア博物館 (Museum of Central Australia)」や「中央オーストラリア航空博物館 (Central Australian Aviation Museum)」をはじめ、アボリジニ・アートのギャラリーや製作現場などのスポットが集まっています。
- アリス・スプリングス・デザート・パーク (Alice Springs Desert Park)
- 市街の西6kmにある自然公園でで、オーストラリア砂漠地帯の動植物を野生に近い状態で見ることができます。
園内の1.6kmの遊歩道に従って見学ができます。世界最大規模の夜行性の動物の観察施設もあります。
- シンプソンズ峡谷 (Simpsons Gap)
- アリス・スプリングスの西20kmにある峡谷です。
ロー川 (Roe River) が6千万年かけて岩山を削ったもので、この地域の地層は世界最古の6億年前のものといわれています。
岩壁にはロック・ワラビーが生息しており、時折見かけることもあります。
周辺には遊歩道が整備されています。
- キングス・キャニオン (Kings Canyon)
- アリス・スプリングの西南西220kmにある大きな峡谷です。
酸化鉄を含む砂岩でできているため、赤茶けた風景が展開します。
谷の深さは200mあり、谷の上と下の両方に遊歩道が作られています。
遊歩道の途中には、降雨がわずかにもかかわらずヤシの木が繁茂する林「エデンの園 (Garden of Eden)」があります。
- エアーズ・ロック (Ayers Rock)【世界遺産】
- アリス・スプリングスの南西320km、平原の中にある巨大な一枚岩で、高さ348m、周囲9.4kmあり、6億年かけて浸食によって現在の形になったものです。
日の出、日の入り時に岩肌の色が徐々に変化する様は絶品です。
2万年前から周辺に住むアボリジニの聖地で「ウルル (Uluru)」とも呼ばれ、ところどころに壁画が描かれています。
これまで登山は可能でしたが、アボリジニの意向などを反映し、2019年10月26日から登山禁止となりました。
- マウント・オルガ (Mt.Olga)【世界遺産】
- エアーズ・ロックの西40kmにある巨大な奇岩群です。
最も高い岩で高さ546mある丸みを帯びた巨岩が大小36集まったもので、もともとエアーズ・ロックの10倍もの巨岩であったものが、途中途中が崩壊してできたものといわれています。
ここもアボリジニの聖地で、「カタ・ジュタ (Kata Tjuta)」と呼ばれています。
- エアーズ・ロック・リゾート (Ayers Rock Resort)
- エアーズ・ロックの北西15kmにある、エアーズ・ロックやマウント・オルガ観光の拠点です。
高級ホテルやリゾート・ホテル、レストラン、観光案内所、展示館などが集まるリゾートタウンです。
国立公園内にあるため、環境保護や景観にも配慮がされています。空港も近くにあります。
- デビルズ・マーブル (Devil's Marbles)
- アリススプリングスの北350km、赤土の砂漠の平原にある奇妙な巨岩群です。
数mから十数mの大きさで角が取れたほとんど球状の巨岩が数百個ごろごろしています。
火成岩が、砂漠の寒さで凍る水の膨張力で侵食されてできたものといわれ、不安定な位置にあったり、真っ二つに割れているようなものもあります。
観光は北100kmの町テナント・クリーク (Tennant Creek) からツアーがあります。
オーストラリアの観光地