ヤンゴンとミャンマー各地
ヤンゴン (Yangon) は、ミャンマー中部にある人口400万人を超える中心都市で、1989年までは ラングーン (Rangoon) と呼んでいました。
6世紀から町ができましたが、大きく発展したのは19世紀中ごろのイギリス支配になってからです。
20世紀前半までに、イギリス主導で都市づくりが行われ、ロンドンと遜色ない社会インフラが整えられ、その当時の雰囲気が残っています。
1948年の独立から首都でしたが、2006年に軍事政権によって首都機能は北350kmのネピドー (Naypyidaw) に移されています。
その他、かつて勃興しては滅亡した王国の都となった町として、バゴーやバガン、マンダレーなどがあります。
ヤンゴン
- スレー・パゴダ (Sule Pagoda)
- 市の中心に建つパゴダ(仏塔)です。
高さ46mで、2500年以上前からの歴史があり、パゴダにはブッダの遺髪が納められているといわれます。
ヤンゴンの町はここを中心として造られたということで、パゴダの周りはロータリーとなっていて、ここから四方に道路が伸びています。
夜はライトアップされ、市のランドマークの役割も果たしています。
- ボージョーアウンサン・マーケット (Bogyoke Aung San Market)
- スレー・パゴダの北北西0.8kmにあるヤンゴン最大のマーケットです。
建物はイギリス植民地時代に建てられたもので、生鮮食品以外に、土産物や雑貨、宝石まで売っています。
- ミャンマー国立博物館 (National Museum of Myanmar)
- スレー・パゴダの北西2kmにあるミャンマー最大の博物館です。
ミャンマーの各王朝の宝物や歴史資料を展示していて、特に高さ8mのきらびやかな「獅子の玉座」が目玉です。
- シュエダゴン・パゴダ (Shwedagon Pagoda)
- スレー・パゴダの北3kmの丘の上にある壮大なパゴダです。
2500年前ごろ、インド人商人が釈迦からもらった聖髪をもらい受けてこの地に納めたのが起源だとされています。
15世紀中頃に、現在のパゴダの原型が完成したといわれます。
高さ100mの黄金の塔で、頂上部には数千個のダイヤモンドやルビー、ヒスイ等がちりばめられているということです。
ミャンマー仏教の聖地で、内外の参拝者が多い、ヤンゴン観光のハイライトです。
- チャウッターヂー・パゴダ (Kyauktawgyi Pagoda)
- スレー・パゴダの北西6kmにある、1907年創建のパゴダです。
外部は質素な造りですが、中には、高さ17m、長さ66mという国内最大級の寝釈迦仏があります。
その足の裏には、仏教の説く宇宙の図や、釈迦の一生の絵が描いてあります。
- ボウタタウン・パゴダ (Botataung Pagoda)
- スレー・パゴダの西南西1.5km、ヤンゴン川沿いの2000年の歴史を持つパゴダです。
ブッダの遺品を安置するために建てられたといわれています。
内部が回廊になっており、内側からの見学もできます。
- 宝石博物館 (Myanmar Gems Museum)
- 市中心部の北10kmにある、宝石に関する博物館です。
ミャンマーは世界有数のルビー産地で、世界最大のルビーの原石が展示されています。
4階建ての建物の4階が博物館で、あとの階には宝石ショップが入っています。
バゴーとその周辺
バゴー (Bago) は、ヤンゴンの北北東70kmにある人口20万人ほどの町で、以前は「ペグー」と呼ばれていました。
6世紀に町ができたと伝えられ、中世にはモン族が支配し、18世紀まではその都がここに置かれていました。
町にはその当時をしのばせるパゴダがいくつか残っています。
- シュエターリャウン寝仏 (Shwethalyaung Buddha)
- バゴー駅の西1kmにある寺院で、 全長55m、高さ16mの巨大な寝釈迦像があることで知られています。
10世紀末ごろにモン族の王が造ったとされ、18世紀中ごろに一旦所在が不明になったものの、イギリス統治時代の1880年にジャングルの中から発見されたという歴史があります。
日本映画「ビルマの竪琴」の舞台になった寝仏でもあります。
- シュエモード・パヤー (Shwemawdaw Paya)
- バゴー駅の東2kmにあるパゴダです。国内最高の高さ114m黄金に輝く塔で、「黄金の神の寺」とも呼ばれます。
9世紀ごろにブッダの遺髪を納めるため建てたのが最初といわれ、何度も地震で倒壊したものを建て直して現在に至っています。
- チャイプーン・パヤー (Kyaik Pun Paya)
- バゴー駅の南西4kmにあるパゴダです。
高さ30mほどの四角の太い柱の4面それぞれに大仏の坐像がはめこまれています。
15世紀後半に、モン族の王が造ったとされています。
- チャイティーヨ・パゴダ (Kyaiktiyo Pagoda)
- バゴーの東70km、チャイティーヨ山の頂上にあるパゴダです。
山の崖の淵に、いかにも転げ落ちそうな直径8mほどの巨大な丸い岩の上に、高さ7.3mのパゴダが建てられています。
岩の表面は、信者から寄進を受けた金箔で覆われ、ゴールデン・ロック (Golden Rock) とも呼ばれます。
パゴダに仏陀の遺髪が納められているとされ、その力で大きな岩が落ちない「重力の否定」しているのだと信じられていて、ミャンマーの重要な聖地となっています。
実際、岩は1m程度の接地面積で、押せば動くそうです。
参拝は山のふもとのキンプン (Kin Pun) から政府のトラックバスで途中まで行き、そこからは徒歩で登ります。
バガン遺跡とその周辺
バガン (Bagan) は、ミャンマーの中北部、ヤンゴンの北450kmにある仏教遺跡で、カンボジアのアンコール遺跡、インドネシアのボロブドゥール遺跡とともに、世界三大仏教遺跡の一つとなっています。
11世紀から13世紀まで、イラワジ川(エーヤワディ川, Ayeyarwady River)のほとりに造られたバガン朝の都でしたが、モンゴルの侵攻で滅亡、その後は放棄されて遺跡となってしまいました。
およそ40平方キロの範囲に2千とも3千ともいわれるパゴダが林立しており、その中心はオールド・バガン (Old Bagan) と呼ばれるエリアです。
観光はオールド・バガン北東5kmの町、ニャウンウー (Nyaung-U) が入り口で、ここから自転車、馬車、タクシーで遺跡観光ができます。
バスターミナルや近くには空港もあります。
- シュエズィーゴォン・パゴダ (Shwezigon Pagoda)
- ニャウンウーの町中にある黄金のパゴダです。
1102年のバガンの王によって創建され、ブッダの骨と歯が納められているといわれます。
後世に建てられたビルマのパゴダのモデルとなったもので、バガンの信仰の中心として、参拝者が多く訪れます。
- アーナンダー寺院 (Ananda Temple)
- オールド・バガンの中心部にある、バガン最大で最も美しいといわれる寺院です。建立は1105年です。
本堂は一辺は53mの正方形で、4つの入り口のどれから入っても、大きな美しい仏像が見えるようになっています。特に南北の2体は建立時のオリジナルといわれています。
- タビィニュ寺院 (Thatbyinnyu Temple)
- アーナンダー寺院の西0.3kmにある寺院です。創建は1140〜50年ごろです。
2階建て、高さ約60mはバガンで最も高い寺院です。
この寺院のそばには、日本人の戦没者慰霊碑があります。
- ダマヤンジー寺院 (Dhammayangyi Temple)
- アーナンダー寺院の南東0.6kmにある寺院です。
1160年代後半の建立ですが、父と兄を殺して王位についたナラトゥ王が罪滅ぼしに建設したものの、完成前に自身も暗殺されたという、いわくつきの寺院で、別名「幽霊寺院」と呼ばれます。
ピラミッドのような外観が異彩を放っています。
- シュエサンドー・パゴダ (Shwesandaw Pagoda)
- アーナンダー寺院の南0.5kmにある寺院です。
1057年にアノーヤター王建立のパゴダで、ブッダの遺髪が納められているといわれます。
5層のテラスを持ち、その上まで登ることができ、美しい夕日が眺められる所となっています。
- ブーパヤ・パゴダ (Bupaya Pagoda)
- アーナンダー寺院の北西0.6km、イラワジ川河畔にある円形のパゴダです。
8世紀創建というバガンで最も古い仏塔でしたが、1975年の大地震で崩壊、現在のものはその後に再建されたものです。
ここも夕日の眺めが美しいスポットとして人気です。
- アロートゥビー・パゴダ (Alo Taw Pyi Paya)
- ニャウンウーの町とオールド・バガンの中間点にある寺院で、現地の人たちが「願いが叶うパゴダ」としてよく訪れる寺です。
ガイドブックには紹介されない庶民の寺ですが、記念写真屋が出ているなど、人気があります。
- ニャウンウー・マーケット (Nyaung-U Market)
- ニャウンウーの町にある大きなマーケットです。
雑貨や食料品を扱かう露店が並び、活気があります。
- ポッパ山 (Mt.Popa)
- バガンの南東50kmにある標高1518mの死火山です。
その中腹に一か所、こつ然とそびえる「タウン・カラット (Taung Kalat)」と呼ばれるコップを伏せたような岩山があり、その狭い山頂全体ににミャンマーの土着信仰である精霊ナッ信仰の総本山のパゴダがあります。
多くの参拝客が訪れ、登山道には多くのみやげ物店があります。
また野生の猿も住み着いています。
マンダレーとその周辺
マンダレー (Mandalay) は、ヤンゴンの北550km、バガンの北東150kmにある人口100万人弱のミャンマー第2の都市です。
ミンドン王が1859年に建設したビルマ最後の王朝で、1885年にイギリスに併合されるまでの36年間その都だった地です。
もともと何もなかったこの地に、ブッダの「偉大な仏教の都が現われる」の予言を実現させるために建設したとされ、王宮をはじめ、仏塔や図書館など必要な建造物をまとめて建設しました。
イギリス占領後は、王と王妃はインドへ亡命、宝物類は略奪されてイギリスにわたり、王宮はイギリス軍の宿舎になりました。
第二次大戦で1942年に日本軍が占領しますが、イギリス軍との戦闘で王宮は焼失、1990年代に修復されています。
現在もミャンマーの仏教文化と信仰の中心で、市内には多くの僧院やパゴダがあります。
- マンダレー王宮 (Mandalay Palace)
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市の北部にあるミンドン王が建設した王宮で、1857年から1859年にかけて建設されました。
敷地は一辺約2kmの正方形で、幅64m、深さ4mの堀が囲んでいます。
戦闘で破壊されたため、当時から残っているのは城壁のみで、多くの建物はレプリカとして再建されています。
- マンダレー・ヒル (Mandalay Hill)
- 王宮の北方にある海抜236mの丘で、ブッダが仏教の都を予言したとされる地です。
丘全体がひとつのパゴダになっていて、参道周辺から頂上にいくつも仏塔や寺院があります。
麓から1700段以上の階段で登ることができますが、途中まで車、頂上までエスカレータで登ることもできます。
頂上からの眺めがいいスポットです。
- クドードー・パゴダ (Kuthodaw Pagoda)
- マンダレー・ヒルの南麓、王宮の北東0.3kmにあるパゴダです。
金色のパゴダの周囲に729基もの白い小パゴダが並び、小パゴダのそれぞれには、経典を刻んだ石版が1枚ずつ納められています。
- マハムニ・パゴダ (Mahamuni pagoda)
- 市の南部、王宮の南3kmにあるマンダレー最大のパゴダで、1784年ボドウパヤー王によって創建されました。
マンダレーで最も聖なるパゴダといわれ、多くの参拝者を集めます。
本尊の仏像はもともとは銅製ですが、信者が金箔を貼ることができるために黄金に輝いています。ただ女性が触れることは禁止されています。
- シュエナンドー僧院 (Shwenandaw Monestery)
- クドードー・パゴダの南0.2kmにあるマンダレー唯一の木造建築の僧院です。
ミンドン王はこの建物の中で亡くなったといわれています。
建材はチーク材が使われ、表面には細かい彫刻で装飾がされています。
- アマラプラ (Amarapura)
- マンダレーの南西10kmにある町で、王国時代には2度遷都された歴史があり、僧院がいくつもあります。
観光の目玉は、町の東のタウンタマン湖 (Taungthaman Lake) にかかるウー・ベイン橋 (U Bein Bridge) です。
1849年に遷都の際、使われないチーク材を使って作られた全長1.2kmの世界最長の木造橋です。
- ザガイン (Sagaing)
- マンダレーの南西15km、イラワジ川の対岸にある町です。
1315年シャン族のアチンカヤが造った都で、ザガイン・ヒルという丘に600ものパゴダが建てられています。
円弧状のパゴダの中に45体の仏像がずらりと並ぶ「ウミントゥンゼ (U Min Thonze)」や、白亜のドーム状の建物でその外観から "おっぱいパゴダ" とも呼ばれる「カウンムードー・パゴダ (Kaunghmudaw Pagoda)」などが見どころです。
その他各地
- インレー湖 (Inle Lake)
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マンダレーの南南東180kmにある南北20km、幅10kmほどの湖で、標高900mにあって山に囲まれています。
水深が平均5mと全般に浅いため、周辺に住む少数民族のインダー族が湖を生活の場としています。
湖岸周辺には水上家屋や水上マーケットがあり、湖面には野菜を栽培するための水草を集めて作った多くの浮島があります。
小さなボートで漁師が魚を獲る際に、両手で網を持ちつつ、片足でボートを漕ぐという、独特のスタイルを見ることができます。
周辺の主なスポットとしては、5つの金箔張りの球体を本尊とする水上寺院「ファウンドウー・パゴダ (Phaungdawoo Pagoda)」、猫がジャンプして輪をくぐる芸をみせる「ガーペー僧院 (Nga Phe Kyaung)」などがあります。
アクセスは、湖の北西25kmにあるヘーホー空港 (Heho) に国内線で入るのが一般的です。
空港から車で約1時間の、湖の北方にある町・ニャウンシュエ (Nyaung Shwe) に入り、ここで湖の入場料を支払う必要があります。
観光はここからチャーター・ボートでめぐることになります。
ミャンマーの観光地