マドリードとラ・マンチャ地方(スペインの観光地 1)
マドリード (Madrid) は、スペイン中央部、標高650mほどにある人口320万人の首都です。
16世紀に町が築かれて以来発展し、その当時からスペインの首都となっています。
アラブの影響を残す中世の建物から、ハプスブルク、ブルボンと続く王朝時代の建物、そして現代の建物が町に混在しています。
なおスペイン語では語尾の "d" はほとんど発音しないため現地では「マドリー」と聞こえます(アクセントは「リ」)。
ラ・マンチャ地方 (La Mancha) は、マドリードの東から南にかけてスペイン中央部の大半を占める広大な地域です。
雨が少なくて風が強く、乾いた大地がどこまでも続き、手付かずの自然が多く残されています。大きな街はなく、小さな村々が点在する地域です。
セルバンテスの名作「ドン・キホーテ」の舞台となった地で、村々には、ドン・キホーテが突撃したという風車があります。
マドリード
- プエルタ・デル・ソル広場 (Puerta del Sol)
- マドリードの中心にある広場です。「太陽の門」の意で、15世紀にがその名の門がありましたが現在は名残はなく、マドリードのシンボルの「熊とマドローニョの木」の像があります。
スペインの主要道路の起点でもあり、ここから放射状に主要道路が延びています。
市内の主な観光地はここから歩いて20分以内で行くことができます。
- マヨール広場 (Plaza Mayor)
- プエルタ・デル・ソル広場の西にある広場です。
南北約90m、東西約120mの長方形で、中央にフェリペ3世像が立ち、四方は1619年に完成した4階建ての建物が建物が囲んでいます。
かつては王室行事や闘牛、宗教裁判の処刑までここで行われ、周りの建物のバルコニーが観客席になったといわれます。
現在はカフェやレストランなどが軒を連ね、日曜には切手市や古銭市が開かれます。
- サン・イシドロ教会 (Iglesia de San Isidro)
- マヨール広場の南にあるバロック様式の教会です。マドリードの守護聖人サン・イシドロを祀っています。
長く大司教区がトレドにあったため、アルムデナ大聖堂が造られるまでのマドリードの中心的な教会でした。
- 王宮 (Palacio Real)
- マヨール広場の西にある壮大な宮殿です。
かつてイスラムの砦があった地に、1764年のカルロス3世時代に創建したルネサンス様式とネオ・クラシック様式の融合した建物で、130m四方で約2800の部屋があり、周りに広大な庭園があります。
国王は現在郊外のサルスエラ宮殿に住んでいるため、内部は一部公開されています。
ヨーロッパ屈指の豪華さを誇り、内装やタペストリー、絵画などにかつての王族の生活が偲ばれます。
- アルムデナ大聖堂 (Catedral Nuestra Señola de la Almudena)
- 王宮の南にあるバロック様式の聖堂です。マドリードの守護聖母アルムデナが祀られ、1883年に着工して1993年にようやく完成しました。
王宮庭園を背景に白い建物が美しい景色を見せています。
2004年3月のマドリード列車爆破テロ犠牲者の国家葬がここで行われています。
- スペイン広場 (Plaza de España)
- 王宮の北にある近代的ビジネス街の中にある広場です。
中央に文豪セルバンテスの没後300年を記念して建てられたモニュメントがあります。ドン・キホーテとサンチョ・パンサをセルバンテスが上から見守る構図がおかしさを誘います。
- グラン・ビア (Gran Via)
- スペイン広場から南東方向に約1.5km続くマドリード随一の繁華街です。
デパートや専門店、レストラン、ホテルなどが建ち並んでいます。
- プラド美術館 (Museo del Prado)
- プエルタ・デル・ソル広場の東南東1kmにある世界第一級の美術館です。
1819年の開館で、歴代王家のコレクション8千点以上を収蔵します。
展示の中心は、ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコなどスペインを代表する画家の作品で、著名な名作を数多く見ることができます。
- ティッセン・ボルネミッサ美術館 (Museo Thyssen-Bornemisza)
- プラド美術館の北西向かいにある美術館です。
ティッセン・ボルネミッサ男爵のコレクション約800点を展示するもので、中世から現代までの作品を年代順に鑑賞できます。
- 国立ソフィア王妃芸術センター (Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia)
- プラド美術館の南西0.6kmにある美術館です。
広大な建物にピカソ、ミロ、ダリなど、1万点以上の20世紀以後の現代美術を収蔵しています。
特に、ピカソが1937年に戦争への怒りをこめて描いた大作「ゲルニカ」が大きな見所となっています。
- レティーロ公園 (Parque del Retiro)
- プラド美術館の東に広がる広大な公園です。かつての王室庭園で、敷地の西側にはかつての宮殿の一部が残っています。
公園に隣接して、1781年にカルロス3世の命で造られた「植物園 (Jardin Botanico)」があります。
- 国立考古学博物館 (Museo Arqueologico Nacional)
- プラド美術館の北1kmにある博物館です。
1867年の開館で、旧石器時代から18世紀までのスペインの歴史的遺物を中心に膨大な数の収蔵品があります。
「アルタミラ洞窟」の精巧なレプリカが見所になっています。
マドリード近郊
- サン・ロレンソ修道院 (San Lorenzo de El Escorial)【世界遺産】
- マドリードの西北西50km、標高1000mの小さな町、エル・エスコリアル (El Escorial) にある、16世紀にフェリペ2世が建造した修道院兼宮殿です。
花崗岩を使った長さ約200m、幅160mの規模の建物で、礼拝堂は歴代の王が眠る廟があり、天井はフレスコ画で飾られ、巨大な祭壇もあります。
宮殿部分にも豪華な装飾が施され、充実した絵画コレクションも見ることができます。
- アルカラ・デ・エナーレス (Alcala de Henares)【世界遺産】
- マドリードの東30kmの町です。
1498年にアルカラ大学が設置されてから発展しました。当時からの校舎は、尖塔や回廊、庭園、講堂など歴史的価値が高いもので見所の一つです。
また、旧市街には、大聖堂、司教館などの中世の建物が残ります。
文豪セルバンテスの生地であり、生家は博物館となっています。
大学と旧市街が世界遺産に登録されています。
- アランフェス (Aranjuez)【世界遺産】
- マドリードの南50kmにある町です。
市街の北、タホ川 (Rio Tajo) のほとりに、16世紀にフェリペ2世が夏の離宮として建設した「王宮 (Palacio Real)」があります。
度重なる修復にもかかわらず均整の取れた姿を見せており、内部には部屋全体が陶器で飾られた「陶器の間」をはじめ、「王座の間」、「衣装博物館」などがあります。
周りには広大な庭園が広がり、園内には狩猟の館で質素な外観ながら内装は豪華な小宮殿「農夫の家 (Casa del Labrador)」があります。
また、王宮周辺には教会や修道院などがあり、全体が世界遺産に登録されています。
なお、ロドリーゴの名曲「アランフェス協奏曲」はこの宮殿の印象をもとに作られたものです。
- チンチョン (Chinchón)
- アランフェスの北東20kmにある村です。
中心の「マヨール広場 (Plaza Mayor)」は、周囲を古い2〜3階建ての木造の建物が囲み、古い時代のスペインの風情を残しています。
広場では祭りの時に闘牛が行われ、テラスが観客席になります。
近くの「パロキアル教会 (Iglesia Parroquial)」は、ゴヤ作の「聖母昇天」があることで知られています。
また独特の香りと味を持つアニス酒の産地としても有名です。
トレド
トレド (Toledo) は、マドリードの南南西70kmにある人口6万人の古都で、ラ・マンチャ地方の西部に位置します。
紀元前2世紀のローマ支配に始まり、5世紀には西ゴートの都となりましたが、8世紀にイスラムのウマイヤ朝の支配となりました。しかし、1085年にキリスト教徒の国土回復戦争(レコンキスタ)の勝利でスペインの首都になり、1561年のマドリード遷都までスペインの中心地を担いました。
東、南、西をタホ川が流れ、丘の上にある町は中世の城壁が囲んでいます。町の景観を保護する政策で、古い街並みがよく残されています。
- 大聖堂 (Catedral)【世界遺産】
- 旧市街の中心にあるスペイン・カトリック教会の総本山の聖堂です。13世紀のフェルナンド3世の時期に着工し、完成まで3世紀を費やしています。
高さ90mの鐘楼は町のランドマークとして建ち、中央の礼拝堂内にはゴシック様式の彩色彫刻が施された祭壇があります。周りには22の礼拝堂が並んでいます。
付属の絵画館にはエル・グレコやゴヤなどの絵画が所蔵されています。
- アルカサル (Alcazar)【世界遺産】
- 旧市街の東寄り、丘の頂上にある11世紀頃に造られた要塞で、四角い柱のような尖塔が四隅に立つ赤い屋根の堅牢な建物です。大聖堂とともに遠方からでもよく目立ちます。
最初の統治者はサラセン帝国と戦った武将エル・シドで、近年では1936年に市民戦争でフランコ軍が立てこもった場所として知られています。
内部は「市民戦争博物館 (Museo del Ejercito)」になっています。
- グレコの家 (Casa del Greco)【世界遺産】
- アルカサルの西1kmにある、クレタ島出身の17世紀の画家エル・グレコが35歳から亡くなるまでの約40年間過ごした家です。
死後に地元の貴族が修復し、市に寄付されたもので、当時の家具や調度品がそのまま公開されています。グレコ本人の作品も展示されています。
ラ・マンチャ地方各地
- クエンカ (Cuenca)【世界遺産】
- マドリードの東南東150kmにある町です。
新市街の北部にある旧市街は、数百m平行して流れる2本の川の間にあり、それぞれの川が深い谷を刻んで断崖絶壁となっていて、町は間の険しい地形の上に築かれて坂道や狭い路地が入り組んでいます。
特に3〜4階建て石造りの中世の建物が川の崖からせり出すように密集して建っているのが特徴です。
「宙吊りの家 (Casas Colgadas)」は崖から乗り出すように建てられた14世紀の建物で、美術館やレストランが入っており、崖下から見るとまさに「宙吊り」に見える有名なスポットです。
スペインの観光地