ダブリンとレンスター地方(アイルランドの観光地 1)
ダブリン (Dublin) は、アイルランド島の東岸中部にある首都で、人口100万人を超える大都市です。周辺地域を含めると、国内の3分の1の人口がこの地域に集まっています。
紀元前後から町があったとされ、古代から近世までバイキングやイギリスに対して支配を受けたり奪回したりという歴史を繰り返してきました。
ようやく1938年のアイルランド独立で、政治的に落ち着いた都市になりました。
ただ、17〜18世紀ごろの大英帝国支配の植民地時代に重要な都市として大いに繁栄しましたが、独立後は経済不況などで人口流出して一旦は寂れました。
しかし1990年代の経済成長で、町は再開発されて活気を取り戻しています。
市内を西から東へ、リフィー川 (River Liffey) が貫通して、アイリッシュ海に注いでいます。
市の中心部のうち、旧市街はリフィー川の南岸にあり、歴史的な建造物が集まっています。
市内にはパブ(アイリッシュ・パブ、酒場)が多くあり、住民のコミュニティの場として利用されています。
レンスター地方 (Leinster) は、ダブリンを含むアイルランドの東から南東部を占める地域です。
ダブリンに近いため、人口も他の地域よりやや多く、国全体の半分弱がこの地域に住んでいます。
ダブリン
- ダブリン城 (Dublin Castle)
- 旧市街の中心部にある城です。
かつて砦のあった場所に1204年に創建され、イギリス支配中はその総督府が置かれ、その役割は1922年まで続きました。
現在残っている建物は多くが17世紀から19世紀にかけて造られたものですが、石造りの円塔「レコード・タワー」(Record Tower) だけは1226年の創建当時のものが残っています。
現在は文化センター的な目的で使われていますが、大統領の就任式や国際会議など、国の重要なイベントの際もここが使われます。
- クライストチャーチ大聖堂 (Christ Church Cathedral)
- ダブリン城のすぐ西にある教会で、正式には「聖三位一体大聖堂」(Cathedral of the Holy Trinity) です。
1038年の創建で、63mの長さをもつ地下礼拝堂はイギリスを含めて国内で最大のものです。
また、パイプオルガンの裏で身動きが取れなくなった猫と鼠のミイラが有名で、聖堂内に展示されています。
- 聖パトリック大聖堂 (Saint Patrick's Cathedral)
- クライストチャーチ大聖堂の南0.3kmにある教会です。
450年頃に守護聖人聖パトリックがキリスト教に改宗する人々の洗礼を行った場所といわれ、1191年にその地に建てられたものです。
当初から主教座が置かれなかったため、首席司祭が選任されていますが、18世紀前半には「ガリバー旅行記」の作者ジョナサン・スウィフトもこの職を務めた歴史があります。
- トリニティ・カレッジ (Trinity College)
- ダブリン城の東0.5kmにある、1592年にイギリスのエリザベス1世が創立したアイルランド最古の大学です。
現在も国内の最高学府として、東西700m、南北300mのキャンパスの中で学生が学んでいます。
学内の図書館の特別室には、8世紀頃の作でケルト美術の最高峰といわれる装丁の新約聖書の写本「ケルズの書」(The
Book of Kells) が展示されていて、見学の目玉となっています。
- アイルランド国立博物館 (National Museum of Ireland)
- トリニティ・カレッジ南にある、1890年創館の博物館です。
アイルランド国内の文物が収められ、特に青銅器時代の金細工や初期キリスト教時代の金属細工は見ものです。
なおアイルランドの博物館はほとんどが入場料は無料です。
- グラフトン・ストリート (Grafton Street)
- トリニティ・カレッジから南へ約500m続くダブリン随一の繁華街です。
広い通りではありませんが歩行者天国で、高級デパートやブランド店が軒を連ねています。またカフェや名物のパブも集まっています。
通りでは世界からストリート・ミュージシャンや大道芸人も集まってパフォーマンスを繰り広げています。
- テンプル・バー (Temple Bar)
- ダブリン城からトリニティ・カレッジ近くまでの北側でリフィー川までの、東西500m、南北200mほどのエリアです。
18世紀ごろから、街に集まる物資の税関検査のための倉庫、商店、宿が密集した地域でした。
近年小さな店や芸術家が集まってきて、アート・ギャラリーやファッショナブルなパブ、レストランなどもできて一大芸術タウンとなっています。
- ギネス・ストアハウス (Guiness Storehouse)
- クライストチャーチ大聖堂の西1kmにあるギネスビールの工場です。
正式にはセント・ジェームズ・ゲート醸造所という名で、このストアハウスはギネスの製造工程を紹介する併設の施設です。
入場は有料ですが、最上階のバーでダブリンの景色を見ながら、無料で1パイント(570cc)の試飲ができます。
- ジェイムソン旧蒸留所 (Old Jameson Distillery)
- クライストチャーチ大聖堂の北西0.7km、リフィー川北岸のエリアにあるウィスキー工場です。
有料のガイドツアーで、元祖アイリッシュ・ウィスキーの歴史や製造工程の見学ができます。見学の最後に各種ブランドの飲み比べができるコーナーがあります。
- マラハイド城 (Malahide Castle)
- ダブリン中心部の北北東15km、海岸近くにある美しい古城です。
1185年に建造され、騎士だったタルボット家の居城として1976年まで使われ、現在はそのまま保存されています。
広大な敷地は美しい公園になっており、敷地には鉄道模型の博物館「フライ・モデル・レールウェイ」があります。
レンスター地方
- タラの丘 (Hill of Tara)
- ダブリンの北西35kmにあるなだらかな丘です。
頂上付近には、紀元前数千年以上前の新石器時代から鉄器時代にかけての要塞とみられるいくつかの遺構があり、古代から中世にかけてはここはケルト人の聖地だったとされています。
そのために近代でも、アイルランド独立のための反乱や集会などは、ここを拠点に行った歴史もあります。
小説「風と共に去りぬ」に出てくる「タラ」という地名はここから採られています。
- ニューグレンジ (Newgrange)【世界遺産】
- ダブリンの北40km、ボイン川沿いにある古代古墳群の中の一つです。
直径76m、高さ12mの円形の塚を、石を積み上げた壁で囲んでいます。周囲の岩石には渦巻きや波型の彫刻があるものもあります。
紀元前3200年ごろに造られたとされ、これはエジプトのピラミッドよりも古いものです。
壁の上部の小窓から年に1度、冬至の朝日が奥の通路を通って玄室に差し込むように造られています。
なお、この周辺には同様の古墳が40ほどあり、これら全体が「ブルー・ナ・ボーニャ」(ボインの宮殿)として世界遺産に登録されています。ニューグレンジはその中でも最大のものです。
見学は遺跡の東4kmにある「ブルー・ナ・ボーニャ・ビジターセンター」からのガイド・ツアーのみで可能です。
- モナスターボイス (Monasterboice)
- ニューグレンジの北北東10kmにある、初期キリスト教会の遺跡です。
5世紀から14世紀ごろまでの教会跡や石塔、墓地などの遺跡が残っています。
特に、国内最大の高さ5.5mの石の十字架「ハイクロス」は複雑なレリーフが施されて、この遺跡の見ものとなっています。
- パワーズコート (Powerscourt)
- ダブリン南20kmにある、旧パワーズコート子爵の屋敷で、アイルランドで最も美しいといわれる庭園があります。
1741年に完成し、約19ヘクタールの広大な敷地に3階建ての屋敷の建物と、ヨーロッパ各地の宮殿の庭園を参考にしたといわれる庭園があり、池や湖、日本庭園もあります。
なお建物は1974年に火災で焼失し、1996年に再建されたものです。
屋敷のそばを流れるダーグル川の上流(屋敷の南5km)に、パワーズコートの滝があり、落差121mはアイルランド最大です。
- グレンダロッホ (Glendalough)
- ダブリン南40kmの山間にある遺跡です。
6世紀に聖ケビンが修行をした地で、その後12世紀頃までキリスト教の聖地として発展しました。
「七つの教会の町」といわれ、当時の教会や修道院の遺跡が残っています。
周辺には渓谷と2つの湖があり、美しい風景の中を散策できます。
- キルケニー (Kilkenny)
- ダブリンの南西110kmにある美しい古都です。
5世紀に聖キアランが修道院を開いたのが起源といわれ、中世の街並みをよく残しています。
街のシンボルで12世紀に造られた「キルケニー城」(Kilkenny Castle) は長い間バトラー家の居城として使われてきて、領主の肖像画が飾られたロングルームは必見です。
そのほか市内には、セント・メアリーズ大聖堂 (St. Mary's Cathedral) 、聖カニス大聖堂 (St. Canice's Cathedral) やジャーポイント修道院 (Jerpoint Abbey) といったスポットがあります。
なお町の建物は、近在で採れる炭素を含んだ黒っぽい色の石を使っています。
またキルケニーはビール醸造でも有名です。
- クロンマクノイズ (Clonmacnois)
- ダブリンの西110km、アイルランドのほぼ中央部で、シャノン川のほとりにある修道都市遺跡です。
6世紀に聖キアランが建設したとされ、教会、城郭、見張台などの建物があり、当時はヨーロッパ中に知られていました。
16世紀にイギリスの攻撃にあい、現在は破壊された教会や修道僧の住居跡、石塔やハイクロスなどが残っています。
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