イスタンブール周辺(トルコの観光地 1)
イスタンブール (Istanbul) は、トルコ北西部、人口1350万人の国内最大の都市です。
北は黒海 (Kara Daniz / Black Sea)、南はマルマラ海 (Marmara Danizi / Marmara Sea) に挟まれた地峡にあり、両海を狭いボスポラス海峡 (Istanbul Bogazi / Bosphorus Strait) がつないでいます。海峡の西がヨーロッパ、東がアジアです。
ボスポラス海峡の途中から西に金角湾(ハリッチ Haliç / Golden Horn) が切れ込み、その南が世界遺産に指定された「旧市街」、北が「新市街」となっています。
ギリシャ時代は「ビザンチウム」、ローマ帝国時代に「コンスタンチノープル」、そしてオスマン・トルコ時代は「イスタンブール」と呼び、いつの時代も大帝国の都として長い歴史を作ってきました。
現在もトルコの中心地ですが、首都は「アンカラ」に移されています。
イスタンブール旧市街
- トプカプ宮殿 (Topkapi Sarayi)【世界遺産】
- 旧市街の東端、ボスポラス海峡近くに建つ、オスマン・トルコ帝国の歴代スルタンが居城とした宮殿です。
15世紀半ばに創建され、19世紀まで増改築を繰り返して迷路のようになっています。1924年から博物館として公開しています。
広大な敷地に、3つの中庭と150以上の部屋があり、最盛期には5千人の使用人が生活したといわれます。
「謁見の間」、「絵画館」、「武器庫」、「ハレム」などの他、「宝物館」には86カラットのダイヤモンドや、世界最大のエメラルド3個をはめこんだ短剣などがあります。中国の陶磁器や、日本の古伊万里焼なども所蔵しています。
- 考古学博物館 (Arkeoloji Müzesi)
- トプカプ宮殿の庭園内にある博物館です。
1876年の開館で、エーゲ海周辺のギリシャ、ローマ遺跡での出土品を中心に約3万点を収蔵します。
特に紀元前305年に作られたという「アレキサンダー大王の石棺」が有名です。
- 古代オリエント博物館 (Eski Sark Eserleri Müzesi)
- 考古学博物館に付属する博物館です。
1833年の開館で、シュメール、バビロニア、アッシリア、ヒッタイトなどの古代文明の遺物を展示しています。
ヒッタイトとエジプトの間で交わされた世界最古の平和条約「カディシュの条約」、世界最古の法律「ハムラビ法典」の楔形文字で書かれた粘土板などが有名です。
- アヤ・ソフィア大聖堂 (Aya Sofya Camii)【世界遺産】
- トプカプ宮殿の南隣にある聖堂です。ビザンチン帝国時代の537年にユスチニアヌス帝が創建し、ギリシャ正教の総本山となりました。
1453年のオスマン・トルコ支配と同時にイスラム・モスクに改修され、現トルコ共和国になって1934年からは博物館となりました。
赤茶色の建物は、高さ55m、直径31mのドームがあり、内部にはビザンチン時代の多くのモザイク画が残されています。
- スルタン・アフメット・ジャミイ(ブルー・モスク) (Sultan Ahmet Camii)【世界遺産】
- アヤ・ソフィア大聖堂の南にある美しいイスラム寺院です。
1616年にスルタンのアフメット1世が創建し、内部の壁面が青と白の美しいタイルで飾られていることから「ブルー・モスク」として知られています。
高さ43m、直径28mのドームを持ち、周りに6本の尖塔(ミナレット)が立っています。
- ヒポドロム (Hippodrom)【世界遺産】
- スルタン・アフメット・ジャミイの正面の広場です。
ビザンチン時代に戦車の競技場だった場所で、南西側に壁の遺跡が残っています。
また、「テオドシウス1世のオベリスク」、「青銅製の蛇の円柱」、「コンスタンチヌス帝の円柱」の3つのモニュメントも残っています。
- イェレバタン・サライ (Yerebatan Sarayi)【世界遺産】
- アヤ・ソフィア大聖堂の南西にある532年に造られたビザンチン時代の地下貯水池です。
幅70m、奥行き140m、高さ8mで、336本のコリント様式の柱が支え、奥の柱の下部にはギリシャ神話の怪物「メドゥ−サ」の彫刻が逆さまに据えられているのが有名です。
実際に水が溜まっており、魚も泳いでいます。
なお16世紀に発見されるまでは、存在も知られていなかったといいます。
- シルケジ駅 (Sirkeci Gari)
- トプカプ宮殿の北西にある鉄道駅です。
かつてパリとの間を結んでいたオリエント急行の発着で賑わった駅で、現在も使われています。
- 大バザール(カパリ・チャルシュ) (Kapali Çarsi)
- トプカプ宮殿の西1km、旧市街のほぼ中央にある屋根付き市場です。
世界最大級の規模で、4千以上の店が集まり、狭い路地が迷路のように入り組んでいます。
金などの貴金属工芸品、じゅうたん、陶磁器などの土産物の店が多くあります。
- スレイマニエ・ジャミイ (Süleymaniye Camii)【世界遺産】
- 大バザールの北西にある市内最大のイスラム寺院です。オスマン・トルコ最盛期の1557年に、スレイマン大帝が建築家ミマル・シナンに命じて造らせたものです。
高さ53m、直径26mの大ドームがあり、4本の尖塔が立っています。
敷地内にはスレイマン大帝と皇后の霊廟のほか、4つのイスラム神学校(メドレセ)、医学校、隊商宿(キャラバンサライ)などがあります。
- ファティーフ・ジャミイ (Fatih Camii)【世界遺産】
- スレイマニエ・ジャミイの西1kmにあるイスラム寺院です。
イスタンブールを征服したオスマン・トルコのファティーフ・スルタン・メフメットが1470年に建てたものです。
巨大なモスクの他、神学校やキャラバンサライなどがあり、敷地にはファティーフ・スルタン・メフメットの霊廟があります。
- バレンス帝の水道橋 (Bozdogan / Aquaduct of Valence)【世界遺産】
- ファティーフ・ジャミイの東に、東西900mにわたって残るローマ帝国時代の水道橋跡です。
368年に建造されたもので、2階建ての構造でビザンチン時代、オスマン・トルコ時代を通じて市内に水を供給していました。
- カーリエ・ジャミイ (Kariye Camii)【世界遺産】
- ファティーフ・ジャミイの北西2kmにある、ビザンチン時代のキリスト教修道院で、現在は博物館として公開されています。
11世紀末に建てられたもので、内部の壁に14世紀頃の美しいフレスコ画やモザイクがあります。
オスマン・トルコ時代にはモルタルで塗りつぶされましたが、1947年に修復して再度日の目を見たものです。
- テオドシウスの城壁 (Teodos Suru)【世界遺産】
- 旧市街の西方、北は金角湾から南はマルマラ海まで約7km続く城壁です。
5世紀にローマ皇帝のテオドシウス2世が建造したもので、高さ8mと13mの三重壁の構造になっており、15世紀のトルコ軍の攻撃までは難攻不落の壁として立ちはだかりました。
金角湾・イスタンブール新市街
- ガラタ橋 (Galata Köprüsü)
- 旧市街北のエミノニュ(Eminönü)地区と、新市街のカラキョイ (Karaköy) 地区を結んで金角湾にかかる橋です。
1992年に旧橋が火災で焼け、現在の橋になっています。
橋のたもとに船で集まってくる「サバサンド(鯖のサンドイッチ)」屋が名物です。
- ガラタ塔 (Galata Kulesi)
- 新市街の南部、ガラタ橋の北に建つ高さ68mの石造りの塔です。
1348年にジェノバ人が建てたもので、頂上に登ると旧市街から金角湾、ボスポラス海峡、マルマラ海まで望む事ができます。
- 軍事博物館 (Aksei Müzesi)
- ガラタ塔の北3kmに建つ、武器や戦の装備などを集めた博物館です。
オスマン・トルコ時代に地中海方面の戦いで敵から奪った武器を集めたのが最初といわれます。
毎日午後3時から4時の間に、中庭でかつてのオスマン・トルコ軍の服装で軍楽隊の演奏があります。
ボスポラス海峡
ボスポラス海峡 (Istanbul Bogazi / Bosphorus Strait) は、アジアとヨーロッパを分ける海峡で、北の黒海と南のマルマラ海を約30kmでつないでいます。
幅は広いところで2.5km、狭いところで700m程度、蛇行する大河のような形態をしており、両岸をつなぐ橋が2本あります。
旧市街、新市街は西岸(ヨーロッパ側)の南端に位置します。
市民の足として海峡沿いのポイントを結ぶ定期航路や、観光スポットをめぐるクルーズ船などがあります。
船はガラタ橋のたもとのエミノニュやカラキョイから出ています。
- ドルマバフチェ宮殿 (Dolmabahçe Sarayi)
- 新市街の東、ボスポラス海峡西岸に面して建つ大理石造りのバロック様式の豪華な宮殿です。
1856年の創建で、トプカプ宮殿から宮廷をここに移し、トルコ共和国になっても初代大統領ケマル・アタチュルクが執務で使用しました。
全長600mという細長い建物に285の部屋と43のホールがあり、内装には14tの金と40tの銀が使われたといいます。
アタチュルクが1938年に執務中に急死したため、それを偲んで館内の時計は逝去時刻の9時5分のままに止められています。
なお、見学は英、仏、トルコのいずれかの言語のツアーを選び、それぞれ人数制限をして出発するので、順番待ちの時間を考慮しておく必要があります。
- ルメリ・ヒサール (Rumeli Hisari)
- 海峡中ほどで、最も狭い部分の西岸にある要塞跡です。
1452年に「征服王」といわれたオスマン・トルコのメフメット2世が、コンスタンチノープル攻略の拠点としてわずか4ヶ月で築いた巨大な要塞です。
海峡を通るビザンチンの船を迎撃したといわれています。
- アナドル・ヒサール (Anadolu Hisari)
- ルメリ・ヒサールの対岸の丘にある要塞跡で、1391年にメフメット2世の曽祖父が築いたものです。後にできたルメリ・ヒサールとともに戦略拠点の役目を果たしました。
ふもとの船着場はアナドル・カバウ (Anadolu Kavagi) の町で、地中海風の美しい街の景観で、商店街やレストランなどが集まる行楽のスポットになっています。
エディルネ
エディルネ (Edirne) は、イスタンブールの西北西200km、ギリシャやブルガリア国境に近い人口12万人ほどの町です。
ローマ時代にハドリアヌス皇帝が町を造り「アドリアノープル」と呼ばれた地です。1366年にオスマン・トルコの首都をブルサから遷都され、1453年にイスタンブールに都が移されるまでの首都で、その後の副都としての役割を果たしました。
体に油を塗って戦う伝統競技「トルコ相撲(オイル・レスリング)」も有名です。
- エスキ・ジャミイ (Eski Camii)
- エディルネの中心部にあるイスラム寺院です。1414年にアフメット1世が創建したもので、市内最古のオスマン様式の建物です。
建物は石や煉瓦で造られ、正門が大理石と対比をなします。
内部はコーランを詠んだアラビア文字で飾られています。
- セリミエ・ジャミイ (Selimiye Camii)【世界遺産】
- エスキ・ジャミイの北東の丘に建つ寺院で、エディルネのシンボルです。
セリム2世が「ブルー・モスク」の設計者ミナル・シナンに造らせた最高傑作といわれ、7年の歳月をかけて1575年に完成しています。
「アヤ・ソフィア」を凌ぐ寺院を目指し、ドームの直径は31.5mで国内最大です。高さ71mの4本の尖塔(ミナレット)が建っています。
多くの明り窓から光が差し込んで、内部が明るい寺院です。
トルコの観光地