スペイン北部、東部(スペインの観光地 3)
スペイン北部は、バルセロナを含むカタルーニャ地方、フランス国境近くのバスク地方など、スペインの中でも中央と一線を画す地方があります。
文化だけでなく独自の民族意識を強く持ち、独立の運動がたびたび起こりました。
スペイン北東部のバルセロナを中心とするカタルーニャ地方 (Cataluña) は、15世紀にスペイン王国に組み込まれましたが、以後再三自治権の拡大の動きが繰り返されています。
カタルーニャ語が一般に通用し、スペイン語は補助的な位置づけになっています。
バスク地方 (Basque) は、スペイン北部の中央部、ピレネー山脈の西部のビスケー湾沿いの比較的狭い地域です。民族的にはフランス領まで地域がまたがっています。
バスク語を話しますが、言語学的には系統が不明という不思議な民族です。スペインの中でも料理がおいしい地域とされています。
バレンシア地方 (Valencia) は、スペインの東岸の地中海沿いの地域です。
中心地はバレンシアで、温暖な地中海性気候を利用してのオレンジの栽培が有名です。
バルセロナ
バルセロナ (Barcelona) は、スペイン北東部、地中海に面する人口150万人の都市です。
カタルーニャ地方の中心地で、地方の独自色が強く、自治州政府が置かれ、言葉もカタルーニャ語がよく話されます。
紀元前6世紀に町が築かれ、中世には地中海交易で発展しました。
ガウディなどの建築家を輩出し、ピカソも青年時代この地で過ごしています。
ガウディ作の建築が市内のあちこちにあり、大きな観光資源となっています。
1992年のオリンピック開催地です。
- ランブラ通り (La Rambla)
- 市の中心部、カタルーニャ広場 (Plaça de Catalunya) から南東に港まで約1.2km続く通りです。
中央分離帯がプラタナス並木の広い歩道になっており、車道はその両側を走っています。カフェテラスや花などを売るスタンドが出ており、大道芸なども行われます。
沿線にはホテルやレストラン、劇場や市場などがある繁華街になっています。
- ボケリア市場 (Mercat de La Boqueria)
- ランブラ通りにある公設市場です。1217年に開設されたとされる古い市場で、建物はもともと修道院でした。
観光客にも人気の市場で、いつでも野菜や果物が山積みになっています。
- コロンブスの塔 (Monument a Colóm)
- ランブラ通りの南東の終端、港に面する広場に建つ高さ60mの塔です。
1888年の万国博覧会を記念して建てられたもので、塔の上にはコロンブスの像があります。
展望台にはエレベーターで登ることができます。
- グエル邸 (Palau Güell) 【世界遺産】
- コロンブスの塔の北西0.4km、ランブラ通りのすぐ南にある邸宅です。
建築家アントニオ・ガウディの後援者であるグエル伯爵の私邸として1890年に完成したものです。
当時としては珍しい鉄骨がふんだんに使われているのが特徴です。
- ゴシック地区 (Barri Gótic)
- ランブラ通りの東側の地域です。13〜15世紀に建造されたゴシック様式の建物が多いためにこのように呼ばれています。
カテドラルをはじめ、教会や美術館が点在し、ローマ時代の遺跡も残っています。
- カテドラル (Catedral)
- ゴシック地区の中心にあるカタルーニャ・ソシック様式のカトリック寺院です。
13〜15世紀に造られたもので、中央祭壇の下にバルセロナの守護聖女サンタ・エウラリアの墓があります。
中庭は裏の路地からも入れるため、市民が気軽に訪れています。
正面の広場では土曜夕方と日曜正午に、カタルーニャの民族舞踊「サルダーナ」が踊られ、誰でも踊りに参加することができます。
- 王の広場 (Plaça del Rei)
- カテドラルの東隣にある広場です。
北側に「フレデリック・マレス美術館 (Museu Frederic Marés)」、東側にアラゴン王国時代の王宮 (Palau Reial Major)の建物の「歴史博物館 (Museu d'Historia)」があります。
コロンブスがアメリカ大陸を発見して帰国後に、ここで国王に謁見したといわれています。
- カタルーニャ音楽堂 (Palau de la Música Cataluna)【世界遺産】
- カテドラルの北にある音楽堂です。ガウディと同時期の建築家ドメネク・イ・モンタネールが残した最高傑作といわれ、完成は1908年です。
ホール天井のステンドグラスやばらの彫刻、モザイクタイルの柱など、豪華な装飾のコンサートホールとなっています。
- ピカソ美術館 (Museu Picasso)
- カテドラルの東にある美術館です。
14世紀に建てられた貴族の館を1963年に美術館にしたもので、ピカソがこの地に住んだ少年期から青年期と、晩年を中心に作品を展示しています。
フランコ独裁政権を嫌って祖国を離れたピカソを評価して、バルセロナ市があえてフランコ政権の政府に反抗して設立したという歴史的な経緯があります。
- カサ・バトリョ (Casa Batlló)【世界遺産】
- カタルーニャ広場の北西0.5kmにある建物です。
1877年に建てられた建物を、商人ジュゼップ・バッリョ・イ・カザノバス氏の依頼によって、1904年から1906年にかけて建築家ガウディが改築したものです。
ガウディらしく、内部も外部も曲線を多用したデザインとなっていて、その考え方にカタルーニャの守護聖人の伝説があるとか、様々な解釈がされています。
- カサ・ミラ (Casa Milá)【世界遺産】
- カタルーニャ広場の北東1.2kmにある建築家ガウディによる6階建ての集合住宅で、1910年にミラ氏の邸宅として完成したものです。
表面が流れるような曲線で仕上げられ、各部屋のベランダが半円形状に突き出し、屋上には奇怪な形状の煙突が何本も並んでいます。
完成当時は”醜悪”といわれ、「石切り場(La Pedrera)」というニックネームが付けられました。
最上階はガウディの作品を紹介する博物館となっています。
- サグラダ・ファミリア (El Temple Expiatori de la Sagrada Família)【世界遺産】
- カタルーニャ広場の北1.7kmにある大聖堂で、訳語は「聖家族教会」または「聖家族贖罪教会」です。
1882年に貧しい信者のために浄財を集めて着工しましたが、初代設計者ビリャールが意見の対立で翌年に辞任し、当時無名のガウディが後を継ぎ、ライフワークとして設計、建築を続けたものです。
1926年の彼の死後、仔細な設計図がない中で伝承やわずかな資料をもとに建設が続いています。
建設資金は寄付やお布施のみのため少しづつ建設が進められ、完成は2026年頃と予測されています。
現在は3つのファサードが完成し、それぞれの鐘楼にエレベーターで登ることができます。
- サン・パウ病院 (Hospital de la Santa Creude Sant Pau)【世界遺産】
- サグラダ・ファミリアの北1kmにある病院です。
建築家ドメネクが造った最大規模の建物で、14haの広大な敷地に大小48の建物が建っています。
1902年の着工ですが、完成はドメネクの死後7年を経た1930年です。
イスラムの影響を受けたミデハル様式で、病院とは思えない豪華な装飾が施されています。現在も病院として使われています。
- グエル公園 (Parque Güell)【世界遺産】
- サグラダ・ファミリアの北西2kmの丘にある、建築家ガウディの設計による公園です。
当初はグエル氏と組んで1900年に造成した分譲住宅地でしたが、買い手が全くつかず、1922年に市が公園としたものです。
破砕タイルをちりばめたベンチや、うねるような形状のパビリオンなどガウディとその弟子たちの個性的な作品が並んでいます。
- モンジュイックの丘 (Montjuïc)
- 市街地の南に広がる2.2kuに及ぶ丘で、全体が公園になっています。
美術館などの他、1992年のオリンピックのメイン会場となり、各競技場が建っています。
- ミロ美術館 (Fundació Joan Miró)
- モンジュイックの丘の北麓にある美術館です。
当地出身の画家ミロが、自身の作品の展示と若い芸術家の発表の場を作るために1975年に建てたものです。
ミロの絵画、彫刻など400点ほどとデッサン数千点を所蔵します。
- カタルーニャ美術館 (Museu Nacional d'Art de Catalunya)
- ミロ美術館の西にある1934年開館の美術館です。
10〜12世紀のロマネスク美術の宝庫で、ピレネー山麓に点在する教会の壁画の実物の展示が有名です。
夏の夜には正面の広場で大規模な噴水ショーが行われます。
- スペイン村 (Poble Espanyol)
- モンジュイックの丘の西麓にある、スペイン各地の代表的な建築をほぼ実物大で再現しているテーマパークで、1929年の万国博覧会の時に造られました。
アンダルシア地方の白壁の民家、ピレネーの石造りの教会、アビラの城門などがあります。
民芸品の製作実演や販売もあり、フラメンコのショーなども見ることができます。
カタルーニャ地方各地
- ダリ美術館 (Teatre-Meseu Dalí)
- バルセロナ北東120km、フランス国境に近い町フィゲラス (Figeres) にある美術館です。当地出身の画家ダリの大部分の作品を収蔵しています。
ダリ晩年の1982年に住居の隣に建てられたもので、建物全体がダリのオブジェとなっており、内部もトリックアート的な仕掛けがあります。
- 卵の家(ダリ美術館) (Casa-Museu Salvador Dalí)
- フィゲラスの東30km、地中海に臨む小さな漁村カダケス (Cadaqués) の北部の入り江のそばにあるダリの美術館です。
ダリが生涯の後半を過ごした家で、当時のままのアトリエや書斎があり見学ができます。
建物はダリが長年装飾をし、屋根の上に大きな卵のオブジェが載っているためこの名がついています。
- タラゴナ (Tarragona)【世界遺産】
- バルセロナの西南西100kmにある人口11万人ほどの町です。
ローマ時代にスペイン北東部の首都だった地で、当時は「タラコ (Tarraco)」と呼ばれていました。その時代に造られた遺跡が町のあちこちに残っています。
海辺には「円形競技場」、行政機関の跡が残る「公共広場」、郊外には「水道橋」、1世紀の墓標「エスシピオネスの塔」、4世紀の「セントセジェス霊廟」、紀元前1世紀の「バラ凱旋門」などが主なものです。
- ポブレット修道院 (Monastrio de Poblet)【世界遺産】
- タラゴナの北北西40kmの町ビンボディ (Vimbodi) にある修道院です。
イスラムとの戦いに勝利したバルセロナのラモン・ベレンゲル4世が、聖母マリアへの感謝として1149年に建てたものです。
三重の城壁に囲まれ、ロマネスクやゴシック様式の混合した回廊の周囲を修道院施設が囲みます。
最盛期の14世紀には200人もの修道士が修行をしたということです。
- ボイ渓谷 (Valle del Boi)【世界遺産】
- バルセロナ北西180km、フランス国境に近いピレネー山脈南麓にある険しい渓谷です。
12世紀ごろのロマネスク様式の教会が数多く点在し、周辺の8つの教会が世界遺産に登録されています。
主なものは、タウール (Taull) 村にある1123年創建の「サン・クリメン教会 (Sant Climent)」、ボイ (Boí) 村の「サン・ジョアン教会 (San Joan)」などです。
貴重なフレスコ画は複製で、実物はバルセロナの「カタルーニャ美術館」にあります。
スペイン北部各地
- パンプロナ (Pamplona)
- マドリード北東320km、ピレネー山脈の南西にある人口18万人の町です。
中世にはナバラ王国の都で、ゴシック様式のカテドラルや、城壁のある旧市街がスポットです。
何といっても有名なのが、7月7日から1週間行われる「サン・フェルミン祭」で、牛の囲い場から闘牛場までの約850mを驀進する猛牛に混じって若者の群集が走る危険なレースが呼び物です。
ヘミングウェイの小説「日はまた昇る」の舞台にもなっています。
- ブルゴス大聖堂 (Catedral de Burgos)【世界遺産】
- マドリード北220kmの町ブルゴス (Burgos) にある大聖堂で、スペイン・ゴシック建築の最高傑作といわれています。
1221年に着工し、14世紀に基本部分はできましたが、その後いくつも部分を付け加え、現在の姿になったのは1568年です。
西の正面に高さ84mの双塔が建ち、最後に完成した八角形のドームの下には9世紀にブルゴスで生まれた英雄エル・シドの墓があります。
- アルタミラ洞窟 (Cuevas de Altamira)【世界遺産】
- スペイン北岸、ビスケー湾に臨む保養地サンタンデール (Santander) 西南西30kmにある村サンティジャーナ・デル・マル (Santillana del Mar) にある洞窟です。
約1万5千年前に描かれたといわれる牛や馬などの壁画が洞窟内に残されています。
1868年に遺跡が発見され、1879年に技師が5歳の子供を連れて訪問した際に子供が偶然天井の壁画を発見したということです。
観光客の増加で保存状態が悪化したため、2002年から厳しい入場制限となり、申請しても1年以上の待ちだということです。
隣接する「アルタミラ博物館」でレプリカを見ることができます。
- サンティアゴ・デ・コンポステラ (Santiago de Compostela)【世界遺産】
- スペイン北西部にある町です。
9世紀初頭に、キリストの12使徒の一人である聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)の墓が見つかり、その地に「カテドラル(Catedral)」が建てられました。
イスラムに破壊されましたが、12世紀に再建されました。
聖ヤコブの遺体が安置されており、ヨーロッパ中から巡礼者が集まり、特にフランスの4ヶ所からこの地への巡礼の道が世界遺産になっています。
また旧市街には50以上の教会があり、全体が世界遺産になっています。
バレンシア
バレンシア (Valencia) は、スペイン地中海岸の中央部にある、人口80万人のスペイン第3の都市です。
温暖な地中海性気候でオレンジの産地として有名で、市内の街路樹にもオレンジがあります。
また米の産地でもあり、パエリャの発祥地でもあります。
8世紀からイスラムの支配下でしたが、1094年に英雄エル・シドがこの地で破ってキリスト教を奪回したのが歴史に残っています。
大きな街ですが、中心の旧市街は比較的に狭く、観光スポットはここに集まっています。なお、毎年3月19日の夜中に数百の張子人形を焼き払う「サン・ホセの火祭り」は国際的に有名です。
- カテドラル (Catedral)
- 旧市街にある聖堂です。13〜14世紀にイスラム・モスクの跡に造られたもので、以後増改築が重ねられてさまざまな建築様式が混在しています。
礼拝堂にはキリストが弟子たちと最後の晩餐に使ったといわれているメノウ製の聖杯があります。
また正面入口近くには高さ51mの八角形の塔「ミゲレテの塔 (El Miguelete)」があり、頂上から市街を一望できます。
- ラ・ロンハ (La Lonja de la Seda)【世界遺産】
- カテドラルの西にある15世紀のゴシック様式の建物です。絹の取引所として造られ、中央に立会い場だった大広間があります。
ここにはらせん模様の柱が何本も立ち、天井に向かってヤシの葉が広がるように美しい模様を作っています。
日曜日には切手や古銭の市が開かれます。
スペインの観光地