カイロとギザ(エジプトの観光地 1)
カイロ (Cairo) は、エジプト北部、ナイル川がいくつもの支流に分かれて広大なデルタ地帯を形成する扇のかなめの位置にあるエジプトの首都です。
人口900万人超で、周辺人口をあわせると1500万人を超え、この地域にエジプト全体の5分の1が集中しています。
市の中央を南から北へナイル川 (Nile River) が流れ、中心街は東岸に広がっています。
7世紀にイスラム教徒が軍事都市と築いたのが始まりで、以後支配者が交代してもこの地域の中心都市として発展を続けています。
新市街 (Central Cairo) は、ナイル川東岸、中洲の島・ゲジラ島 (Gezira) の対岸付近にある地区で、政府機関や各国大使館が集まっています。
19世紀にオスマン・トルコから自立を達成したムハンマド・アリー朝の時代に、近代化の一環でパリの市街をモデルに建設した地区です。
イスラミック・カイロ (Islamic Cairo) は、新市街の東方、東西2km、南北3kmほどの範囲に広がる地域です。
641年に進出してきたイスラム軍がそれまでの中心地「オールド・カイロ」の東に造営地を造って以来、時代とともに北にイスラムの市街が広がり、現在のような市街ができたものです。
現在も外国人がほとんど住まないアラブ人の町で、多くの歴史的なイスラムの建造物が多く残り、建造物と街並みが世界遺産に登録されています。
オールド・カイロ (Old Cairo) は、新市街の南4kmにある地域で、西に狭い水路を隔ててナイル川の中洲の島・ロダ島 (Rhoda Island) が広がっています。
イスラミック・カイロが建設される以前のローマ時代からあった町で、コプト正教会というエジプトで独自発展したキリスト教の一派が普及した地です。
今も信仰を集めるキリスト教会が多く残っています。
ピラミッド、スフィンクスなど有名な古代遺跡は、カイロ南西郊のギザ市 (Giza) にあります。
カイロ中心部(新市街)
- エジプト考古学博物館 (Egyptian Museum)
- 新市街のナイル川沿いにある、5千年前からの古代エジプトの遺物を集めた世界有数の博物館です。通称では「カイロ博物館」とも呼ばれます。
1835年に政府が創設し、現在のネオ・クラシカル様式の建物は1900年に建てられたものです。
有名な「ツタンカーメン王の黄金のマスク」をはじめとする秘宝や、「神官ラーヘテプとネフェルト像」、「カフラー王座像」などの彫像、古代王のミイラなど12万点を収蔵しています。
2011年のエジプト騒乱で略奪があったりして一時閉鎖していましたが、現在は再開しています。
なお施設は老朽化が進み、手狭にもなっているため、ギザのピラミッド近くにこれまでより大規模な「大エジプト博物館」を建設し、2015年を目標に移転予定ということです。(建設費の約半分は円借款だということです。)
- カイロ・タワー (Cairo Tower)
- エジプト考古学博物館の西、ゲジラ島にある高さ187mの塔です。
市内のランドマークになっており、最上階の展望台からはギザのピラミッドも見えます。
イスラミック・カイロ
- シタデル(城塞) (Citadel)【世界遺産】
- 新市街の南東3km、イスラミック・カイロの南東部にある高さ75mの「モカッタムの丘」の上にある城塞です。
アイユーブ朝を開いたサラディンが1183年に建設したもので、19世紀まで当地の支配者の居城となっていました。
城壁に囲まれた内部には、「ムハンマド・アリ・モスク (Muhammad Ali Mosque)」をはじめとするいくつかのモスク、過去のエジプト軍の武器や軍服などを展示する「軍事博物館 (Military Museum)」などがあります。
- ムハンマド・アリ・モスク (Muhammad Ali Mosque)【世界遺産】
- シタデルの中にあるイスラム寺院で、19世紀前半に事実上の独立を達成した総督ムハンマド・アリが1857年に完成したものです。
イスタンブールのブルー・モスクを模して造られており、2本の尖塔(ミナレット)が立っています。
縞模様のある美しい石「アラバスター(雪花石膏)」を使っているため「アラバスター・モスク」とも呼ばれます。
- スルタン・ハサン・モスク (Sultan Hassan Mosque)【世界遺産】
- シタデルの北西にあるイスラム寺院です。
マムルーク朝の1356年から1363年にかけてスルタン・ハサンが建てたもので、マムルーク建築の傑作といわれています。
イスラム教4宗派のための学校も併設し、高さ81mの尖塔(ミナレット)が立っています。
建物の石材は、ギザのピラミッドのものを使っているといわれています。
- イブン・トゥールン・モスク (Ibn Tulun Mosque)【世界遺産】
- シタデルの西1kmにあるイスラム寺院です。
879年にトゥールン朝の創始者イブン・トゥールンが創建したもので、エジプトでは3番目に古いモスクといわれます。
160m四方の敷地に建ち、中庭も約90m四方あるカイロ市内では最大のモスクです。
- アクスンクル・モスク (Aqsunqur Mosque)【世界遺産】
- シタデルの北0.7kmにあるイスラム寺院です。
1347年にマムルーク朝の皇太子アクスンクルが建てたもので、壁の美しい青のモザイクから「ブルー・モスク」と呼ばれています。
- アル・アズハル・モスク (Al Azhar Mosque)【世界遺産】
- シタデルの北1.5kmにあるイスラム寺院です。
972年にファティーマ朝のジャウハル・アル・ケセリ将軍が建てたものです。
付属の神学校(マドラサ)は988年に設立されたもので、世界最古の大学の一つといわれ、現在もアズハル大学としてイスラム研究の最高権威となっています。
- ハーン・アル・ハリーリ (Khan Al Khalili)【世界遺産】
- アル・アズハル・モスクの北にあるアラブ諸国で最大級の規模を誇る市場(スーク)です。
狭い通リに香辛料、香水、金細工や宝石の店をはじめ奥のほうには日用品などさまざまな店がひしめきあっています。
- イスラム芸術博物館 (Museum of Islamic Art)【世界遺産】
- アル・アズハル・モスクの西1kmにある博物館です。
1903年創立で、ペルシア、マムルーク朝やトルコ様式などの芸術品を10万点以上収蔵しています。
- カイロの壁 (Old Wall of Cairo 【世界遺産】
- イスラミック・カイロの周囲をかつて囲んでいた城壁の跡です。
969年にファティーマ朝がカイロを征服、アル・アズハル・モスクを建設し、新首都としてそれを中心に1km四方を壁で囲みました。
現在はシタデルの北や、イスラミック・カイロの北のはずれに部分的に残っています。
- アブディーン宮殿 (Abdeen Palace)【世界遺産】
- シタデルの北西2km、新市街の東にある宮殿です。
1863年にムハンマド・アリ王朝が建て、1952年のエジプト革命まで政府の公邸として使われました。
現在は大統領の執務室になっている他、一部博物館として公開しています。
オールド・カイロ
- 聖ジョージ教会 (St.George's Church)
- オールド・カイロの入り口にある教会で、「マリ・ギルギス (Mari Girgis)」とも呼ばれます。
4〜7世紀頃に建設されたものですが、20世紀に破壊され再建されています。
丸いドームがあるのが特徴で、敷地内にはローマ時代の塔や修道院などがあります
- コプト博物館 (Coptic Museum)
- 聖ジョージ教会の南東にある博物館です。
古い時代のキリスト教のイコンや写本、織物などを展示しています。
- アル・モアッラカ教会 (Al Moallaqa Church)
- コプト博物館の南にある教会です。
4世紀にローマ時代の要塞があった地に建てられ、9世紀に再建されたものです。
エルサレムに入るキリストの木彫りや、多くのイコンが残されています。
ギザ周辺
- ギザ (Giza)【世界遺産】
- カイロ南西10kmの砂漠にある、ピラミッドとスフィンクスで有名な古代遺跡です。
紀元前2600年頃の古王国第4王朝の建造とされ、クフ王、カフラー王、メンカウラー王の3大ピラミッドと、守護神のスフィンクスなどがあります。
「クフ王のピラミッド」が3ピラミッド中最大で、一辺230m、高さは146mです。ただし頂上は崩壊して実際の高さは137mになっています。1個2.5tの石を268万個使って造られているといわれています。
「カフラー王のピラミッド」は一辺216m、高さ143m、「メンカウラー王のピラミッド」は一辺108m、高さ66mです。それぞれのピラミッドの斜面は正確に東西南北を向いています。これらは古代の世界七不思議に数えられています。
「スフィンクス」は長さ73m、高さ20mで、損傷が激しく、今後100〜200年の間に崩壊するといわれています。
クフ王のピラミッドのそばには「太陽の船博物館 (Solar Boat Museum)」があり、王が来世へ旅立つのを祈って造られたという全長47mのレバノン杉製の船を復元して展示しています。
- メンフィス (Memphis)【世界遺産】
- ギザの南東15kmにある都市遺跡です。
紀元前2700年頃成立した古王国の首都だった地で、最盛期にはクフ王、カフラー王、メンカウラー王が統治し、約500年間都であり続けました。
過去の遺構はほとんど廃墟になっており、出土品を並べた博物館になっています。
長さ15mの「ラムセス2世の巨像」、小型のアラバスター(雪花石膏)製の「スフィンクス」などが有名です。
- サッカラ (Saqqara)【世界遺産】
- メンフィスの北西3kmの砂漠にある遺跡です。
紀元前2650年頃古王国第3王朝の第2代ジョセル王が建造した最古のピラミッドがあります。
ピラミッドは階段状をしており、底面は140m×128m、高さ60mの大きさで、神殿や葬祭殿などがそばに建てられた複合建築物になっています。
- ダハシュール (Dahshur)【世界遺産】
- メンフィスの南西7kmの砂漠にある遺跡です。
クフ王の父であるスネフェル王が建設したといわれる2つのピラミッドがあります。
北側には傾斜が緩やかで、赤っぽい石材の色の「赤のピラミッド」、南側には傾斜が途中から緩やかになっている「屈折ピラミッド」と名付けられたピラミッドがあります。
エジプトの観光地