マニラとルソン島各地(フィリピンの観光地 1)
ルソン島 (Luzon Island) は、フィリピン北部の島で、フィリピン全体の3分の1の面積を占める大きな島です。
首都マニラや大都市ケソンなどがあり、フィリピンでも人口が集中している島です。
全体に山がちで、多くの火山があります。島の北400kmにはルソン海峡、バシー海峡を隔てて台湾があります。
マニラ (Manila) は、ルソン島の中部、西に開いたマニラ湾 (Manila Bay) の奥にある人口165万人の首都です。
古くから海上交易の拠点の地でしたが、1571年にスペインのレガスピ総督が占領して植民地の中心となる町を建設したのが始まりです。
町は18世紀までに海賊からの防衛のために要塞化し「イントラムロス」が造られました。
かつては美しい港町として「東洋の真珠」と呼ばれましたが、戦後の急速な発展とマルコス政権時代の停滞で、たくさんの貧民が流入して多くのスラムが形成されているという社会問題を抱えています。
なお、現在マニラが首都になっていますが、戦後から1976年までは北東に隣接する新興の計画都市、ケソン (Quezon) に首都がおかれていました。
マニラ
- イントラムロス (Intramuros)
- マニラ南港 (Manila South Port) の東側で、市街を流れるパッシグ川 (Pasig River) の南側にある、マニラ発祥の歴史地区です。
1571年にレガスピが建設した町で、植民地化に反発した交易相手国や海賊などの襲撃から守るために、16世紀末には周囲4kmの城壁が造られました。
かつては7つの城門があったといわれ、歴史的な建造物も第二次大戦で破壊され、残っているのはわずかです。
- サン・アグスチン教会 (San Agustin Church)【世界遺産】
- イントラムロス内の南西寄りにあるバロック様式の教会です。
1606年に創建されたフィリピン最古の石造教会で、内部のシャンデリアはパリから取り寄せ、イタリアの芸術家による壁画や祭壇レリーフなどがあります。
イントラムロス内で建設当時の姿をとどめる唯一の教会です。
- マニラ大聖堂 (Manila Cathedral)
- イントラムロス内の北西寄りにある、フィリピンの中心的な存在の大聖堂です。
1571年の市の建設時の創建ですが、第二次大戦で破壊され、1958年に再建されました。
ドーム状の屋根と鐘楼はマニラのランドマーク的存在で、フィリピン作家による美しいステンドグラスや、アジア有数の規模を誇るパイプオルガンがあります。
- カサ・マニラ (Casa Manila)
- サン・アグスチン教会の北西側にある博物館です。
19世紀のスペイン統治時代の豪邸が再現されており、豪華な内装に中国やヨーロッパの調度品が整えられています。
- サンチャゴ要塞 (Fort Santiago)
- イントラムロスの北西端にある周囲600mの石造りの要塞跡です。
当初は海賊からの防衛が目的でしたが、後に要塞となり、アメリカ統治時代や日本軍が占領した時も使用されました。
内部には地下牢などが残っています。
敷地内には19世紀後半の独立運動の英雄ホセ・リサールが処刑までの間暮らしていた建物が記念館として残されています。
- キアポ教会 (Quiapo Church)
- イントラムロスの北東1km、パッシグ川北のキアポ地区にある教会です。
1582年の建造で、当初は竹とヤシで造られていましたが後に現在の石造りとなりました。
17世紀にメキシコから持ち込まれたという木製の黒いキリスト像「ブラック・ナザレ」が有名です。
- マラカニアン宮殿 (Malacañang Palace)
- イントラムロスの東2km、パッシグ川の北岸にある大統領官邸です。
18世紀後半に建造されたスペイン風の白亜の建物で、1825年に政府が購入してスペイン総督の夏の離宮となり、イントラムロスの王宮が地震で崩壊後、1863年から宮殿として使われるようになりました。
以後大統領の官邸として使われています。
1986年に人民革命で追われたマルコス大統領夫人イメルダが、3千足の靴をはじめ大量のぜいたく品を所有していたことが語り草になっています。
現在内部が一部一般公開されていますが、見学には事前予約が必要です。
- リサール公園 (Rizal Park)
- イントラムロスの南にある広大な公園です。
東西1.2km、南北0.5kmほどの敷地に、政府関連の建物や国立図書館などの他、広い庭園が造られています。
マニラ湾に臨む西端近くには、英雄ホセ・リサールの記念像があります。
- ロハス通り (Roxas Boulevard)
- リサール公園付近から南へマニラ湾沿いにまっすぐ走る海岸沿いの大通りです。
ヤシの並木があり、東側は近代的なビルやホテルが建ち並び、西側はマニラ湾が開ける眺めの良い通りです。
世界屈指の夕陽の美しいスポットとして有名です。
- ココナッツ・パレス (Coconut Palace)
- イントラムロスの南4km、マニラ湾を望む地に造られたかつての迎賓館です。
1981年のローマ法王訪問にあわせてマルコス大統領が建設したもので、建物の7割がココナッツ材、その他貝やサンゴなどフィリピン産の素材で造られています。
内部は豪華な調度品が置かれています。
- マカティ (Makati)
- イントラムロスの南東5kmの地区で、マニラ随一の近代的な町です。
高層ビルが建ち並び、巨大ショッピング・モールやデパート、スーパーマーケットなどが集まり、高級ブランド品の店の直営店もある、一大商業エリアとなっています。
- ナヨン・ピリピノ (Nayong Pilipino)
- イントラムロスの南10km、マニラ国際空港の近くにある、フィリピン各地の民族を紹介する野外文化村です。
主要6地方の民家や風俗を再現し、それぞれの地方の工芸品を紹介しています。
他にフィリピンを代表する観光地のミニチュアなども展示しています。
ルソン島南部
- コレヒドール島 (Corregidor Island)
- マニラの西南西40km、マニラ湾の入り口に浮かぶ東西4kmほどのオタマジャクシのような形の小島です。
戦略的な要地にあるため、18世紀にはスペインが要塞を築き、20世紀に入ってアメリカ軍がさらに要塞を強固にしました。
太平洋戦争中の1942年には日本軍が攻撃して激戦となり、日米双方で4千人の戦死者が出ました。
米軍地下要塞の「マリンタ・トンネル (Malinta Tunnel)」をはじめ、軍事施設など当時の戦跡を保存しています。
マニラから高速船で1時間で訪れることができます。
- プエルト・アスール (Puerto Azul)
- マニラ南西50km、マニラ湾入り口の南岸に位置するビーチ・リゾートで、「青い港」の意です。
1970年代に開発されたリゾート地で、海岸から森に至る広大な敷地があります。
水のきれいなビーチの他、プロゴルファーのゲーリー・プレーヤー氏設計のゴルフ場があります。
- カイラブネ (Caylabne)
- プエルト・アスールの西にあるリゾート地です。
マニラ湾から南に入り込む入り江に砂浜が広がり、しゃれたホテルが並ぶ静かなビーチ・リゾートです。
プエルト・アスールが行動派のビーチに対して、こちらはゆったり滞在型のリゾートです。
- タガイタイ (Tagaytay)
- マニラの南50km、カルデラ湖の「タール湖 (Lake Taal)」北岸にある避暑地です。
標高700mほどにあり、フィリピンで涼しいところはここだけ、という古くから親しまれた地で、タール湖観光の拠点です。
- タール火山 (Taal Volcano)
- タール湖の中央に浮かぶ世界最小といわれる活火山の島です。
標高は300mほどで直径2kmの火口には47の噴火口が確認されています。
1572年の噴火から30回以上の噴火が記録され、1965年が最近の噴火ですがこの時は2千人もの死者を出しています。
島に渡ることは許されていますが、ガイドツアーなどでの観光が安全です。
- マタブンカイ (Matabungkay)
- マニラの南南西70km、西に東シナ海が広がるビーチ・リゾートです。
マニラから日帰りの地元客が多く、民宿的な宿がほとんどの庶民的なリゾート地です。
沖合いにリーフが広がり、遠浅なラグーンに「バルサ」と呼ばれる竹製のいかだを錨止めし、一日この上でのんびり過ごすのがこのビーチの名物です。
- プンタ・バルアルテ (Punta Baluarte)
- マタブンカイの南30km、南に延びる半島の先端近くにあるリゾート地です。
1970年代に開発されたマニラ近郊では最高級のリゾート地で、客の大半は欧米人です。
海の近くながら海では泳げず、プールが造られています。
乗馬やゴルフなどのアクティビティが揃い、ホテルもレベルの高いものが並んでいます。
- アニラオ (Anilao)
- マニラの南100km、プンタ・バルアルテからバラヤン湾をはさんで東30kmの半島にあるビーチ・リゾートです。
砂浜が少なく水泳には不適ですが、周辺はフォリピン屈指のダイビング・スポットが多くあります。
ダイビングのための施設も充実しています。
- プエルト・ガレラ (Puerto Galera)
- アニラオの南20km、ルソン島の南に浮かぶミンドロ島 (Mindoro Island) 北岸の町です。
白砂のビーチが多く、透明度の高い海が特徴で、複雑な海岸地形は秘境のようなダイビング・スポットとして人気です。
アニラオの東15kmの都市バタンガス (Batangas) からフェリーが出ています。
- パグサンハン (Pagsanjan)
- マニラの南東70kmにある町で、流れの速い渓谷がある景勝地です。
渓谷は岩壁と熱帯雨林に覆われ、ボートがひっくり返りそうに下るスリル満点の急流下りが人気です。
映画「地獄の黙示録」のロケ地にもなった所です。
- マヨン山 (Mayon Volcano)
- マニラの東南東350km、ルソン島南東部にある町レガスピ (Legaspi) の北にそびえる活火山です。
標高は2463mで、世界で最も完全といわれる円錐形(コニーデ型)の山容をし、日系移民は「ルソン富士」と呼んでいます。
フィリピンでも活動が活発な火山で、過去に火砕流などによる犠牲者を出した噴火をたびたび起こしています。
ルソン島北部
- バギオ (Baguio)
- マニラの北220km、ルソン島北西部の標高1500mほどの高地にある人口25万人ほどの町です。
20世紀初頭のアメリカ植民地時代に避暑地として建設された町で、険しい山岳道路建設は勤勉な日本人移民が多くの犠牲を出しながら完成させています。
この功績の一方、日本軍侵攻への反感に対する戦後の地道な奉仕活動など、日本人移民の苦難が刻まれた地でもあります。
現在は上流階級の避暑地とともに、バナウエなどへの観光拠点ともなっています。
- ラ・ウニオン (La Union)
- バギオの北西50km、南シナ海に臨む町サン・フェルナンド (San Fernando) を中心とするビーチ・リゾートです。
南のバワン (Bauang) までの10kmほどにリゾート地が点在します。
なお「ラ・ウニオン」はこの地域の州の名前です。
- バナウエ (Banaue)【世界遺産】
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バギオの北90km、コルディレラ山脈 (Cordillera Central) の山中にある村です。
当地のイフガオ族が2千年以上前から険しい山肌を切り開いて階段状に造った「棚田 (Rice Terrace)」があります。
麓から山頂まで開拓され、「天国への階段」とも「世界の8番目の不思議」とも呼ばれています。
アクセスはマニラやバギオから車やバスで10時間かかります。
- ビガン (Vigan)【世界遺産】
- バギオの北130km、ルソン島北西岸近くの町です。
16世紀のスペイン統治下で貿易の拠点として栄えた地で、太平洋戦争の戦火を奇跡的に免れて、旧市街は当時の町並みをよく残しています。
「サルセド広場 (Plaza Zalcedo)」を中心に「セント・ポール大聖堂 (St.Paul's Metropolitan Cathedral)」をはじめ多くの名所があります。
フィリピンの観光地