サンクトペテルブルク周辺(ロシアの観光地 2)
サンクトペテルブルク (Санкт-Петербург / Saint Petersburg) は、ロシアの北西端近く、モスクワ北西650kmのフィンランド湾東奥にある人口450万人のロシア第2の都市です。
1703年にピョートル大帝がスウェーデンから奪取した地に建設した町で、建設は1万人もの犠牲を出す過酷なものだったといわれています。
1918年まで首都だった地で、ロシアの文化芸術の中心地でした。
ソ連時代の1924年から崩壊後の1991年までは、レーニンにちなんで「レニングラード (Ленинград / Leningrad)」と名乗っていました。
市内をネバ川 (Река Нева) が流れ、運河も多く、美しい景観から「北のベニス」ともいわれ、エルミタージュ美術館をはじめ、宮殿や修道院などの歴史地区が世界遺産となっています。
サンクトペテルブルク市内
- エルミタージュ美術館 (Государственный Эрмитаж / Hermitage)【世界遺産】
- 市街中心部、ネバ川河畔にある大英、ルーブルと並ぶ世界最大級の美術館です。
1764年にエカテリーナ2世のコレクションを展示したのが始まりで、帝政時代の皇居だった「冬宮 (Зимний Дворец / Winter Palace)」を中心に一体となっている5つの建物で成っています。
1050の部屋に280万点を超える収蔵品があり、ロシア絵画だけでなく、ダ・ビンチやラファエロなどのイタリア絵画、ルノアール、セザンヌなどのフランス絵画などの名作が多数あり、古代の発掘物や彫像などもあります。
なお「エルミタージュ」とは「隠れ家」を表すフランス語で、1917年に一般公開されるまでエカテリーナ2世専用の美術品収集の館だったための命名だということです。
- 宮殿広場 (Дворцовая Площадь / Palace Square)【世界遺産】
- エルミタージュ美術館の南側に広がる広大な石畳の広場で、「冬宮」に接するためこの名が付いています。
広場の中央に1834年に建てられた高さ47mの赤い花崗岩の塔「アレクサンドルの円柱 (Александровская Колонна / Alexander Column)」があります。
ロシア革命のきっかけとなった1905年の「血の日曜日」事件や、1917年の十月革命もここが舞台です。
- 聖イサク寺院 (Исаакиевский Собор / St.Isaac's Cathedral)【世界遺産】
- エルミタージュ美術館の南西1kmにある市内で最大の教会です。
都市建造のピョートル大帝のための寺院として建造され、軟弱な地盤で度重なる破損と修復を経て1858年にようやく完成しました。
中央に黄金のドームを持つ高さ101mの塔がそびえ、幅111m、奥行き97mの壮大な建物です。
内部は博物館になっており、多くのイコンや美術品を展示しています。
- 青銅の騎士像 (Медный Всадник / Bronze Horseman)【世界遺産】
- 聖イサク寺院北側の「デカブリスト広場 (Площадь Декабристов / Dekabristov Square)」にあるピョートル大帝の騎馬像です。
1782年にエカテリーナ2世がフランスの彫刻家ファルコーネに作らせたもので、彼女の権力の誇示を示すものといわれています。
「青銅の騎士」という名は詩人のプーシキンが名づけたものです。
- マリインスキー劇場 (Мариинский Театр / Mariinsky Theater)【世界遺産】
- 聖イサク教会の南西1kmにある劇場で、1934〜1992年の間は「キーロフ劇場」と呼ばれていました。
建物は1859年に完成したネオ・ビザンチン様式で、サンクトペテルブルクにおけるオペラとバレエの殿堂となっています。
2003年には隣接して現代建築による新劇場がオープンしています。
- カザン聖堂 (Казанский Кафедральный Собор / Kazan Cathedral)【世界遺産】
- エルミタージュ美術館の南南東1km、目抜き通りの「ネフスキー大通り (Невском Проспекте / Nevsky Prospect)」沿いにある新古典様式の教会です。
1811年の創建で、バチカンのサンピエトロ寺院を模して、94本のコリント式列柱の並ぶ半円形の回廊が特徴です。
1932年に宗教史博物館となり、多くのイコンを収蔵しています。
- マルスの広場 (Марсово Поле / Field of Mars)【世界遺産】
- エルミタージュ美術館の東1kmにある広大な広場です。9haの広さがあり、19世紀には軍事パレードや軍事教練が行われた場所です。
入り口近くに軍神マルスにたとえられた18世紀の将軍スボーロフの記念碑があり、中央には1917年の二月革命で亡くなった戦士の記念碑があります。
- 夏の庭園 (Летний Сад / Summer Garden)【世界遺産】
- マルスの広場の東隣、ネバ川と運河で囲まれた12haほどの公園です。18世紀前半に庭園として造られ、歩道には多くの彫像が建てられています。
木立の多い市民の憩いの場となっています。
- スパス・ナ・クロビ聖堂 (Храм Спаса на Крови / Church of the Savior on Blood)【世界遺産】
- マルスの広場の南、運河沿いにある教会です。
農奴解放をした皇帝アレクサンドル2世が1881年に暗殺された地に1883年から1907年にかけて建てられたもので、別名「血の上の教会」といわれます。
モスクワの聖ワシリー聖堂に似て、色も模様も異なるネギ坊主形キューポラをいくつも頂く美しい建物です。
- ロシア美術館 (Русский Музей / Russian Museum)【世界遺産】
- スパス・ナ・クロビ聖堂の南にある美術館です。1825年に完成した「ミハイロフ宮殿」の建物を1895年に美術館として公開したものです。
中世から現代に至るロシア美術作品35万点を収蔵します。
- ペトロパブロフスク要塞 (Петропавловская Крепость / Peter and Paul Fortress)【世界遺産】
- エルミタージュ美術館の北、ネバ川の対岸の中州の島にある要塞です。
ピョートル大帝がスウェーデンとの北方戦争中の1703年に、バルト海への出口確保のために建造を開始した市の発祥の地です。
外郭は1740年までかかって建造され、高さ12mの厚い城壁で囲まれています。内部には1733年に完成した大聖堂や鐘楼の他、造幣局や兵器庫などがあります。
帝政末期には、ドストエフスキーやゴーゴリなど帝政を批判する人々や政治犯を収容する監獄としても使われました。
- 巡洋艦オーロラ号 (Крейсер Аврора / Cruiser Aurora)
- ペトロパブロフスク要塞の東1.5km、ネバ川から支流が分かれる位置に係留された巡洋艦です。
かつてバルチック艦隊に属し、1905年の日本海海戦参加や、1917年の十月革命では開始の号砲を放つなどの経歴を持ち、1952年に退役して博物館となりました。
3本の煙突が特徴で、排水量は6千tです。
- アレクサンドル・ネフスキー修道院 (Александро-Невская Лавра / Alexander Nevsky Monastery)【世界遺産】
- エルミタージュ美術館の南東5km、ネフスキー大通りの終点にある大修道院です。
1710年の創建で、11の教会と4つの墓地があります。
墓地は、チャイコフスキー、ムソルグスキー、ドストエフスキーなど芸術家を中心に多くの著名人が葬られています。
サンクトペテルブルク近郊
- ペテルゴフ(ペトロドバレツ) (Петергоф / Petergof)【世界遺産】
- サンクトペテルブルクの西25km、フィンランド湾に面するピョートル大帝の夏の離宮です。
1705年に最初に大帝が訪れ、1710年に小さな宮殿を建て、1714年からベルサイユ宮殿を模して大宮殿と庭園の建設が始まり、1725年に完成、その後も手を加えられています。
第二次大戦中にドイツ軍に破壊されましたが、戦後修復作業が続けられて1995年にすべての修復が完了しました。
敷地は10kuに及び、中央に「大宮殿 (Большой Дворец / Grand Palace)」があり、全体で20の宮殿、7つの公園があります。
また140を超える噴水が至る所に配され、傾斜を利用してポンプを使わずに吹き上げる仕組みになっています。
アクセスはエルミタージュ美術館のそばから出る高速船で海側から入るのが一般的です。
なお、最近まで「ペトロドバレツ (Петродворец / Peter's Palace)」という「ピョートルの宮殿」の意の名称が使われてきました。
元来の名称「ペテルゴフ」はドイツ風の名前のため、戦後それを嫌って変えられましたが、1997年から再び「ペテルゴフ」に戻されています。
- ツァールスコエ・セロ (Царское Село / Tsarskoye Selo)【世界遺産】
- サンクトペテルブルクの南25kmにある小さな町です。「皇帝の村」の意で、「エカテリーナ宮殿」があります。
詩人プーシキンが学び、多くの詩作を行った町で、ソ連時代は「プーシキン市」と呼ばれました。
1941年にドイツ軍に占領されて、破壊や略奪が行われましたが、戦後宮殿とともに18世紀の雰囲気の町並みが復元されています。
- エカテリーナ宮殿 (Екатерининский Дворец / Catherine Palace)【世界遺産】
- ツァールスコエ・セロの町にあるバロック様式の宮殿です。
1756年にイタリアの建築家ラストレッリが建造したもので、エカテリーナ2世の夏の離宮として使われました。
建物は全長305mで、白と水色の配色の外観をしています。内部は55の部屋があり、特に6tのコハクを使用したといわれる「琥珀の間」はドイツ軍の破壊からの復元が2003年に完了し、当時の姿をしのぶことができます。
江戸時代の船頭・大黒屋光太夫がアリューシャン列島に漂着し、1791年にロシアからの帰国請願のためにこの宮殿でエカテリーナ2世に謁見したという史実もあります。
サンクトペテルブルク周辺
- ノブゴロド (Новгород / Novgorod)【世界遺産】
- サンクトペテルブルクの南南東180kmにある人口30万人の町です。
「新しい町」の意ですが、9世紀中頃にノルマン人のルス族が建設したロシア最古の都市です。その「ルス族 (Rus)」が ロシア (Russia) の語源になっています。
13世紀のモンゴルの侵攻も免れ、ロシアの商工業の中心地として栄えましたが、15世紀にモスクワに滅ぼされ、以後は地方の小都市となりました。
市内を流れるボルホフ川 (Волхов Река / Volkhov River) の西岸に城壁に囲まれた「クレムリン (Кремль / Kremlin)」があり、内部に11世紀半ば創建の「聖ソフィア教会 (Собор Святой Софии / St.Sophia Cathedral)」などがあります。
市内には多くの教会や修道院が点在し、これらが世界遺産となっています。
- キジー島 (Кижи / Kizhi)【世界遺産】
- サンクトペテルブルクの北東400km、広大なオネガ湖 (Онежское Озеро / Onego Lake)の北部に浮かぶ南北7km、幅は1kmに満たない小島です。
島全体に中世にに造られた木造建築が残り、島全体が世界遺産に登録されています。
特に「プレオブラジェンスカヤ教会 (Церковь Преображения Господня / Church of the Transfiguration)」は、一つの屋根に22のネギ坊主形のキューポラを頂く奇抜な外観で、釘を一本も使わずに造られている高さ37mの壮大な木造建築で、島の目玉となっています。
隣にやはり10のキューポラを持つ「ポクロフスカヤ教会 (Покровская Церковь / Church of the Intercession)」があります。
観光は、南西50kmのオネガ湖西岸の町ペトロザボーツク (Петрозаводск / Petrozavodsk) からの観光船となります。
ロシアの観光地